自転車におけるバイクフィッティングの必要性とRETUL FITについて③
私はりんりん自転車館一之江店にてフィッティング担当としてRETUL FITをおこなっている。
そこで今回はRETUL FITにフォーカスしようと思う。
現在のRETUL FITはかつてBodyGeometryFitという名のサービスだった。
2つの違いを簡単にいうと、以前までは分度器の様な器具を使いアナログで計測していたが、RETUL FITはモーションキャプチャを使いデジタルで計測する様に進化している。
かつてのBodyGeometryFitをスタートさせたのがボルダースポーツ医学センターのアンディ・プルーイット博士だ。サイクリングと生体力学に精通し、バイクフィッティングを30年以上も前から始め、この方の教えが数々のフィッティングの原点になっている。1~2年前に引退そうだが、RETULの計測器の開発も携わりスペシャライズドのシューズの開発もこの博士が担当していた。
サイクリングにおいて人体が傷まずにパワーを最大限に発揮出来る角度を生体力学的に研究し、ワールドツアーの選手から初心者まで何千人ものライダーの身体を診てデータを蓄積したそうで、さらにRETULを使って世界中から膨大なデータを集めて、新しい研究結果や論文からアップデートをし続けた。
「科学に裏付けされた本当のフィッティングを全てのサイクリストに広めたい」との思いから認定フィッター制度をとり入れた。
学校で医学を学んできたわけでもない私の様な人間にもフィッティングのノウハウが学べるようなメソッドを作ったのだ。
そしてスペシャライズドと共に世界中にフィッティングを広めてきた。
実際にライダーにフィッティングを施せるまでに修得するには時間も費用もそれなりにかかる。
骨や筋肉の名前を覚えるところから始まり、計測器具の使い方、計測時の身体の触り方、コミュニケーションの取り方、ペダリング中の問題のある動きへの対処方法、目線の使い方などを学ぶため、L1の資格を取得するだけでも丸3日間泊まり込みで講習を受け、その後トレーニングで10人のライダーを実際に本番と同じ様にフィッティングし、10人分のフィットデータを教官にチェックしてもらい、ようやくフィッターとして有料のサービスを開始することができる。通常1回のフィッティングに3時間程度かかるのだが、不慣れなトレーニング期間中は5時間かかることもある。
つまり仮に週に2人をトレーニングしても一ヶ月位上かかるし、総合計時間は40〜50時間はかかるというわけだ。
しかも私が資格を取得した時はデジタルへ移行する時期だった為、アナログとデジタルを両方学ぶ必要があり、かなり大変だった。
ここまででもまだLEVEL1の資格のみしか取得できず、ロードバイク 限定のフィッティングしかできない。
限定解除的にLEVEL2の資格が存在し、ロードTTやトライアスロンバイクのフィッティングをするためには、また3日間泊まり込み修行をしようやく取得できるのだ。
とはいえそれでもアンディ・プルーイット博士の作り出したフィッティングの全てを理解するまでには到底至らず、実践と勉強を繰り返す必要があると思う。
私はこれまでに100人以上のフィッティングをしてきたが、人間の身体はとても複雑な上に、自転車という不自然なものまで絡んでくる為、簡単ではなくもっと追求していきたいと思っている。
そしてフィッター自らが走れないのもなんとなく説得力に欠けるし、自分がフィッティングを受ける側の立場でも、走れるフィッターと共にポジションを決めたいと思うのでRETULを使い自らを実験台にし、少ない練習時間で最大の成果が出せる様にTTのポジションを煮詰めてきた。(博士も相当速かったそうだ)
そしてある程度成果を上げる事ができたのでとりあえず自分なりにはRETULの有効性を発揮できたと思っているが、残念ながらフィッティングに懐疑的なサイクリストも世の中には沢山いるのも事実。
人は理解を超えたものを信じる事を宗教と呼ぶので、バイクフィッティングを宗教と呼ぶ事もわかる。
それはそうだろう。自転車専用のフィッティングを学んだ人間はほんの一握りで、ほとんどのサイクリストはどういうポジションが正しいのかを知ることができず、感覚のみに頼るしかないからだ。
どんな身体の構造がサイクリングにおいて良くないブレを生み出し、何をすれば解決するのかをほとんどのサイクリストが知らないだろう。つまりそれでは最適なポジションを導き出す事は不可能という事だ。
次回は少しネタバレ的にその辺りを書こうと思う。
ではまた来週。
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