第2章 金岡玲子の場合 第6節 小さき者の死
そのあと、円盤は日本中に現れた。
ただし、一つか二つでやってきて、ちょっとだけ攻撃して、パッと消える。
仕返しだったら、もっとハデにやるはず。警告の積もりね。
ある海辺の町で、渡し船が円盤に攻撃されて沈没し、その県で初めての死者が出た。小学生だった。
「まいったな」と私は思った。1,000人の死者を、人は4ケタの数字としか思わない。驚いてはみせるけど、すぐ忘れてしまう。
でも、一人の小学生の遺影写真は人の心をかき乱す。良心に引っかき傷を残す。小さい者は、無垢な物の象徴だからよ。
その町が保守的なお土地がらだったのが、さらにアンラッキーだった。
警察が子どものご遺族を黙らせようとして失敗し、新聞ダネになった。隠そうとするから、かえって反発を招いて、世間の注目を集めるのに。
毛ムクジャラの宇宙人に誘拐された人たちが、持ち帰ったはずの「宇宙からのメッセージ」の続きが、新聞に載ることはなかった。
報道規制じゃないと思う。どう扱ったら良いのか、分からなかったんじゃないかな。
その沈黙のツケは、とってもイヤな形でハネ返ってきた。デマよ、デマ。いろんなデマが聞こえてきたけど、どこまでが本当の「宇宙からのメッセージ」なのかサッパリ分からなかった。神を信じる人たちも、信じない人たちも、みんな勝手なことばかり言いふらすんだもの。
その内、インチキ教祖やニセ預言者、科学者ヅラした陰謀論者のタグイも現れ始めた。
どうしてインチキと分かるかって?だって私、祈り屋=拝み屋系「業界人」だもの。誰が良心的な業者で、誰が悪徳業者かくらい、すぐ分かるよ。
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