マンションの構造:間仕切壁と戸境壁

マンション構造おたくなので、しょっちゅうスラブ厚だの石膏ボードの厚みだのといったツイートしていますが、たまに間仕切壁と戸境壁の違いを聞かれることがあるので、簡単にメモします。

1.間仕切壁と戸境壁の違い

端的に書くと、間仕切壁と戸境壁の違いは以下のとおりです。
間仕切壁:「専有部内」の、各部屋の間の壁
戸境壁:専有部と共用部、自住戸と他住戸との間の壁

イラストにすると以下のとおりです。

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引用元:タワーザファースト名古屋伏見HP
※関係ないですが、この物件の間取り、どれも超綺麗なのですよね。うらやましい。欲しい。

2.間仕切壁の種類

実際に間仕切壁はどのようなものが使われているのでしょうか。以下はハルミフラッグの例です。

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引用元:ハルミフラッグ クオリティブック

上記の例では、居室間の壁は「12.5mm石膏ボード+グラスウール+12.5mm石膏ボード」となっています。居室と廊下の間は「12.5mm石膏ボード+12.5mm石膏ボード」で、間のグラスウールが省略されていますね。

晴海フラッグはかなり仕様が高いマンションです。他の通常マンションでは、居室間の壁は「12.5mm石膏ボード+12.5mm石膏ボード」で間にグラスウールが使われていないものが一般的だと思います。

一部の大手デベロッパーの物件では数億ションといった高額物件でも「9.5mm石膏ボード+9.5mm石膏ボード」が一般的だったりして、石膏ボードが他社よりも特に薄いので、つい楽しくなってツイッターで呟いてしまっております。

逆に間仕切壁で仕様が高いのは積水ハウス(の一部の物件)。主寝室と他の部屋との間の壁は「25mm石膏ボード+グラスウール+25mm石膏ボード」の組み合わせとなっています。すごい!

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引用元:グランドメゾンセンター北 パンフレット

稀に、間仕切壁にコンクリートが使われるケースもあります(壁工法の物件に多い)。遮音的には最強だと思いますが、間取り変更ができなくなるというデメリットもあります。

3.戸境壁の種類

それでは戸境壁はどうでしょうか。耐火要件、そしてプライバシー確保の意味もあり、間仕切壁より戸境壁の方が総じて壁のグレードは高いです。

戸境壁は大きく湿式壁、乾式壁に分かれます。

湿式壁:鉄筋コンクリート製の壁。現場施工タイプ。
乾式壁:グラスウールと石膏ボードでできた壁。工場生産、現場組み立てタイプ。

間取りが上下階で変わらない板状マンション、またプレキャストコンクリートをあまり使わず、現場打ちコンクリート主体のマンションでは、耐力壁の効果も兼ねて湿式壁を使うことが多いです。

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引用元:レ・ジェイド大津LUXE HP

壁の厚みは180mm-260mmのことが多いです。また、クロスをコンクリートに直接貼らず、間に石膏ボードを挟むこともあります(二重壁)。

メリットは、地震等何があってもずれることはない、デメリットは壁が厚い分だけ居住面積(内法面積)が狭くなる、二重壁の場合には音が響く、等でしょうか。

乾式壁は軽いこと、上下階の間取りの柔軟性を確保できることから、タワーマンションや、上下階で間取りを変えたい物件等で採用されることが多いです。

乾式壁の場合には、首都圏のマンションだと多くのケースで「21mm石膏ボード+9.5mm石膏ボード+グラスウール+9.5mm石膏ボード+21mm石膏ボード」の136mm乾式壁が採用されることが多いと思います。

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引用元:タワーザファースト名古屋伏見 HP

TLD-56の遮音性能、これは「厚み260mmのコンクリートに相当する遮音性能」となります。

ちなみに、上記のタワーザファースト名古屋伏見の場合、他住戸との間は厚さ159mmのTLD-60の乾式壁を採用しているようです。私の知る範囲ではあるのですが、タワーマンションでこの品質(ワンランク上)の性能の乾式壁を採用しているの見たことがないです。うらやましい!ほしい!

乾式壁のメリットは、壁厚が薄いために居住面積(内法面積)が広くとれること、デメリットは、仮に施工に問題があった場合、乾式壁がずれてしまった場合には遮音性能も耐火性能も失われしまうこと、それほど強度がある訳ではないので、本気になって道具を使えばブチ破れることです。

もちろん、乾式壁がずれるのは大ごとなので(境界標としても機能しているので、仮にずれると他住戸に越境してしまうことにもなってしまいます)地震等でもずれることのないように、上部・下部のランナーをピンでとめ、スタッドを設置し、しっかり固定されるようになっています。

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引用元:吉野石膏 HP

また、乾式壁の強度ですが、隣住戸が戸境壁を打ち破って攻めてきたという話はまだ聞いたことがありません。隣の住民がプーチンでなければ気にしなくて良いと考えています。

4.まとめ

上に記載したように、間仕切壁と戸境壁は仕様がかなり違います。
基本的には戸境壁の方が間仕切壁よりも仕様が高いです。

たまに、「この間仕切壁はどうでしょうか」と連絡を頂くことがありますが、みると戸境壁の仕様イラストだったりします。間仕切壁と戸境壁は別物です。

基本的にマンションを買ったり売ったりするときに意識する必要のない点ですが、モデルルームで仕様の違いを意識してみると、また違う楽しみ方ができると思います。