忘れられない光景の話

昔、おばあちゃんが片方義眼を入れていました。

最近の義眼がどういう仕組みなのかはわかりませんが、当時は本当にまん丸のビー玉みたいなガラス球に眼球の絵の細工が描いてある…ようなものでした。
母が、夜寝るときには外し、水洗いして保管し、朝になると毎日入れ直していました。
おばあちゃんはもちろん片方の視力を完全に失っていましたし、半寝たきりのような状態でしたので。

ある日のことです。

いつものように義眼を洗っていた母が洗面所で小さな悲鳴を上げました。

何事かと見に行くと、…洗面所の、排水の穴から眼球がこっちを見ていました。

うっかり手をすべらせて落としてしまったのだそうです。

その後どうやって拾い上げたのか、という記憶はありませんが、あの光景は忘れられません。

あの眼球は何を思い何を見ていたのか。

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