鑑賞録『くれなずめ』(ネタバレあり)

あらすじ〉
高校時代に文化祭でコントを作った冴えない男子6人組は、12年経った今、友人の結婚式の余興のために集まっている。それぞれ学生時代から今までの思い出を振り返る。
思い出だから美化されるのか、何気ない一瞬が尊いのは何故か。忘れられない過去と向き合う彼らの「答え」とは。
(2021年公開/主演:成田凌/監督:松居大悟)

鑑賞録〉
『窮鼠はチーズの夢をみる』の成田凌くんに心をかき乱されてからだいぶ経つけど、それ以来気になる存在の彼にまた「ヤラレた!」と思ったので記録することにした。

きっかけはTikTokで流れてきた映画評。まずキャストが魅力的だった。高良健吾くんの映画は間違いないと思ってるし、若葉竜也くんは『おちょやん』以来気になっている。そしてみんな大好きハマケン。
どうやらちょい役も豪華らしい(滝藤賢一万歳🙌)
そして何より私を引き込んだワンシーン。

「オレ、もしかして5年前に、しん…」

ソッコーで配信確認。
アマプラにもHuluにも上がってたし、
1時間39分と短めだし、これは見るしかない。


〜以下ネタバレあり(勝手な解釈含む)〜

「吉尾(成田凌)が死んじゃってるのわかってるからなぁwwww」なんて思いながら気楽に見始めた。
なんで5人は吉尾の存在を普通に受け入れてるのかな、特別な仲間だったのかなとか、全然成仏しないなとか「私は話のオチを理解しているが、それにどう繋がっていくのか」を、楽しむつもりで見ていた。

でも全然わかってなかった。
私はずっと、
吉尾が成仏できない幽霊なんだと思ってた。

あぁそうか。

「未練」があったのは、5人の方だった。

何気ない思い出が特別になったのも、
吉尾がもういないから。
余興に吉尾が好きだった(と思っていた)曲を選んだのも、あの頃と同じように赤フン姿で踊ったのも、吉尾が口にした不思議な一言を反芻してしまうのも、吉尾がいたあの日々が忘れられないから。

吉尾の事が大好きだったと気づいたのが
吉尾が死んでからだったから。

最後に会ったあの夜に
素っ気なく別れてしまったこと。
最後の電話に出られなかったこと。
「また明日」が来ないなんて
1ミリも想像できていなかったこと。

自分達の愚かさと吉尾への後ろめたさが
吉尾がいなくなって5年経っても尚
彼らをがんじがらめにしていた。

私が「幽霊」だと思っていた存在は
彼らが作り出した「偶像」だった。

だけど当の本人は天国でしっかり自分の死を受け入れていた。みんなと想いはとっても嬉しいけれど、みんなが自分を思ってくれているように、自分はみんなにも前を向いて欲しい。
忘れないで欲しいけど、忘れて欲しい。

残された者は前を向いて生きていかねばならない。
時には大切な記憶すら書き換えて。

過去は変えられないけれど、
記憶は書き換えられる。

「答え」なんて簡単にわからないけど
沈みそうで沈まない夕日に
「くれなずめ」と心の中で呟いた5人は
明日の朝からは今日よりもきっと
「吉尾のいない世界」と向き合えているはず。

見終わってすぐは「意味不明」で混乱したけど、
松居監督の実話をベースに作られたことも含めて
色んな人の考察を読んで私なりに解釈を進めて、
その上でとても良い映画だったと思った作品。

この作品を「意味不明」と評するレビューもいくつか見たけど、それはこの作品に向き合う時間が短すぎたか、身近な人の死に直面した事が未だない人なんじゃないかな。

ただ、これを良作だったと感じた私の作品解釈をどこかに残しておかなくてはと思った。成田くんの夏ドラマはじまるしね✨

監督の経歴とかウルフルズの楽曲の蘊蓄は他の方も沢山書いていらっしゃるからここでは割愛。

癖のある邦画が好きな人は
是非見ておいて欲しい作品だと思いましたまる。

愚文失礼おば。
ぐらしあす。

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