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サウナ随想(12/11)“駅前のオアシス”タイセイアネックス編


午後2時、ただ歩いているだけで鼓動がバクバクしている。
何もしていないのに、身体が火照る。2時間しか寝れていない。

泊まり勤務が疲れる歳になってきた。
泊まり勤務とはいわゆる宿直で、夕方から翌日の昼過ぎまで会社に泊まり込みで働く当番勤務。自分の場合は2か月に1回くらい回ってくる。
毎日、会社の人とはやりとりをするが、島の”特派員”はひとりなので、基本全て電話かメール。だから会社に行って上司や先輩と会うと、”久しぶりに実家に帰ったとき親に感じるなんとも言えない恥ずかしさ”に似た感情になる。

島を離れて鹿児島に向かうそんな泊まり勤務、ちょっとした出張なのだが、楽しみがある。ひとつは鹿児島のうまいものを食べること。前の晩は出前のカツカレーを食べた。

そしてもう一つが、サウナだ。

午後2時前、会社を出る。
大学生の頃は、徹夜をしても1、2時間寝れば十分回復できたが、だんだんと寝ないと辛い身体になってきた。「老化」ではなく「人間のあるべき姿に戻ってきた」のだと思うことにしよう。
車が通るたびに、グレーの粉が舞い上がる。火山灰。
前の日は、桜島が噴煙を吹きまくった。火山灰はコンタクトアイを破壊する。早く、汗と灰と疲れを温泉とサウナで洗い流したい。

鹿児島には灰専用のゴミ袋があるし、天気予報には「桜島上空の風向き」というコーナーがある。噴火したあと、灰がどっちに流れるかで、洗濯物を外に干せるか決まるからだ。灰は厄介な存在だが、鹿児島市の中心部を迎え撃つようにそびえる桜島を見ると、いつも元気をもらえる。

そうこうしているうちに、着いた。
新幹線、各種特急、バスターミナルなどがある鹿児島中央駅から徒歩3分、”駅前のオアシス”を勝手に呼んでいるサウナ、


ホテルタイセイアネックス。

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階段を降りていき、3時間コースの1000円を払う。
410円の公衆温泉にサウナが付いているのが当たり前の鹿児島では、決して安くない価格だが、いつも賑わっている。

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ここは天然温泉ではなく、光明石を使った人工温泉だが、広々とした浴室と開放感の溢れるサウナ室が特徴だ。

身体を洗い温泉につかる。ブハア、脳みそが30%くらい溶けてしまう。
でもだめだ、サウナに入らないと。

サウナ室は広々としていて、入り口には丁寧に「温度表」が書いてある。
入り口付近・下段 78℃。奥の上段 86℃ といった具合に。
一番奥の上段に行ってみる。フィンランドを経験したからか、あまり暑く感じない。日本のサウナは湿度の低いドライタイプ。
だんだんと、芯から温まってくる感じがして、これはこれで気持ちよくて好きだ。炙るか茹でるかの違いだろう。

私も気づかなかったのだが、電気ストーブの熱と、薪ストーブの熱では、温度が同じでも、部屋の温まり方というか、熱の感じ方が違う。電気は、波状に熱が伝わってくる感じで、ビームを浴びているような感じがする。一方薪ストーブは、空間全体に熱が充満して包み込むような感じがする。
同じ90℃前後の室内でも、フィンランドのそれと感じ方は違う。タバコの火は、100円ライター、マッチ、ジッポ、火のつけ方で味が変わるというが、サウナもそうなのだろうか。

水風呂に入る。この日の水温は17℃弱。何分か入ってられる、ちょうどいい温度。毛穴に詰まった汗と灰が温泉とサウナで流され、開いた毛穴を水風呂で引き締める。至高だ。

「身体を流してから入ってください」「水道は開けた人が閉めてください」「サウナには健康効果が認められています。一、・・・・・・」。
するな、するな、こうしろ、日本のサウナは情報量が多い。だが、言い換えれば、清潔で、秩序がある。

そして、基本的に浴場に併設されているので、日本のサウナは常に「水の音」がしている。
ディズニーランドでは、世界観が変わるエリアとエリアの境界には滝のスポットを作り、それぞれの音楽が混じらないようにしていると聞いたことがある。客はバッファゾーンで水の音を聞きながら移動することで、ごく自然に異世界を行き来できる。水の音は、人間が最も落ち着くホワイトノイズなのだろう。

水の音を聞きながらととのいスペースでぼーっとしていると、意志に逆らってまぶたの重みが増してくる。だめだ、バスに乗り遅れてしまう。
静寂に包まれたフィンランドのサウナもよかったが、やっぱり日本のサウナは落ち着くな。遠くても、疲れても、泊まり勤務はこれがあるから悪くない。
重い腰を持ち上げて、浴室を出た。




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