2020.3.21

建築家の増田大坪の作品集を読みながら、磐座みたいなテクストについて考えを広げている。磐座についてはググればでる。

まず磐座信仰の構成要素は磐座・社・場・人の4つ。まずいい感じの森とかそういう場に磐座(15mくらいあるめちゃでかくてかっこいい岩)があり、森のなかにそこだけ陽が入って、いつでも岩の上で原生林が生え変わり、荘厳だったりして、つまり雰囲気が最高にいいので人が集う。自然からの贈り物があって、それから必要に応じて社が建てられたという順序となる。社は人の拠り所として岩の近くに添えられた。

増田大坪は「磐座のような建築」を制作のテーゼに掲げている。

日本にはどこでも空き家が多く、建物はすぐに量産され、必要十分にある。一方で、いまある場の雰囲気がいいかというとそうでもない。その余りはじめた建物になにをすればいいのか。という視点から生まれる新しい問題とふたりは格闘している。隙間で闘っているように見える。

というのも、どのプロジェクトも何かと何かの界面に設計の力が注がれる。具体的には湿気や採光や動線の問題を解決する手立てとして、建築の構成要素のつながりを刷新するアイデアが界面に挿入されている。①建物と②敷地③周辺環境と④人の間に横たわる現状ではよろしくない関係を見つけることに始まり、それを正す。一体的な場としてうまく回るように。ふたりは新しい建築を社ではなく、バラバラなものをつなぎなおす磐座として、しかし設計を通じて人工的に試みている。

磐座のことをバラバラなテクストを連続した物語に変容させるものと変えて見れば、小説で言えば異質なカットアップをつなげる挿話ということになる。少しちがって、類推でつなぐことかもしれない。

『類推とは
AというのはCです。
ところで、Bするとします。これもCです。
このようにAはBと関係がある。
というようにして、Aに馴染みがない場合にBから推論してAの理解を助ける比喩表現らしい』

例をだしてみる。

①「岩山から結晶を掘って探し出す話(山で宝石を見つける)」

②「ヒップホップのループ探しの話(頭の中で宝石を見つける)」

③「結晶構造の科学的な話(規則的な反復)」

④「”C U When U Get There”の古いカノン進行の音楽話(規則的な反復)」

という具体的に書けそうなエピソードを並べてみた。このままではバラバラな4つの話であるが、それぞれにカッコ書きされたキーワードのように抽象的な言葉をつかって類推してみる。ここから共通点はいくつか見つかりそうである。そうすると、単語の意味が重層化して響き合い、エピソード同士がどこか遠いところでつながりを得て、モチーフが全体をつらぬき、なにかを達成する/しえない物語として新しくひとつに並び替わって連なりそうな雰囲気がないだろうか。この場合の磐座は岩ではなく宝石である。






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