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忍殺TRPG二次創作:【アナザー・ロード・オブ・ザ・アンダーワールド】

ドーモ、がーねっとです。
先日ステゴマ隊サーバー(=私が参加させていただいている忍殺TRPGサーバー)にて「ニンジャスレイヤー抹殺指令」のNMをしたんですが、その時PC達に憑依しているニンジャソウルについての話が出てきましてね…。
せっかくだし、自分の手持ちニンジャの一人である「ロウトン」で、憑依しているソウル絡みで何かエピソード考えてみようかな?と思った結果、例の如くスレイト行為と相成りました。私のスレイト行為の動機なんて大体そんなもんです。
自分のPCに憑依したソウルの格やクランを考えたり、○○・ニンジャの名前を考えるのは実際タノシイがある。そして名前被ってないか調べるのに苦労する

今回のスレイトの時系列としては、ニンジャスレイヤーTRPGのシナリオ「ニンジャスレイヤー抹殺指令」クリア後となります。
ロウトンはPCではなく友情出演(PC達を迎えに行くツェッペリンに搭乗していた)だったのと、ある意味身内でないと分かりづらい箇所があるのでちょっと申し訳ないのですが…まあ読み物として楽しんでくれればうれしいドスエ!

※ロウトンとステゴマ隊がなんたるかについてはこちらの記事をドーゾ

※7/7追記 続編スレイトができました



 曇天の隙間からドクロめいた月が顔を覗かせる。ネオサイタマの喧騒を遥か高みから見下ろし、冷徹な裁定者のごとく人々を見定めている。
 ロウトンは珍しく焦燥感に苛まれていた。人を殺したから? 否。殺しなど今更だ。実際、目の前で血を流し倒れるヨタモノに対し、彼は何の感情も動かない。命乞いをする生き残りの頭を踏みつけながら、彼はその原因について考える。
 ニンジャスレイヤー。ネオサイタマの死神。同僚含め、遭遇したことのあるニンジャは多いようだが、ロウトンが実際にその姿を目にしたことはなかった。しかし今回、図らずしも死神の脅威を……さらに同僚の話には出てこなかった、異様な姿を目の当たりにすることとなった。黒い炎に包まれ、ジゴクめいた声を上げるニンジャ。いや、あれは本当にニンジャなのか?
 (奴はワタシを殺そうとしたんだ!)とある同僚との会話を思い出す。(奴はどこまでも追いかけてくる……そう思わせる恐ろしさだった! ワタシを殴り殺そうとした! ニンジャを殺すと言った! 本当だ!)彼はそれがハッタリではないと分かった。ニンジャを殺すニンジャ。その存在はまごうことなき真実!
「……チイッ!」
 ロウトンはヨタモノの頭をトマトめいてあっさりと踏みつぶした。感情を抱えきれない。そのことが彼をさらに苛立たせる。血に濡れた靴を意に介することなく彼は路地裏の奥へ突き進んだ。何故か、暗闇の中にいたいと感じた。

◆◆◆

 シャドウ・スネアの手を握りながら、ロウトンはとある廃墟の中で休んでいた。ソニックブームを介してダイダロスの指令を受け取ったのも、こうして一人休んでいる時だった。
 部屋の窓には板が打ち付けられ、あるいは外からネオン看板や広告が取り付けられている。光が差し込む隙間はない。漆黒の闇の中でもニンジャ視力は問題なく部屋の輪郭を映した。かつては人が住んでいたのか、打ち捨てられた家具がいくつか残っていた。
 『ハッキングしたツェッペリンの航路に一番近いニンジャはテメェだ。だから今すぐ現場に行きな』少なくともソニックブームはそのように語った。……本当に? ただそれだけの理由で、ソニックブームやダイダロスは自分を指名したのか? あんな訳の分からないニンジャがいるところへ、自分を含めたステゴマ隊を?
 ロウトンは組織にも同僚にも不満はない。ただ、今回ばかりは、一言何か言わずにはいられないような落ち着かなさがある。ロウトンはスネアの手を強く握りしめた。影の手は音もなく霧散した。
ふと人の気配を感じた。ロウトンは立ち上がり、物音がする方向へ歩いた。暗がりにヨタモノが数人集まっており、その中央でアワレな悲鳴を上げる何者かがいた。ネオサイタマであればよく見る光景である。素通りしても、見物しても良かったが、彼はクナイ・ダートを数本生成した。そのまま無造作にヨタモノめがけて投擲した。

◆◆◆

 気まぐれに録画した映像を確認しながら、ロウトンは頬の血を拭った。顔には点々と鮮血が飛び散っており、彼の目前には……おお、ナムアミダブツ! ツキジめいた凄惨たる光景が広がっているではないか!
 ニンジャがモータルを捻り潰すのは容易い。ニンジャがその気になれば、まともな武器を持たないヨタモノ数人など一瞬でネギトロになる。その中央で襲われていたオイラン崩れも同様だ。
 コーカソイドの顔立ちを意識したであろう化粧をほどこした金髪のオイランはほとんど死にかけであった。ヨタモノに襲われるのとニンジャに殺されるのはどちらがマシだろうか、とロウトンは考えてみる。彼のプライベート端末には、影の手に引き裂かれる金髪オイランの姿が保存されていた。
 今日はどうにも人の死に触れていたくて仕方なかった。無駄な虐殺はソウカイヤでも良しとされない。しかしそれでも他人の死を目の当たりにしなければ気が休まりそうになかったのだ。実際、10人以上のモータルを殺してようやく彼の焦燥感は収まった。
 ロウトンはオイランの髪を掴み、顔を上げさせる。放置しても死ぬだけだろう。しかし彼はクナイ・ダートを生成し、オイランの額へ深々と突き刺した。オイランは断末魔を上げて死んだ。動かない死体にはもう興味がなかった。
 (帰ろう)黒い霧となったクナイ・ダートが消失するのを見届け、ロウトンはひとりごちた……否。ロウトンの言葉ではない。彼は訝しんだ。誰かが自分に語り掛けてきたのは間違いなかった。ただ、声の主が分からぬ。
「……誰だよ?」
 呟いた言葉は間違いなくロウトン自身が発したものであった。声はない。代わりに、不可思議な満足感が彼の胸にあった。
 

 帰路に就きながら、ロウトンはマルノウチ・スゴイタカイビルの上空で見た光景を思い返した。あの時ニンジャが倒れ、いつまでも爆発四散しない時に感じた根源的恐怖は、本当は自分が感じたものではなかったのではないか?
 不意に、あのオバケめいた黒い炎の言葉がニューロンに蘇った。カムイ・ニンジャ。デルピネ・ニンジャ。そんな名前の同僚はいない。しかし確かにあのオバケは、あの場にいた同僚をその名で呼んだ。
 ロウトンは業務用の端末を取り出し映像ログを探した。該当シーンを再生する。あの場にいた同僚の狂乱と絶望に交じり、カムイ・ニンジャを名乗るニンジャのアイサツが聞こえた。
 (待てよ)
 映像を見直す。カムイ・ニンジャのアイサツ。確認すれば、それを発しているのは現場にいた同僚の一人だった。だが、同僚が今までそう名乗ったことはない。少なくとも自分の知る限りでは。
 (ニンジャが、わざわざ違う名前でアイサツする)(どういうことだ?)(ニンジャの中に、別のニンジャがいるってことか?)
 その時、ロウトンは自分の中に溶け込む何者かの存在をはっきりと知覚した。ほとんど同化しているが、それは確かにそこにいる。それと同時に、「ネオサイタマの死神」と呼ばれるニンジャが見せた異様な変貌について、彼は一つの手がかりを得た。
 ならば人の死を望むのも、他人を破壊したがるのも、自分の中にいる何者かの願望であろうか? ロウトンはモータル時代の自分を振り返り、半分は否定した。転落する人間を見たがるのは昔からだ。そして現在、思いのままにその願望を叶える力を手にした。それを行使しているのも自分の意思だ。おそらくは。
「……ニンジャの中に、ニンジャがいる……」
 得たばかりの気づきを咀嚼するように、何度も何度も口にする。ロウトンはビルを飛び移り、まっすぐにトコロザワ・ピラーへ向かった。ドクロめいた月が分厚い雨雲の裏に隠れ、重金属酸性雨が静かに降り注ぎ始めた。
 

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