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化学療法中にGnRha投与して妊孕性を保護する

日本では、エビデンスがないとして、化学療法中にGnRH agonistを投与して卵巣機能を保護することは推奨されていませんが、欧州では積極的に行われている印象があります。

妊孕性温存というよりは、妊孕性保護って感じだと思いますので、論文内でも妊孕性温存はFeritility Preservationといわれ、妊孕性保護はFertility Protectionとか、言われることもありますね。

現在の日本のガイドラインも今年改訂される見込みですので、今後の妊孕性温存治療のあり方は変わってくるかもしれないですね。

今回はHumanReproductionの論文を紹介します。

Human Reproduction 2023.

今回は米国の研究のようです。

乳癌の治療においては、多くの場合化学療法は選択されませんが、TripleNegativeタイプやHER2タイプの乳癌の方には、化学療法が用いられます。

乳癌以外の癌でもそうですが、早期に治療し、再発を防ぐ、というのががん治療のベースにありますから、医療者の視点からは当然のことでしょう。

そして、乳癌治療で使用される化学療法の組み合わせの中には、卵巣毒性が高いもの、つまり、使用することで卵巣機能が大幅に低下したり、最悪のケースとしては閉経に至る薬剤が含まれます。

そのため、化学療法中にその毒性を緩和させることを目的として、GnRhaというものが使用されています。

繰り返しになりますが、日本ではエビデンスが不足しているとして、当治療法を「推奨しない」ことが明記されています。

さて、そんな背景がある中での今回の研究ですが、要約すると、
化学療法単独でその後妊娠するための治療をする方と
化学療法にGnRhaを併用して、その後妊娠するための治療をする方を比較した時に、後者の方が費用対効果が高い可能性がある、ことがわかったとしています。

当然、これは前向き研究ではないので、これをもってエビデンスということにはなりませんが、一つの示唆にはなるのではないでしょうか。

別に紹介もしていきたいと思いますが、POSITIVE TRIALの結果も出てきて、若年乳癌のホルモン療法の期間を見直す可能性もありますから、若年乳癌患者さんの妊孕性温存を取り巻く環境は今後一気に変わる可能性も出てきます。

目的は妊孕性温存を行うことではなく、現在のリスクを正確に理解し、将来の妊娠に向けて、その人らしい決断をすることなので、情報提供もアップデートしていきたいなと思います。

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