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ハジマリ

私は絶望していた。
パスポートと半券そして200ルピー。
これじゃあ日本に帰れない。
これじゃあ、さっき食べた大盛りのカレーセットが50ルピーだったから…あと4食分!?
そのまま崩れ落ちた。

「お姉ちゃん大丈夫?」

私は雷に打たれたみたいに飛び上がり、
たちつくした。そこにはガリガリに痩せ細った少年が、私のことを覗き込んでいた。

「ねえ、どうしたの?僕の言葉通じない?」

私が何よりも驚いたのが、それが流暢な日本語だったということだ。
日本から約6000キロ離れたインドの旧市街であることを忘れさせる驚きであった。 私はやっとの事でこういった。

「日本語が分かるの?」

すると彼は優しく笑って
「なーんだ大丈夫そうだね。倒れてたからさ心配になっちゃってお姉さん狙われてるよ?ほらあそこと、あそこと…」

周りをよく見るとギラギラと目を光らせたいかにもという人達が私を舐めるように見つめていた。

「僕の名前はビーカー。お姉ちゃんの名前は?」
「私の名前はガルだよ。」
「ガルか〜日本人の名前ではじめて聞いたよ。遊びに行こうよ!」

そういってインドの旧市街を仲良く歩く。
ガンガ(インド北部に流れるヒンドゥー教の聖地と呼ばれる川。別名ガンジス川)のほとりに着く。
ガンガはインド人の生活の中心でその水を使って沐浴し、調理し、洗濯し、汚物を流し、そして最期はその川に死体まで流す。
そんな川のほとりに2人で座った時 
「ガルは観光?じゃないよね?インドで何してるの?」

そう言われた瞬間涙が溢れてきた。多分ずっとそれを聞いて欲しかったんだって…
 

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