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ハートに火をつけて。

僕は小学校高学年の頃から深夜ラジオが好きで視聴が日課となっていた。

そのひとつにラジオ黄金時代ふかわりょうの「ハートに火とつけて」という番組があった。しかし放送時間が深夜3~5時で小学生には酷な時間帯だったが、偶々夜中に目が覚めて1度聞いてから病みつきになってしまったのだ。

しかし深夜24時を過ぎると、
神秘的な音楽と共に小野寺英一の流暢な語りで

遥かな地平線は まるで 遠い記憶のように過ぎ去り
旅の行方は 明るい未来の中に輝いています。
今 時を越えて旅するあなたは、
そっと まどろむような 夢の中へ。

ジェットストリーム…

と言うナレーションが寝室に木霊する頃に限界を迎え、寝落ちしてしまうのがお決まりだった。ゆえに毎週聞けたわけじゃないので聞けた時には心臓は高鳴り、布団の上で声を押し殺しながら踊り、ラジカセの録音ボタンと再生ボタンを押した事を覚えている。

しかし、そんな特別なラジオ番組とのお別れは突然やってきた。

当時初恋の女の子に意気揚々とふかわりょうのラジオの面白さを話したら、
「ふかわりょうなんて気持ち悪い!嫌い!」と一喝され頭が真っ白になった。

当時のふかわりょうと言えば長髪で白いヘアバンドで腰に手を当てて子気味悪いリズムで放つあるあるネタが流行っており。
「シュールの貴公子」とも言われていた。


遠まわしに自分までも気持ち悪いと言われた様で深く傷ついたが、理不尽にもふかわりょうへ腹を立ててしまっている自分もいた。

どれだけあのラジオが好きでも初恋の女の子に
好かれる事だけが生活の基盤だった僕はラジオを聴くのをあっさりとやめる事になる。
宝物にしていたカセットテープも他のラジオで上書き録音してしまった。
今となっては激しく後悔している。

結局その初恋を女の子とは小学1年から中学3年までずっと同じクラスだった。

彼女は誰にでも優しく毎年バレンタインの時期になると手作りの義理チョコをくれる子だった。

結局僕が彼女のハートに火をつけれなかった事は言うまでもない。


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