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価格競争に陥る卵子凍結

東京都では、最近助成金が始まることもあり、にわかに盛り上がりを見せる卵子凍結。

クリニック内のコラムでも簡単に助成金についてまとめて書いていますので、参考までに確認いただければと思います。

価格競争が激化してきた

一言でいうと、まさにこれです。価格競争が激化してきました。

特に競争の激しい東京などでは、30万円代で卵子凍結を行うことができる施設も増加しています。

価格を下げる事自体は、医療機関の努力あってのことなので、これ自体に問題はありません。

誤解を恐れずに言えば、卵子凍結において、最もかかるコストは人件費でしょう。
なので、利益の比率はもともととても高いのです。
価格を下げることで人が集まり、卵子凍結自体の件数が増えれば、単価を下げても、売上は伸びますので、むしろWin-Winということだと思います。

憂うべきは、価格競争を全面に押し出すのみで、いっこうに成績の開示が進んでいないことだと思います。

卵子凍結の成績

卵子凍結を◯件しました。

という開示がいくらあったところで、本当に安全に凍結ができているのかどうかは融解してみないとわかりません。

新鮮な卵子に比べて、凍結融解卵子の方が受精率等が下がるの報告としてありますが、どの程度なのかも、その施設の技術レベルによって異なるでしょう。

その後の胚発育に関しても同様です。

仮に、現在でいうタイムラプスモニタリングシステムを導入した培養器がない場合、培養成績は下がる可能性もあります。

卵子凍結は、女性の選択肢を広げる重要な手段であることに疑いはありませんが、卵子凍結がゴールではないのです。

医療的に見ると、むしろ序盤。
そこからの歩留まりというか成績が非常に重要です。

本当に価格だけで選んでいいのか

今は卵子凍結、と検索すれば山のように広告出稿したクリニックも出てきます。

価格が安いから、通いやすいから。

こうした理由でクリニックを選ぶのもありだと思います。

ですが、卵子凍結は自分の人生の選択肢を決める、重要な医療行為です。
それをこうした価格や利便性だけで決めるものでしょうか。

僕は兄を失ったこともあり、自分自身の健康管理にはとても慎重です。
40歳になったこともあり、知り合いのドクターに聞いた病院で人間ドックを受けに遠方までいったり、大腸や胃の内視鏡検査もめちゃくちゃ予約の取れない名医を探していきました。その度有給を使います。

日常的に、風邪を引いた、というようなものであれば、そうした利便性のチョイスで良いと思います。

理想的に言えば、卵子凍結は一度きりの実施で十分です。
(助成金も一回分しか出ません)

その一回のために、仕事を数日調整したりすることが、本当にできないものでしょうか。

選ぶ側のアップデートもまた必要になってきます。

正しい情報提供をしようと、自治体や学会も必死ですが、
肝心要のこの成績を開示しません。

ただ施設認定、というような範囲では、患者さんは結局納得の行く判断材料を集めることができません。

永遠の課題なのだと思いますが、自分自身の健康を決める力、を高めていきたいものですね。
微力ながら発信していきます。


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