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No.313 言論の自由とつくり話

多くの人々は、「大手新聞やテレビ局のニュース報道は、中立・公正だ」と思っているはず。米国では、表現の規制は企業の自由裁量に任せられています(通信品位法第230条(セクション230)など)。だから、報道機関やジャーナリストは職業倫理を守りません。

ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNN、NBCといった主要メディアのほとんどは民主党を支持し、中立を保とうとしているのは、フォックスニュースなどごく少数のメディアのみ。

今回のアメリカ議会への乱入がトランプ支持者だと断定している報道を見た時、思い出してしまいました。トランプ陣営が2016年の大統領選挙でロシア政府と共謀したとするつくり話を。このメディアが考え出した陰謀、策略、疑惑、推測、仮定、結論は、2年半にわたって、朝から晩までテレビや新聞やインターネットで報道されました。そして、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは、疑惑は事実でないと判明したからって、反省などしません。むしろ、「私たちはロシアに関する記事をたくさん書いたが、後悔してはいない。違法性があったかどうかを決めるのは、私たちの仕事ではないから」と詭弁を弄します。この手の話、日本でも枚挙にいとまがありませんね。

だが、問題は「後悔するかどうか」じゃなくて、「つくり話」を本当のニュースとしてしきりに報道し続けたこと!!


オールド・メディアが信頼できない今、頼みの綱として期待されていたのがソーシャルメディア。ところが、1月6日、ツイッターやフェイスブックといったIT企業(Big Tech)は、8800万人のフォロワーを抱えるドナルド・トランプ大統領のアカウントを永久凍結しました。また、ほとんど検閲をしないことで知られるパーラー(Parler)のアプリ配信は、米グーグルと米アップルによって基本ソフト(OS)上で停止されてしまいました。

一方、8日、ツイッター上で「マイク・ペンス(副大統領)をつるせ」という暴力的な内容の投稿がトレンドの上位になっていたのですが、ツイッターは接続停止などの措置を取っていません。


ドイツのメルケル首相をはじめ欧州の政治指導者たちは、口々に言論の自由という基本的権利はBig Techの経営陣の決定ではなく、法の支配と政府によって判断されるべきものだと批判しています。

「チェック・アンド・バランスが働かないところで、CEO(最高経営責任者)がPOTUS(米大統領)の拡声器の栓を引き抜ける」状況は、政府による規制の不備だとの指摘も。


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周りの意見に影響されて周囲に合わせた行動をとることを社会心理学では同調(集団の圧力)といいます。ソロモン・アッシュは同調が起こりやすい条件を調べるために実験をしました。その結果、1人の時に正解していた人であっても、サクラを入れた実験になると37%の人が複数回の実験の中で1度はサクラに同調して間違えるようになりました。これは、他のメンバーから嫌われたくない、多数派の意見によって自分の意見が信じられなくなった結果と考えられます。一方、意見がバラツイている場合には、同調する率が5%程度に減少します。

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偏向報道を得意とするところは、千代田区や中央区や港区など、いたるところに存在していますよ。いずれにしても、情報をうのみにしてマス・ゴミに同調するのはやめておいた方がよさそうですね。 

参考までに、マーク・R・レヴィン著『失われた報道の自由』(道本美穂訳、日経BP)をご紹介。

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