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五体フマンゾク

話しかけずにはいられなかった。
言葉も通じないけれど。
牛の糞にまみれた地面にしゃがむ。
その彼の前に置かれたものは五つあった

一つはお金を貰うための薄汚れた紙カップ。
そして白くなった細い何かが四つ。
目を凝らしてよく見た瞬間…悪寒と恐怖と嗚咽が私から溢れてきた。何を見ても何も感じなかった私に…久々の感情だった。

 それは…それは…白骨化が進んだ…その少年の手足だったのだ。
しばらくの間何も何も言えず、ただただ眺めていた。
眺めざる終えなかったのかもしれない。
腰が抜けて動けなかったのだから。
この光景はかなり時間の経った今でも鮮明に思い出せる。
「んん?」
 彼が何かしらの言語を発したなと思い、彼の顔を見ると太陽のような笑顔で私に微笑みかけてきた。
 

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