第10話 【書評】第二バチカン公会議公文書(2023.8.27記)

【憲章・憲法の類は、争いがあるくらいで、ちょうど良い】

1.書名・著者名等

第2バチカン公会議文書公式訳改訂特別委員会 (翻訳)
『第二バチカン公会議公文書・改訂公式訳』
出版社 ‏ : ‎ カトリック中央協議会
発売日 ‏ : ‎ 2019/3/25
本の長さ ‏ : ‎ 1114ページ

2.兎平亀作の意見です

私、念仏、つまり異教徒です。
事情があってキリスト教について調べています。理神論、ユリテリアン、長老派、バプテスト派、ペンテコステ派と、何でも見境いなしに手を出しております。
神さま、教皇さま、ごめんなさい。

さて、本書は「第二バチカン公会議公文書」との物々しいタイトルから、法律の条文とか、お役所の政策文書とか、政党の綱領みたいなのを想像していましたが、案に相違して、びっくりするくらい読みやすかったです。

いや、本書で展開されている神学的論理や概念を、私がちゃんと理解して、自分の物にしているとは、恥ずかしくて口にもできないのですが、「読みやすい」と言うのは、それとはレベルの違う意味においてです。

本書は、教会関係者以外の「読み手の立場に立って」書かれたものなのではないでしょうか。内向きの「家庭の事情」が優先された文書ではないと思います。原文と訳文とを対照して吟味する力量が、私に無いのが残念です。

この文書の取り扱いは、誕生した瞬間から今日に至るまで、激動に次ぐ激動だったと仄聞しておりますが、憲章とは、本来そういうものでしょう。多種多様な議論があるのは、カトリック教会が健全な組織である証拠だと思います。

本書に出会って嬉しかったのは、「現代カトリックを論じる際の軸足の置き所が、やっと見つかった!」と言う点です。
本書に書いてある事がキリスト教の全てだとは思いません。でも、本書の記述を踏まえないで、カトリックの現在および未来を論じるのは、著しく知的誠実性に欠けると思います。

実は、「私の中のカトリック教会のイメージは、どうもアレクサンデル6世あたりで止まってないか?」と言うのが、私が自分に向けた最初の疑惑です。よくよく考えてみると、私がカトリックのイメージを仕込んだネタ本は塩野七生でした。彼女が理解した以上のカトリック観を、私は持ち合わせなかった訳です。

これに気付いて以降、私はハリウッド映画におけるカトリックの扱いが、鼻に付いて、鼻に付いて耐え難くなりました。トドメを刺したのが、映画「ヴァチカンのエクソシスト」(ジュリアス・エイヴァリー監督、2023、米)・・・。
ありゃ、一体ナンですか?

本書に話を戻します。
本書の一字一字から、信仰心が脈打っているのが目に見えるようです。「パワーをもらえる」と言い替えても良いかも。
「日本の仏教界も、こういう文書を作るべきだ」とは言いません。仏教とキリスト教では、その在り様が全然違うのですから。
でも、この意気込みは見習うべきですね。「やる気」と言い替えても良いと思います。

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