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倫理観は胸を満たすもの

先日、ヨーロッパ生殖医学会の文献を見ていて感じたことですが、

「あぁ、日本は恵まれているな」
「倫理観を養うことは大切だな」

と思った瞬間がありました。

それは何かというと、ウクライナ問題についてです。

政治的な知識は対して持ち合わせておらず、この問題の深淵に迫るような話は僕は1ミリもできないんですが、日本が置かれた環境の良さというのは改めて感じます。

受精卵や卵子、精子、卵巣組織が生殖補助医療施設で凍結されています。
今ヨーロッパの各施設、特に東ヨーロッパやそもそもウクライナについては、緊張感MAXなわけです。

戦争が始まってしまえば、保存物の管理なんてできるわけがないです。

実際にウクライナでは、法的手続きを経て、欧州各国に向けて輸送された凍結検体は、
凍結胚が70,000個以上
凍結卵子が10,000個以上
何千もの精巣組織
何百もの卵巣組織

がある、と言います。

また、ロシアによる攻撃が始まった2月24日、命の危険を顧みず、胚培養士は培養中の胚と配偶子の凍結を試み、生殖医療専門医は治療中であったすべての患者に採卵と胚移植を施行し、その他の医療従事者も協力を惜しまなかったと言います。

日本は島国であることもあり、戦争の地政学的なリスクは、欧州に比べて小さくはあります。この点が恵まれているなと感じたポイントです。
もちろん、この先どうなるかは私の予想できるものではありません。

ただ、称賛したいポイントとしては、戦争が開始されたときの医療関係者たちの倫理的な判断とその行動です。

不妊治療や特に卵子凍結などにおいては、色々な業者、業界の参入が目立ちます。
競争原理にさらされる事自体に反対はありませんが、この倫理観を医療者は持ち合わせていなければいけないと思います。

資格もない人に凍結をさせている施設もあるとか、ないとか。
そのような悲しい話も聞きますが、日本は戦争こそ起こらないかもしれませんが、世界有数の災害大国です。
緊急事態がいつ起こるかわからないことを前提におき、日々倫理観を養う必要があるんだろうと思います。

倫理観が高くても低くても、患者さんが払う費用は同じかもしれないし、
倫理観と給与は変動しないと思います。

僕が所属するクリニックでは、東日本大震災を経験したスタッフが大勢います。その時の経験値と自分たちがとった行動に対して、強い誇りを感じることがたくさんあります。

倫理観は腹は満たさないけれど、心は満たすもの。
なんてうまいことを言ってみて、今日のnoteを締めくくります。

ウクライナ・ロシアの方々に1日でも早く平穏が訪れることを願います。

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