変形性膝関節症の保存療法

変形性膝関節症の治療は保存療法と手術があります。ここでは保存療法についてお話しします。保存療法の基本は力学的ストレスの軽減と炎症のコントロールです。

体重減少
力学的ストレスを軽くするのはまず体重を減らすことです。体重を1kg減らすと膝の負担は4kgから8kg減少します。逆に、体重が増えたのをきっかけに膝の痛みが出現することもあります。

足底板
歩行をイメージしてください。O脚になると踵が床につく際(立脚期)に膝が外側に揺れます。膝が外側に揺れた時、内側の軟骨には強い負担がかかります。この繰り返しで内側の軟骨はすり減ってしまいます。この外揺れを減らすには足底板が有効です。足底板は靴の中敷きですが、外側に8mm以上の厚みが必要と言われてます。外側に厚みがあることで膝の外揺れが減り膝の内側の軟骨の負担が減ります。整形外科で装具製作所に依頼し作成します。写真は右足用です。

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筋力訓練
膝の痛みがあると知らず知らずのうちに足に力を入れなくなり筋肉が痩せてしまいます。筋肉が衰えると膝がさらに不安定になります。そのため足の筋力訓練が必要です。大腿四頭筋は太腿の前面にある筋で膝を伸ばす働きがあります。中殿筋は股関節を開く筋で外転筋といいます。大腿四頭筋、中殿筋は歩行の際にとても重要な筋肉です。筋力訓練は歩くことが基本ですが、膝にかかる重力が少ない運動が良いです。自転車漕ぎでは体重がサドルにかかるため膝には重力がかかりません。プールでの歩行では浮力のため膝にかかる重力は少ないです。他、膝挙げ運動 踵挙げ運動 下肢伸展挙上運動(大腿四頭筋訓練) ハーフスクワット 外転筋訓練など簡単な運動の指導を行っています。

全身のストレッチ
膝の痛みや腫れが続くと膝が少し曲がったままで伸ばせなくなってしまいます。立つときに膝を伸ばせないため軟骨の一部分に多く負担がかかることになります。そのため膝が曲がったまま固まってしまう前に膝を伸ばすストレッチが必要です。歩行は全身の運動連鎖による複合動作です。足だけではなくて全身のストレッチを行うようにお願いします。ラジオ体操で十分だと思います。

炎症のコントロール
膝は荷重関節なので安静が基本です。階段や坂道をなるべく避けて生活し消炎鎮痛剤を用います。ヒアルロン酸の関節注射は軟骨表面の潤滑をよくすることで関節内の状態を整え炎症を軽くします。ステロイド剤の関節注射は炎症を抑える働きがありますが、頻回に行うことはできませんので炎症が強い時のみ行います。