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日本酒はなんで辛口がうまいと思うんですか?その1

。日本酒を中心に扱うお店をやっているのですが、何故だ?何故そうなるんだ?という事が多いので、多くの方が日本酒はこういうもんだと思っている誤解をちょっとずつ説明して行こうと思います。

お題の通り、お店に酒を買いに来ると、その9割の方が「辛口の酒頂戴」とおっしゃいますが、僕はこの言葉を聞くとげんなりする。大体辛口がうまいと言う人に限って、そもそも辛口の酒・甘口の酒の定義すらご存知ない。ならなんで辛口が美味しいと思い込んでいるのだと調べてみると、

このCM。あまりにうまそうに見えるということで放送禁止になったと言われています。他にもホタテがパカッと開くバージョンとか、いくつかパターンはありましたが、いずれも酒がうまそうに見えすぎる。このCMのコピーが、うまいものを見るとキクマサが欲しくなる。辛口のキクマサを飲むとうまいものが食べたくなる。うまいものを見るとキクマサが欲しくなる。辛口のキクマサを飲むとまた、うまいものが欲しくなる。なんですね。

このCMが与えた辛口信仰は結構スゴイと思う。辛口が何だかよくわからなくても、なんか日本酒って辛口がうまいんだと思ってしまいますからね。はっきり言っておきますが

日本酒はすべて甘口なのだ!

分かりやすい例を挙げると、あなたは辛口のチョコレートというものを見た事や食べた事がありますか?あるとおっしゃるかも知れませんが、まぁないでしょう。そう。ビターチョコレートはありますが、辛口のチョコレートがないのは、砂糖を加える量を極力控えてカカオの苦みを活かす。糖分控えめなのがビターチョコレート。同じように糖質が少ないお酒が辛口であって、辛い!っという刺激を覚えるような、豆板醤やカレーやトウガラシのような辛さを感じる酒に出会った事はないでしょう。私はありません。

そう。糖分が少ない酒こそが辛口の酒なのです。甘さ控えめなだけなんです。じゃあ甘口辛口はどうやって決まるんだと言うと、その造り方で決まります。日本酒の造り方をザックリ説明しますと、酒米を精米して蒸して、麹カビを生やして米麹を作ります。米麹が出来たら水と酵母を加えます。すると、麹カビも生きてますので、食べるし出します。米を食べて、出すのが糖分なんです。で、その糖分を酵母菌が食べて、アルコールを出します。この二つの働きによって酒ができるんです。で、米をやらねば麹が死んでしまうし、量をより多く作るためには、また蒸した米を足します。水も足してあげます。それを3回くらいやるわけです。

で、そこそこの量になったら、米をやらなくなったとしますね。すると、そのうち麹は食べるものがないので死んでしまいます。麹が死ぬと言う事は糖分の供給も止まりますから、いずれ酵母も死んでしまいます。すると出来あがった酒はどういう酒になっているかというと、糖分が全然ない、いわゆるめちゃくちゃ辛口の酒になるわけです。ホントに極端にここまでやる事はないにせよ、辛口の酒ができるメカニズムはお分かり頂けたと思います。甘みはうまみなので、ホントに糖分がゼロのお酒はほぼ味がないと思います。

で、甘みを幾分でも残して酒の味を決めるんです。つまり甘口の糖分控えめこそが辛口なのです。甘い味で酒にするなら糖分がたくさん残ってる時点で絞ってしまえばいいと言う事になりますね。酒の甘辛の理屈。お分かり頂けましたか?

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