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男性への情報提供時に伝えること

男性の妊孕性温存では、精子凍結が方法として選択されることが多いです。
精子凍結の有効性については、以下で紹介しているので、確認していただけると嬉しいです。

この治療法自体は身体への侵襲もなく、患者さんも時間がない状況で来られるために、即実施されることがこれまで多くありました。
もちろん、患者さんの希望が最大限尊重されるべきですが、意思決定時には、必ず伝えようと心がけていることがあります。

利用率が高くない

精子凍結に課題があるとすれば、その筆頭は利用率の低さではないかと考えます。一番の理由は、未だに凍結保存を継続している方が多いということですが、元病悪化、パートナーが見つからないといった理由もあります。
ただこれはネガティブなものばかりではなく、精液所見が回復したという例も多く見られますので、その点も合わせて伝えないといけないかと思います。

妊娠率は高い

利用時の妊娠率は高い、というのが事実ではありますが、注意書きがいくつも必要です。

妊娠のための治療の方法による

人工授精と体外受精、この違いを明確に答えられる妊孕性温存希望の男性にあうことはほとんどありません。むしろ人工授精という言葉で想像するのは体外受精、という状況がほぼほぼです。
そのため、方法の違いを説明する必要がありますし、その妊娠率の違いも明確に伝える必要があります、日本産科婦人科学会でもデータを出していますが、凍結精子を用いた人工授精の治療あたりの妊娠率はおよそ3-4%程度であり、体外受精の場合はおよそ20-40%程度になります。

一回の射出精液で人工授精の場合には1回使用します。
体外受精の場合には何回にもわけて使えます。

ただ、体外受精を行うということは、女性の側の治療負担が発生することは間違いありませんので、その理解はしておいていただく必要があります。

もし、精子凍結を希望される方が既婚者であるならなおさらです。

女性の年齢や不妊原因は

これはあくまでサブタイトル的な要素ですが、対象の方が既婚の方で挙児を希望されている場合、重要なのは女性側の情報になります。
時間がない状況のため、必ずしも情報提供時にすべてを把握したり、クリアしたりする必要は一切ありません。

ただし、女性の年齢や不妊原因等によっては、温存したあとの妊娠できる確率は上記の通りではなくなってきますし、そもそもいつから始めれば良いのかも全く変わってくるものです。

そのため、状況によっては女性側にも時間を取ってもらって、無料での情報提供を実施しています。

妊孕性温存の目的は凍結することだけでは果たされず、本来は妊娠・出産までを視野に入れています。
状況や患者さんの心境に柔軟に対応しながら、患者さんによってはより具体的な話が必要となるため、やはりまだまだAIやマニュアル化の難しい領域であるとつくづく感じます。


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