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医療者じゃないから何なんだ

僕は現在、生殖医療相談士という資格と認定がん・生殖医療ナビゲーターという資格を持って活動をしています。

認定がん・生殖医療ナビゲーターは医療者が取得する資格ですから、
僕は医療者や医療従事者というくくりになるのでしょう。

医療の領域にはじめて飛び込んだのは2016年。

正直にいって、その専門性に対する領域意識というか、
医療者と非医療者の線引にとても驚いた記憶が鮮明にあります。

医療のことは医療者が行うべきもので、非医療者は口を出してはいけない。
どういう暗黙の了解なのか不文律を肌で感じとり、それ以来一切表に出ることをせずにサポートに徹してきました。

生殖医療の領域には、授かれない方にも赤ちゃんを、という感動のヒストリーがあり、僕自身も非常にやりがいを感じていましたので、毎日論文を読んではコラムを書き、そんな日々を過ごしていました。

特に、がん治療の副作用により妊娠する力が失われたり、低下したりするという衝撃の事実を知ってからは、この「妊孕性温存」の領域にも力を入れ、毎日のように勉強と発信を続けてきました。

それでも僕は非医療者です。なので、それ以上のことをしませんでした。

転機が訪れたのは2018年。
人生の恩人である、黒田朋子さんという方との出会いです。
この方は白血病のサバイバーで、情報発信や啓蒙活動など様々な活動をされていました。私も市民公開講座の企画にパネリストとして彼女を招かせていただいて、ご一緒しました。
「産むために本当に必要な情報を届けたい」
という本気の情熱に気圧され、圧倒された記憶が今でも残っています。

彼女が治療を受けた時には、白血病の治療の副作用に「不妊」の文字はありませんでした。

それでも死にものぐるいで自分で情報を探し、卵子凍結という選択肢を手繰り寄せ、実施していました。

ご自身の体調が回復されてからは、様々な活動を通じて、同じ病気にかかった方々を積極的にサポートし、様々な選択肢を提供していました。

その方が、僕に向かって、

「なんのために、そんなに毎日勉強しているの。
なんのために発信をしているの。私が治療で悩んでいたあの時に、あなたみたいな人がいてくれたら人生の選択が変わったかもしれない。
絶対に患者さんはあなたを待っていると思います」

とおっしゃいました。
それでも僕は医療者じゃないから・・・と言いました。

「本当に困っている時、医療者か医療者じゃないか。
白衣着てるか着ていないかなんて気にするわけがないじゃない。
医者だっていい加減な人もいる。それはチャレンジしない言い訳だよ」

と見事に論破されました。
ぐうの音も出ず、自然と一歩を踏み出すことができました。

その後、職場に僕を情報提供者として使ってほしいと直訴し、
それ以来4年以上、専門的にこの情報提供ということを続けています。

果たして僕は今医療者なのか、そうでないのか。
医療者でもないくせにと批判する医師もいるから、医療者じゃないのかな。
正直なところそれはどうでもいい。

本当にありがとう。と誰かに言ってもらえることのほうがはるかに重要。
先入観にとらわれていても、あとの人生でなんの足しにもなりはしない。
自分がしたいことに全力で向き合うことができれば、僕にとっての黒田さん、今の医療機関のボスのように必ずわかってくれる人が現れると身をもって知ることができました。

医療者じゃない、だから何だ。
もちろん医療を語る上で、医学を知らなければ何も語ることはできないと思っています。
だから僕は誰よりも目の前の患者さんのことを真剣に考えて、医療情報を本気で探す一般人ってことになるんだろう。

#一歩踏みだした先に

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