伊藤紺

あなたの秘密買い取ります。 物語に採用された方には原案料として500円お支払い。ひとり…

伊藤紺

あなたの秘密買い取ります。 物語に採用された方には原案料として500円お支払い。ひとりで抱え込んだら悩み事、人に話せば笑い話。投稿すればストレス発散しながらお金になり、読めば人の日記を覗き見するような背徳感を味わえます。https://yourfiction.jp/secret/

最近の記事

トムとジェリー

小学3年のアイツが 三ツ池でネッシーを見たってうそを言うから 俺は本当に三ツ池に潜って気まぐれに訪れたアイツを驚かせた。 小六のアイツは 運動の後いい匂いの制汗剤をつけるようになったから 俺は借りるふりをして、その中にカメムシの汁を混ぜ込んだ。 中学一年のアイツは 放送部に入るって言うから 俺も放送部に入ってちょっと前にスイッチを入れアイツが放送前に必ずするデタラメな早口言葉を全校に流してやった。 高校二年のアイツが 文系と理系どっちにしたらいいかわかんねーって言うから

    • 架空の犬 ジャミ

      僕たちは犬を飼い始めた。 飼い始めたといっても実際は飼っておらず、空想上でだ。 彼女が 「架空の犬を飼おう。名前はジャミ」 そう言ってから、姿形はないが確かにこの家にジャミが存在するようになった。 彼女によると ジャミはイタリアングレートハウンドの3才、メスだ。いたずらっ子で手がかかるらしい。 木曜の夜、彼女の服がタンスから半分飛び出している。 「ほら、また服散らかしてる」 と呆れ顔で僕が言う。 「もう、ジャミ。なんでこんなに散らかしたの」 と彼女はジャミを叱りつける。

      • ほっといてよって言えたらいいのに

        「もっとちゃんとした方がいいよ」 居酒屋で学生時代から仲のいいマナミが般若の形相で私の肩を掴み、揺さぶる。 私は白目をむきそうになるのをなんとか堪えるも、その言葉は2ちゃんねるの野次のように私の頭をすり抜ける。 マナミには私が考えなしのチャランポランに見えるらしい。 マナミとは学生時代からの友達で30になった今もときどき会っている。 マナミは有名大学に進んだのちに大手企業に就職し、私はというと、同じ大学に進んだものの就職せず売れない舞台役者をやっている。 「ドロップ

        • 睡眠薬より隣で寝息が聞こえた方が よく眠れる

          同棲を始めた当初 寝る前に必ず錠剤を飲む私を彼は不思議そうに見ていた。そんな視線に気づいて私は言う。 「背を伸ばすサプリなの」 「え?今さら伸びないでしょ」 「絶対伸びるもん」 「さっさとあきらめろ。21にもなって往生際が悪いやつだな」 「そんなことばっかり言ってると、背抜いちゃうよ」 「抜けるもんなら抜いてみろ〜」 「あー、また、バカにしたー!」 こんなくだらないやりとりでうやむやにして。 背を伸ばすサプリと嘘をついたその錠剤は 睡眠薬だった。 実は数年

        トムとジェリー

          おばあちゃんが死んだ。私はちょっとほっとした。

          おばあちゃんが死んだ。 不謹慎だけど、私なんかほっとしたの。 ほっとしちゃったのよ。 おばあちゃんのこと、大好きだった。 孫だっていうだけでそんなに可愛く見えるのかってくらい可愛がってくれたし、優しくしてくれた。 小さい頃からおばあちゃんの家にはしょっちゅう行った。おばあちゃん家に行くときは、必ず私の好きな焼き芋を作ってくれた。 銀紙をバリバリ向いて、おばあちゃんは丁寧に皮を剥いてくれた。 「あっつ、あっつ」と言いながら口いっぱい頬張るのが大好きだった。 私は18で上京

          おばあちゃんが死んだ。私はちょっとほっとした。