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魚介

例えばおすすめの食べ方を紹介するような、そんな有益なテキストではない。


■たちうお

太刀魚ばかり出る季節があった。何月ごろかは覚えていないが、暑くも寒くもなかった気がする。
その頃合いの夕飯には、大皿にブツ切りの太刀魚を焼いたものがたくさん、が出てくる。
魚の構造はこれで覚えた。つくりが大雑把で身離れがよく、小骨もない。非常に食いやすい。
これといっしょに米を食うのが好きだった。

■さより

たぶん春くらい。サヨリの皮と骨を揚げたやつが出現する。
カリカリのやつで、クッキーの空き缶に入ってる。
学校から帰ったら、缶を開けて、そのカリカリを食う。
一度、揚げる様子を横で見ていたことがある。
揚げたてをもぐもぐしながら、もう一つつまんで勝手口から出て、向かいのネコにやったら食った。名はミーコ。こいつが生魚を食うのを見たことがない。
秋になると家の裏でサヨリが釣れる。
エラを開けるとたいてい、寄生虫がついてる。白いダンゴムシみたいなやつ。
ダンゴムシは好きなので、そいつがついてるサヨリを釣るのも好きだった。
簡単に釣れるところも好きだ。小さい釣り針の先に餌をちょっとつけて、群れが来たら適当に目の前に放り込む。ほぼ水面だから、食餌の様子がよく見えて楽しい。
大人になるまで、身を食べたことがなかった。

■しっぽ

魚の揚げたやつの尾ビレが好きだ。
背ビレも胸ビレも腹ビレも好きだ。
うちは民宿で、魚の唐揚げをよく出していた。
厨房のテーブルには、カレイかロッコの唐揚げがたくさん並んでいた。
俺が小さい頃、それらのしっぽを片端から折り取っては食っちまったらしいが、覚えていない。
家族の夕食にも魚の唐揚げがたくさん出てくるが、そのときもすべてのしっぽを俺が食った。これについては覚えがある。今もやる。

■くるまえび

むかしはよく客に出していた。25~30cmくらいのを焼いたやつ。
たまに家用にも出てきたが、あまり好きではなかった。
エビで米は食えない。
けれど、フライか天麩羅になれば米と一緒に食える。衣が本体なのではないか。

■あまえび

甘エビもしょっちゅう出現していた。気がする。
爺婆が向かい合わせに座って、山積みの甘エビを剥いていた。
エビの刺身は好きでなかった。
いつだったか、家庭内焼肉の折にホットプレートで焼いて塩振ったら美味かった。
甘エビの刺身は焼くのがいい。

■わたりがに

こいつもよく客に出していた。
あんまり好きではなかった。苦いというか、えぐいというか。
酢をつけたやつは、おいしいと思った気がする。
いつ頃からか、オホーツクの冷凍ずわいに置き換わった。
ワタリガニっぽいのはそこらへんにいるが、そいつらもワタリガニなのかわからない。なんかハサミの長さが違う気がする。

■ずわいがに

越前蟹のほか、季節によってはオホーツク産。
いつからか、カニをうまいと思うようになった。
なんでだろ。
高価らしいのでうまいと思うようにしたのか。

■さわがに

路上、家の間、石垣、玄関、風呂、便所。どこにでも出現する。
海のすぐそばにもいる割に、淡水性だという。

■いわがに

浜には時折、漂着物の焼却のためか焚き火があった。
そういうときは岩場やテトラポッドで色々な生物を集めて火に焚べて遊んだ。火が弱くなれば漂着した発泡スチロールを投入し、火勢の維持に努めた。
焚き火で焼いたイワガニを、その時一緒に遊んでいた数人で齧ってみた。いかにも発泡スチロール燃やしたときの煙の風味で、下痢になった。原因は明らかだが不明。

■いしがに

見た目はワタリガニっぽく、名前はイワガニっぽい。

■しただめ

ちいさな巻き貝。岩やテトラポッドにくっついてる、ちいさいやつ。深いところにちょっと大きいのがいる。
うちには3種くらい魚介図鑑があったが、どれにも載っていなかった。イシダタミは載ってたけど、こいつは生息域やサイズは近いながらも形も模様も違う。イシダタミが訛って、ついでに対象も変わってシタダメと呼ばれるようになった謎貝だと思うことにしてた。
2000年くらいだろうか。インターネットが電話代を気にせず使えるようになった頃、ふと思い出してggってみたが見つけられなかった。
先日またggってみたら、出てきた。シタダメ、でいいらしい。知らんけど。
貝類は嫌いだった。内臓っぽさが嫌だ。
この頃は食っても平気だが、好きかと尋ねられたら、好きだと答えないようにしている。

■さざえ

こいつも巻き貝だから嫌い。
ついでになんか苦いのが腹立つ。
腰巻きと呼ばれる(?)部分を除去すれば苦くない、ということだが、除去しても苦い。なんだこいつ。

■ばいがい

巻き貝だし。

■しじみ

近くで採れるせいか、そこそこの頻度で出現した。
汁の味は好きだった、ような気がする。よく考えると、変なにおい。
小さいゆえにあんまり内臓を感じないせいか、こいつは食ってた。

■あさり

あさりは貝柱だけ食ってた覚えがある。
しじみより大きいから、内臓感が嫌だったんだと思う。
中のちっちゃいカニを探すのが好きだった。
一度だけ2mmくらいの真珠みたいなのが出てきたことがあった。
今は味や食感は気にならないが、砂に当たるのが嫌で、あんまり食いたい気持ちにならない。

■かき

小学校の1~2年生くらいだったか。
友達のカーチャンが漁港の隣の問屋みたいなところで働いてるとかで放課後に訪ねたところ、そこのおっさんがストーブで牡蠣を焼いてくれた。
いいにおいであり、美味しさの予感でかじりついたら内臓だった。食べれなかった。
でも、いいにおいだった。
専門学校のころ、はじめてカキフライを食った。がまんして食べることができた。
牡蠣が好きな人がおり、牡蠣は美味しいものに位置づけられているのだから、本当は美味しいのかもしれない。
だからたまに、料理のうまい店に牡蠣があれば食ってみるが、生とかプリプリ感を大事に残した調理で得られるものはプランクトン豊富な海水の風味だと思う。
牡蠣のオイル漬け的なやつはカチカチパサパサで海水の味が少なく、はじめて牡蠣はうまいかもしれないと思えた。でもそれは二枚貝の味なので牡蠣でなくてもいい気がする。
牡蠣が好きな人の気持ちがわからない。

■ほたて

ホタテは時折大量に出現する。
貝柱だけ食った。内臓は嫌です。
家の裏の生け簀にもたまに棲んでいることがあり、ときおり人を襲う。

■こうなご

給食で出てきた。たぶん茹でただけのやつ。
当時の担任教師は戦中育ちのためか残さず食べることが求められたが、みんな内臓ごと食うのを嫌がった。
おいしく調理されたものなら、おいしいのかもしれない。

■かわはぎ

よく味噌汁になってた。
剥かれる様子を見ているのは楽しい。

■しまだい

子供の頃、結構な頻度で食卓に登場してた気がする。
しましま模様が好きだった。
昔は好んで食べていた覚えがあるが、いつ頃からか臭いを感じるようになった。
岸壁や桟橋にはカワハギとシマダイの幼魚がたくさん棲み着いているが、こいつらは人の乳首を狙う。気をつけろ。

■ぐれ

カワハギ、シマダイとセットでそこらへんに棲んでる。
ちいさいのを釣ってミッキーナイフで捌いて遊んでいたところ、それを見た母(山間部出身)は「(そんな小さいの)かわいそうに」と言った。
昆虫やカタツムリが潰れて死んでいるとかわいそうに思うが、魚には同じ気持ちが湧いてこない。
生き物であることより食べ物としての要素が大きいからなのかもしれない。
大人になるまでメジナと別の魚だと思ってた。

■とろ

トロやで。と親父が言っていた。
あれはなんのトロだったのか。
スジが噛み切れず、飲み込めなかった思い出がある。

■うに

ウニも嫌いだ。
ミョウバンがどうのと言う向きもあるが、海でそこらへんに居るのを割って食ってみてもプラモみたいな味がするから、たぶん保存料の類は関係ないんだと思う。
塩雲丹は食えた。おにぎりのやつは、なんだかうまいと思った。
何年か前、串の先っちょにつけた塩雲丹を炙ってみたら、海藻臭を伴うたらこ味になった。じゃあ、たらこで良い。
こいつらも、牡蠣と同じく主成分が海水のにおいなんだと思う。
この本で「牡蠣食うのは海への郷愁」みたいなこと書いてあったけど、牡蠣や雲丹が好きな人は、海臭いと喜ぶ人なんだろか。

■ます

鱒寿司が好きだ。品名が『ますのすし』のやつだ。名前が違うやつは、味も違うような気がする。
初めて食ったのはいつなのか、はっきりしない。
小学1年のときに、手術のため金沢の病院に入院した。しらさぎの車内販売で鱒寿司を食った気がするが、たぶんこれが初めてではないと思う。
子供の俺は、なんてうまい魚だろうと思ったし、今でもうまい魚トップランカーである。
鱒は、鱒寿司に乗ってるやつほどうまくない。

■さば

はじめてサバをサバと認識して食う前に、へしこがあったかもしれない。
確率からしてそんなことは無いはずだけど、サバのパーツを意識して食うようになったのは、へしこ後だったようにも思える。
ここまで書いて思い出したが、へしこ以降、薄腹のところを選ぶようになった。つまり、それまでもサバとして食ってたはずだ。
昔はけっこうサバの刺身が登場していた。
小皿に酢をたらして刺身をしばらく漬けて、食ってた。
醤油がちな食生活に、酢はなんだか良かったんだと思う。それには鱒寿司への想いが関係しているのかもしれない。
いつだったか、婆ちゃんにアニサキスが命中し、以来サバの刺身が登場しなくなった。
いまは、たまに刺身にしているらしい。

■ひらめ

屋内と湖に生け簀がある。
子供の頃、暇なときは魚の解体を眺めて過ごしていたが、大抵はヒラメだった。
今でも帰る度にヒラメが解体されている。
中骨から身を外すために刃が進むとき、ヒレが波打つのがちょっとおもしろい。

■かれい

カレイの干物はしょっちゅう出てた気がする。
たくさん採れる地域らしいが海中で見たことも、釣れたこともない。
揚げて尻尾だけ食いたいが、身も食わんでもない。

■たい

釣れた試しがない。
家の裏で釣りをしていた折、針が取られたので錘だけつけて投げて遊んでいたとき、リールを巻いていると引き寄せられる錘を追って水面近くまでたいが来たことがある。滞在を期待して餌を撒いたが、針をつけたころにはいなくなっていた。
家の裏の海水湖には生け簀が沢山浮かんでいるが、時々網が破れるイベントが発生する。そういうのが棲み着いてるのかもしれない。

■ふなむし

村ではアマメと呼ばれていた。おれもそう呼んでいた。
でも図鑑にはフナムシと書いてあった。
これもいつだったかggってみたら、九州の一部での呼び名らしい。
なぜそんな離れたところの地方名が定着しているのかは謎。
村には現在の宮崎県あたりに関連するほこら的なものがあるのと関係あるんだろか。とも思ったが、Wikipediaにはアマメは長崎と鹿児島って書いてある。なんだろうか。宗像教授のにおいがする。

■ねたんぼ

岸壁とかにいる。ハゼっぽい。10cmくらい。
そこらへんに落ちてる釣り針(糸つき)にフナムシ刺して目の前に垂らしてやればすぐ釣れる。
子供がはじめて釣りやるときに、いい魚だと思う。
でもねたんぼはもうちょっと深いところにいるギンポ的なやつの名称だったような気がしなくもない。思い出せない。どっちも図鑑に書いてない、村ローカル名な事以外、はっきり思い出せない

■しょんべんのみ

岸壁で立ち小便すると寄ってくるから、そう呼ばれているらしい。実際寄ってくる。
ハゼっぽい。肌色系。ちいさい。

■こち

すなのなかにいる。
小さいのを焼いてみたら臭かった。

■あゆ

海でやってる網に鮎が掛かった(1匹だけ)のを、親父が市場で買ってきたのかもらってきたことがある。
おいしかったです。
魚類は、鮎だけいればいいんじゃないか。

■はまち

ハマチ月間みたいなことになる。毎日ハマチ。
頭の煮たやつの脳をつつくのが好きな時期があった。
テレビの映画の時間にバタリアンやってた頃かもしれん。

■ぶり

刺身にタレ塗って七輪で焼くのが好きだ。食べるのではなく、焼くのが好きだ。
自分で金払って飯食うようになってから、ブリが高価いことがわかった。
たまにオエってなるが、血合い身を残さず除去して薄く切ればだいじょうぶな気がする。

■ひらたいもの

海面を漂ってた。
全長5cmくらいの楕円形でペラペラ。上面と下面で色が違う。手ですくい上げるとダラーってなる。
海に戻すとヒレっぽく波打つ動作。しているように見えたが、動く水に揺られていただけかもしれない。
アレはなんだったんだろうか。

■ながくてかたいやつ

タツノオトシゴをまっすぐにしたようなやつ。20cmくらい。細くて硬い。ゆっくり移動する。
これはまだ魚類だとわかる。
揚げたら食べれるかもしれない。

■あなご

小3くらいのころウナギを初めて食べた、んだと思う。また食べたいとでも言ったんだろう。
爺ちゃんが、ウナギ獲り行こか、と俺を乗せて船を出した。
11月の日本海は波が高く、今日タマヒュンと称される現象を初めて体験した。
大きく揺れる船上に揚げられた仕掛けカゴから出てきた、太さ長さがバットくらいのうなぎ状のものがのたうっていたのを覚えている。
夕食は蒲焼になったが、小骨が固くてろくに食えなかった。
それがウナギじゃなかったとわかるのはちょっと後になってからで、ついでにアナゴだとわかったそいつが寿司に載ってるのとはちがうような気がすると薄々思いながら齢40を過ぎこれ書いてるときに思い出しついでにggったらクロアナゴのような気がする。

■しゅもくざめ

保育所の散歩で隣の漁港に行ったとき、大きなシュモクザメが置いてあった。口に噛ませた角材が外れないように眼柄に縛ってあったのが強く印象に残っている。縛るのに便利な形状に進化したのは失敗じゃないか。

8の字に縛らないと抜けそう

■さめ

サメのすり身を揚げたやつ。特段うまかったような覚えがないので、たぶんそうなのだろう。種類はわからない。

■さめ

裏の海水湖で30cmくらいのサメが釣り上げられるのを見た。泳ぎたくなくなった。種類はわからない。

■さめ

沖では、釣り上げ中の魚をサメに食われ、食い残しの頭だけ上がったりする。
あと、ちゃんと水面から背びれ出して泳いでる。
夏休みになるとテレビでジョーズやるのが嫌だった。
地元でホホジロザメの水揚げが無いから、多分大丈夫なんだろうけど。

■かすべ

エイのなかま。煮付けがたまに出た。小骨の類がなく身を集めやすいが、一度に多く口にいれるといつまでも無くならない。筋繊維が強いっぽい。大人になってから揚げたやつを食ったら、そのほうがうまい気がした。

■ふぐ

フグの卵のへしこが登場した。これで死ぬのかと思いながら食べた。うまいと言ったら、婆ちゃんが自作し始めた。それが食卓に上がったとき、これで死ぬのかと思って食べた。粒の大きさが最初のやつと違った。
大人になってから居酒屋で食べたフグの子の糠漬は能登産で、これも最初に食ったやつと同じく粒が小さかった。
自作しちゃダメっぽいことを大人になってから知った。

■そい

刺し身の中に黒いつぶつぶがいることがある。寄生虫っぽいので食わなかったが、親父は食ってた。あれはなんだろうか。

■すずき

たまに石油くさい。

■あまだい

たまにカルキくさい。

■たこ

家の裏の岸壁の拡張工事があった。

初期状態
鋼矢板の仕切りができる
隙間に土砂が流し込まれ、海底と地表がなだらかにつながる
タコが上陸する

自発的に上陸する目的や意図がわからない。

■くじら

網にかかったりする。
小学校の帰り道、クジラがとれたと聞いて市場に寄り道した。

成体2頭と仔鯨1頭。家族揃って捕えられた感があるが、実際どうなのかはわからない。仔鯨は市場の床にタオルとか敷いたとこに置かれていた。水族館から迎えが来るとか言ってた。同級生が水を掛けていたので俺も掛けに行った。鼻の穴がどんな仕組みなのか近くで見つめていたら、鼻息が臭いことがわかった。
次の日は市場で解体&入札だったようで、夕飯はクジラでホットプレート焼肉だった。あんまりおいしくないし臭かったです。

■うみがめ

網にかかったりする。


見返してみると案外少ない。
海中なり地上なりで見かけた触れた食ったものはもっとあるけれど、名前がわからないやつとか特に印象が無いやつとかのほうが多いのか、脳がダメになってるのか。