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精巣腫瘍患者さんの妊孕性温存について

15歳から39歳のAYA(Adolescent Young Adult)世代といわれる方々の精巣腫瘍の治療を行う中で、

性機能の障害
精路閉塞
精巣喪失
造成機能障害

といったものが考えられます。

現時点で最も確かな手段としては、造精機能障害をきたすがん治療を行う前に精子凍結を行うことです。

男性は女性と異なり、月経周期等に合わせる必要がなく、いつでも精子を凍結することが可能であるため、がん治療を始める前に多くの場合で、精子凍結が可能です。

また、精子凍結をしようと試みたものの、無精子症であることがその時わかるような場合もあります。実は精巣腫瘍患者さんではこのケースが思いの外多くあります。

そうした場合には、精巣内精子回収法という手術によって精巣から精子を回収します。

閉塞性無精子症
精巣の中では精子はつくられているものの、精子の通り道がふさがっていて精子が精液内に出てこないという症状を閉塞性無精子症と言います。
精巣の中では作られているわけですから、精子回収はほぼ確実にできると考えられていて、実際100%に近い確率で精子の回収がなされています。

非閉塞性無精子症
精巣での精子形成がそもそもうまくいっていない状況を非閉塞性無精子症というのですが、この場合、閉塞性と比較して回収できる確率は低くなり、40-50%前後での回収率となります。

さらに、精巣がんに対しての精巣温存手術も行うことができますが、がん治療ができ、かつこうした手技を持つドクターや施設は非常にまれなのが実情ではないかと思います。

また、日本がん治療学会のガイドラインには、

視床下部-下垂体-精巣系をブロックするためのGnRH投与については、有効性が確かめられていないため、推奨できないとされています。

男性の妊孕性温存の難しさの原因

泌尿器科のドクターであり、かつ生殖医療専門医を持つドクターは、日本全国でもおおよそ50名しかおりません。

そのため、そもそも妊孕性温存でなく、一般的な無精子症や乏精子症の方が治療できる施設でさえ、非常に限られてきます。

凍結したその後の治療の選択肢も、女性の治療ができる医療機関であるかどうか、そのクォリティはどれほどかということによって、選択肢も異なるものと思います。
ただし、そこまでの情報を患者さんが、事前に整理して理解するのは現実的に不可能です。

短い時間の中で、がん治療の側面と、妊孕性温存の治療の面に対しての心情報提供と心理的なケアも行わなければなりません。

がん治療、生殖医療、泌尿器科すべてが密に連携することが求められるのはこのためです。

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