季節柄、都内の公園で子供の背丈ほどの望遠レンズをセットし、野鳥を撮影しているシニアをよく見かけるようになった。
老後の趣味に相当額を投じることのできる経済力を羨む一方で、この人は鳥を撮影することに純然たる喜びを感じているのだろうかと訝しむ気持ちもなくはない。
写真とはもっとも安易に表現者・鑑賞者の立場が入れ替われる表現手段である。人生において際立った表現手段を他に持つことができなかった人間にとっては打って付けな趣味となり得るのであろう。
カメラ機能の進化に身を任せればそれなりの「作品」に導いてくれることから、特に男性はカメラ性能のアップグレードに金を注ぎ込んでいる印象が強い。じわじわ重量を増してゆく機材を毎回抱えながら、撮影が趣味であると率直に言えていた時期は過ぎ、もはや投資資金を回収するための意地が撮影のモチベーションとなっていたとしても、それはそれで外野の僕にとっては自身の老後について考えさせられる良い教材となっている。

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