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有性生殖

秦の始皇帝は不老不死の薬を求めてやまなかった、と伝えられています。一方で、死や死への恐怖は、宗教、哲学を生み、文明、そして科学の発達に大きく貢献しました。

前回の「2倍体」の記事の続きです。

記事の中に、半数体(1倍体)という用語が出てきました。実は、大腸菌のような1倍体は栄養が枯渇しない限り、常に増殖を続けられる「死とは無縁の世界」に生きる生物。ところが、酵母のように少し進化すると、栄養状態が悪い時には2倍体の胞子となって休眠状態に。つまり、ちょっぴりの足音が聞こえてきます。

人間のように2倍体となり、有性生殖で増殖するようになると、を作るだけじゃなく、ぬようになります。つまり、1倍体は「」のみですが、2倍体は「生 ⇒ 性/死」。そして、この2倍体の「生⇒性/死」をコントロールするのが遺伝子です。ただし、今日は死でも生でもなく、のコントロールの話に限定させて頂きます。

有性生殖ってのは、性別があり、人間であれば、卵と精子の結合によって新たな生命をつくり出すこと。

減数分裂はただ「父系と母系の染色体セット」を作るためだけに起こるのではありません。減数分裂で遺伝子の組み換えが起こるからこそ、バラエティある遺伝子組成を持つ個体(多様化)が生まれます。

多様性があるからこそ、生育環境が激変しても、それに対応できる形質を持ったものがいれば、種の全滅を回避できます。ただし、この有性生殖、オスとメスが出会わなければなりませんし、なにより卵や精子を作る手間がかかります。

細胞は細胞体からなっています。遺伝情報に関しては、ざっくりと、核DNA(デオキシリボ核酸)以外に、細胞体の中に存在するミトコンドリアにもDNAがあると覚えましょう。

では、ここからは顕微鏡の旅を、ご一緒に。すると見えてきました、の中に、23対=46本の染色体が格納されている様子が。次に染色体をほぐすと、芯に巻きついた沢山のDNAが折り畳まれて入っているのが確認できます。

この核DNAをよく見れば、2本の鎖とそれをつなぐたくさんのヒモのようなものがありました。このヒモは2種類の塩基のペアからなっていて、この塩基の配列で遺伝子情報が決まるんです。つまり、遺伝子とはDNAヒモに仕込まれたタンパク質の合成の設計情報の集まり、いわばタンパク質の設計図のことだったんです。そして、核DNAは父親と母親から一つずつ一対の遺伝子を受け継ぐことになっているのです。

次は、水戸黄門じゃなくてミトコンドリアミトコンドリアは、酸素を使ってエネルギーを作り出す生き物(好気性細菌)が取り込まれて、細胞体に住みついたもの。上で強調したように、核DNAと別に、ミトコンドリアの中にもDNAがあるのは、もともと別の生き物だったから。

サイズ順に 遺伝子 < DNA < 染色体 < ミトコンドリア < 核 < 細胞体 となりますよ。

さて、いよいよ、の決定に関わる情報を持つ性染色体の話。性染色体にはX型とY型の二種類があります。Y染色体は男性をつくる遺伝子を含んでいて、受精卵がY 染色体を持つことで、男性となります。そしてY染色体の特徴は「父から息子へ」、すなわち父系の系統のみをたどることができるということ。

今度は、ミトコンドリアDNAmtDNA の特徴についてです。mtDNA はミトコンドリアのタンパク質の情報を持つ以外に、母性遺伝という特徴を持ちます。母親のものだけが子供に伝わり、父親の mtDNAは次世代にはまったく関与しないというものです。ですから、この特徴を使って家系を追跡可能。父系および母系が入り交った核DNAと違って、mtDNA は「母から娘や息子へ」伝承されます。

こうしてみてくると、人の一生なんて、有性生殖という遺伝情報を「子孫に遺し・伝える」程度の味気ないものに見えるかもしれません。でも、そうだからといって、理性の暴走を制止できずに、人の生死を分けるようないじめを、それも公衆の面前でするなんて言語道断ですからね。

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