先日妻の友人のご夫妻と食事をした。旦那さんが妻と同じ歳で僕の5歳下。友人は更に3歳離れている。結婚はちょうど丸2年を迎えるということだった。共働きで、子どもなし、は我々と同じ。
東南アジアで生活をしていた頃は頻繁に会っていたものの、お互い帰国して10年以上経ち、今回その友人とは僕は6,7年ぶり、妻も旦那さんとは初対面というシチュエーションだった。
夫婦完結型の我々にとって、他のご夫妻と約束を取って対面で食事をすることは20年の結婚生活で初めてと言って良いくらいの経験であり、特に東南アジアで脱俗的20代を過ごした我々3人とは異なり、「真っ当な」社会人生活を送り、一流企業に勤める旦那さんが交わるとなると、年下相手に、と恥入りつつも、挨拶、手土産、オーダーの仕方、会計等々をご夫妻に会う前に夫婦でシミュレートしておいた。
最大の難所は会計で、年長である我々が払うべきか迷ったが、結婚祝いも送ってあり、当日は銀座の市川バラ園で仕立ててもらった花束を手土産として持っていくため、今回は割り勘が妥当、として臨むことにした。
場所は八丁堀の元ハンコ屋というワインバーで、会計は約3万だった。
バインダーに1万5千円の現金を入れ、相手夫婦に渡した。シミュレーションでは相手夫婦どちらかが残り半分を加え、一瞬で終わるはずだったが、夫婦間でコソコソと話が始まった。
割り勘にすることに多少引け目があったので、思いがけず求められた会計に戸惑ってしまったのかと、過敏に考えてしまったが、どうやらそんな話ではなく、夫婦間の支払いの問題であったようだ。
以前に父が漏らしていたが、私の7歳上の兄夫婦と食事に行っても食後必ずそれがあるから誘われても気が乗らないという話をしていた。ちなみに彼らも今年結婚20年。
結婚後も財布が別となると、今後数十年共にするであろう夫婦のアクティビティにも一回々々コンセンサスを取ってゆくのであろうか。相手を理解したつもりで費用分担の話を省いたら、貰うべき金額が相手から払われず、「セコい」とか「ズルい」といった要らぬ印象をパートナーに抱いてしまうことにならないのであろうか。
相手の懐が見えない限り、経験をお金で買うような話は出し難く、日常のあらゆる場面が、このワインバーのような、無理をせず手が届く「それなりの」満足を縦に重ねてゆくような生活がいつまでも続いてゆくような気がする。そして手が届くものだから頻度の自制が利かず、老後を迎える前に蓋を開けたら貯蓄が意外に少なかった、なんて話を好き勝手に想像してしまった。
が、実際、当たらずといえども遠からず、といったところではないだろうか。




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