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病院に行く途中に小さい森がある。舗装された道から一歩踏み入れると、鬱蒼と茂った異様に背の高い木々と鳥や虫の鳴き声がする。森の少し湿った澄んだ空気。獣道を歩いていると自分の背が小さくなって子どもの頃に戻った気になってしまう。奥深く踏み入るとちょっと怖いようなワクワクするような冒険を夢見る気分になる。
土の上で落ち葉を踏みしめる感触も忘れていたことにふと気づいたりした。森の中をすっかり子供に戻って歩いていると心が軽くなっていく。外見はだいぶ老け込んできたが心は自由だなぁと思う。心はちょっとしたことで簡単に子どもにだって戻れるんだ。どんぐりがやたらに落ちていてトトロを連想した。映画やアニメを作るクリエイターはきっといつでも子どもの心に戻れる引き出しを持っているのだろうな。塗装された道に出る手前で、服に付いた草の切れ端や蜘蛛の糸などをキレイに叩いた。そして心の中でお邪魔しました。と一礼して、大人の毎日にいつもの日常に戻って行った。こんな素敵な小さな幸せがあるだけでもう少しこの世界に生きていたいなぁと小さく思った。

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