学校へのやまみちでの話
あさ、いつものように家を出て、小学校に向かいます。
学校までは1じかん半。学校ちかくの集落でともだちに会うまでは、ずっとひとりで歩きます。たまに仕事に向かうおいやんやおばやんを見かけるとほっとします。
けさも川沿いのやまみちをひとりで歩いていました。
と、深く伸びた草むらの中からがさがさっという音がして、何かがこっちに向かってきます。なんやろうなあ、この大きさはうさぎかなあ?いのししやったらちょっとこわいなあ、と思いながら立ち止まって見ていると、
いっぴきのたぬきが走り出てきました。
たぬきかー。ああ、よかった。
と思いながらしばらく歩いていくと、またもや何かが草むらで動いている音がします。さっきより大きいもので、さっきよりもゆっくりした動きです。ひとかなあ?きのこでも取りに入ったんかなあ、まだ朝はやいのに…と思って見ていると、
草むらからよろよろと出てきたのは、お母さんよりもちょっと上の、おんなの人でした。
着物はぼろぼろになっています。手や足にはすりむいたような跡もいっぱいあります。顔は、なみだでぐしゃぐしゃになっています。
おんなの人は道に倒れ込むように座り込んで、はあはあと荒い息をつきながら言いました。
あれー、やっと道にでたよう。もう朝になってしもたんか。えらいめにおうた。
近づいてみたら、そのひとはいいました。
ゆうべからおんなじとこなんべんもぐるぐるぐるぐる歩かされて、ちっとしってるとこへ出そうなもんやのに、いっこもわからんね。おとろしいし、なっとどせなあかんとおもいもてひとばんずっとあるいててんで。
たぬきにばかされたんやわあ。
いままで見たこともないほどぼろぼろのかっこうになったおんなの人を見て、こわくなって、そこからはなれて走りだしました。後ろをふりかえりたいきもちをがまんして、走って走って、いつものかどっこをまがったら、いつものようにともだちが待ってくれていました。
なっといたん、かおいろわるいで、というので、たぬきにばかされたひとを見た話をすると、「えええ?そんなことあるかー?きょうちゃんがそのおんなの人にばかされたんちゃうか~?」と、わらわれました。
せやったんかなあーと、さっきのことなのに自分でもしんじられなくなって、いっしょにわらってしまいました。そしていつものように手をつないで、学校へ向かって歩きはじめました。
たぬきが、木のかげからふたりをのぞいているのも知らずに。
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こないだ実家に里帰りしたときに、母から聞いた話です。基本、実話です。本人が言うのだからそうなんでしょう。笑。
母の実家は和歌山県の山奥の、車でずっと進んでいったら「こんなところに住んでる人いるんだ~」と、二回くらい思ったさらに先にある集落です。
そしてもっと驚くことに、なんと、グーグルのストリートビューがあります。2014年2月の画像で見ることができます。
たぬきに化かされる話よりもこっちの方が衝撃的な、今回の帰省でした…。
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というのが、今回、300ノートめの投稿です。
途中投稿を削除したりもしているのであんまり意味のない数字ですが、まあ記念ということで。
こちらの実話怪談(?)シリーズとともにお楽しみください。
「白蛇のおはなし」(写真のみ、有料です)
「忘れられない光景の話」
一応投げ銭設定にしておきます。(有料部分には何もありません)
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