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いちばん愛した人

転んだ時、一人じゃ受け身が取れても
たぶん二人だとケガをする

お互い、相手を守ろうとして
抱き合っているから

だからあたしは、その時が来たら
君を包むこの指を離さなければいけない

痛みを受けるのはいいけど

誰かのそんな顔は、もうたくさんだ


君のくしゃっとした瞳があれば

あたしの血が流れてても
見えないように微笑み返せる


そう思わせてくれる誰かなんて

君だけが
最初で最期であって欲しい



積み重ねた記憶を

取り出して見ることはできないけれど

その記憶の
それぞれが帰る場所は
愛なのかな?

少なくとも
裸のあたしを切り取る
君の瞳は

その瞬間を感じさせてくれるんだ

瞬いて
君をまぶたの裏で隠すたび
次に開けた時に消えてしまわないかと
怖くなる


愛の強さと
怖さを、君の瞳はイヤでも教えてくれる


でも、君は優しいから
いちばん嫌なことわかってて
先に背負って、消えた

でも、でも・・・

あたしは君を探さないし、追いかけない

それは君が

君の夢を、君が前を歩くことを
決意した日だから


君の足跡は追いかけないで
あたしが残す涙の跡は

あたし達二人が
どこに居たのか教えてくれる

帰れない場所へ
いつまでも道標を
刻み続けるように


その記憶は遠吠えのように
鳴き、伝える

二人が居た空へ向かって

もう帰ることのないあの日々へ向けて

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