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2023年 個人的 読書 オブザイヤー

 2023年も終わりが迫ってきました。

 去年初めて試みた2022年の私が読んだ中での1冊を決めたオブザイヤーは書いていてとても楽しかったなと思い出しながら、今年も終わりかけという状況で書いております。

 去年、オブザイヤーを書いたときは2022/12/20時点までで読了した本、47冊から選んだとなりましたが、今年は2022/12/21~2023/12/20までに読了した122冊という、私にとってはとんでもない量の中からの選定となります。

 今年は本当に良く読んだなぁ~と思い、いろいろな本を読めたことに感謝しながら、たくさんの思いを馳せて選定した思い出の本と、その中からのオブザイヤーを決めたいと思います。

 選定基準は今年一年、私が特に心に響いたとか、思い出に残ったとか大切にしたいことが書いていたなど面白さ以外で決めております。面白いを基準にしてしまったら、今年読んだほとんど本が面白かったなと思いますので。

 それでは、長くなると思いますが、お付き合いいただける方はお付き合いのほどよろしくお願いいたします。


①ワンダーランド急行(荻原 浩)


 令和5年1月の第一冊目に読了した作品です。

 舞台はコロナ禍。主人公はサラリーマン。

 ある日、会社に行く途中、無性に反対方向の電車に乗りたくなってさぼりさぼってしまった主人公。

 終点で降りてピクニック気分でお酒を買って山登りをして家に帰る途中、コロナ禍なのに誰もマスクをしていない。

 どうやらここは同じ世界なのにコロナ禍ではないパラレルワールドのよう。

 果たして主人公はこのパラレルワールドの世界から抜け出し、無事にもといた自分の世界に戻れるのかというお話。

 今年、たくさんコロナ禍を舞台にした作品を多く目にしたなという中で、コロナ禍の世界でのお話というのであれば、この作品が一番好きです。

 なぜなら、この作品は、ファンタジー的な要素や面白おかしい要素もあるものの、主人公が移動するパラレルワールドはあり得たかもしれない日本ですし、主人公があり得た1つの世界を旅するわけです。

 世界もそうだし、主人公もそうだし、あなたも私もそうですが、数多くの選択肢や可能性を捨てて、今があるという事実を突きつけられるわけです。

 そして、その捨てた可能性の世界に身を投じて、あなたは今の世界に戻りたいと思うのだろうか。

 実は今に不満がないのであればそれは幸せというのではないかと思った一冊です。


②夜行貝のひかり(遠藤 由実子)


 サッカー選手になるという夢を諦めた小学校6年生の少年彼方は何もやる気のない夏休みを過ごしていた。

 両親に勧められて叔父の住む奄美の島で夏休みを過ごすことになった彼方は、奄美の島の浜辺を散歩中にセーラ服を着た記憶の無い幽霊少女と出会う。

 少女が失ってしまった記憶とは。

 これは、夢を失った少年と記憶を失ってしまった幽霊少女が記憶を探す物語です。

 本作品は、奄美の綺麗な海を想像しながらゆっくりと読みたくなる作品で、文章がきれいで読みやすいなというところが特徴だろうなと思ってます。

 何より気づきが多いのですが、なりたい自分になれるチャンスがあるうちは追いかけたら良いんだと背中を押してくれる作品だなと思っています。

 あなたの生きているありふれた日常は実ははかなくも脆く、簡単に吹き飛ぶもの。

 夢を追いかけたくても追いかけられれなくなる日は必ずくるし、それがある日突然かもしれない。

 また、夢を追いかけたからと言って必ず成功するものでもない。

 でも、その夢を追いかけられるだけ追いかけてみたら何らかの形にはなるし、くすぶったままでは何者にもなれないということを教えてくれる、淡い恋の物語です。

 また、作者の遠藤先生のnoteに私のブクログの感想をそのままご紹介いただいた思い出深い作品でもございます。



③月夜行路 (秋吉 理香子)


 44歳の専業主婦の涼子は、関係が冷え切った夫の浮気を疑っていた。涼子の45歳の誕生日の前日の夜、夫は浮気相手と思わしき相手から連絡があり、仕事と言って出かけて行った。

 あまりにもムカついた涼子は夫の浮気相手がいると思われる銀座のクラブのホステスがいると思われる場所へ突撃。

 そこで突撃先を間違えて入ったところはオカマバー。

 オカマバーのママのルナと話しているうちに涼子は大学時代に付き合っていた男性の話をルナに打ち明けたところ、涼子は無性にその男性に会いたくなり、ルナの助言もありその勢いのまま元カレがいるであろう大阪へ向かうことに。

 元カレを大阪で探しているといろいろな事件に出くわす。果たして涼子たちは無事に元カレを探し出すことはできるのだろうか。

 いきなりクセ強めのオカマバーのママのルナが出てきてその推理や洞察力の鋭さもさることながら、文学作品に絡めた事件が起きたり、推理も文学作品を利用しているのも面白かったです。

 また、ルナママの言葉がめちゃめちゃ心に響くものが多くて何かと心に残った作品です。

 私の住んでいる大阪ってこんなに文学のルーツがあるところだったんだと思えた作品です。

 最後は切なくもあり温かい話でもあるなと思いました。

 今生きているあなたは、もしかすると誰かの夢なのかもしれません。


④ちぎれた鎖と光の切れ端(荒木 あかね)


 仲良しグループの中に1人、他の人たちに復讐を誓う人物が紛れ込んでおり、そのグループで熊本の天草の離島に旅行に行くことに。

 そこで企てていた殺人の計画。しかし、その殺人計画は実行されることはなかった。なぜなら、復讐者が手を下すことなく殺人事件が起きたから。

 果たして犯人は誰なのか、そして何のために殺人を?というミステリーです。

 この作品で、凄いなと思ったのは、ミステリー部分もそうなのですが、復讐としての動機は正直そんなに大したものではなく、なんでそんな理由でわざわざ仲良しグループの中に入り込んでまで殺人を犯したくなるほどの復讐心にかられたのかと思うかもしれません。

 しかし、最後まで読んでみると、確かにこういう動機で殺人を犯す人は犯すし、実は殺人する時に立派な動機なんて持っていない人がほとんどなんじゃないかと思いました。

 たとえば、むしゃくしゃしたから相手を殺したとか、某アニメーション放火事件も盗作したのにそれを認めてくれないからというよくわからない理由で人を殺しています。

 実は、現実的な殺人でも動機なんて他人からみたら大したことがないことも多いはずなのに、なぜか、ミステリーになると立派な動機を見つけてしまいたくなる不思議。

 でも、実際は本作みたいな動機の方がリアリティがあるなと感じ、またミステリー読み方を面白くさせてくれたなと思った1冊でございます。


⑤ヒマかっ!Get a Life!(日明恩)


 広島から東京へ家出をしてきた訳アリ主人公、光希は、東京のコンビニでたむろしていたところ、足場工事の組立会社の社長に拾われる。

 彼は幽霊を見ることができる、幽霊と話ができること。

 そして、同僚には幽霊は見れないし話せないけども、なぜか触ることができてなんならシバくことができる頭島さんと、見た目ヤンキーでもコミュ力抜群の奥さんと主人公3人でいろんな人から幽霊がらみではないかと思われる怪奇現象の相談を受けて解決に導く、令和のゴーストストーリーです。

 物事は1つの見方しかないわけではなくたくさんの見方ができるし、とらえ方もできる。

 そんなことは当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、私自身、偏見でみたり、1つのとらえ方しかできないことが多いです。

 本作に出てくる幽霊も、幽霊と聞いて、悪さをしているのだとなんとなく思ってしまう。でも幽霊って悪霊というのもあれば守護霊というものもあって、決して悪いものだけじゃない。もっと言えば仮に幽霊がいたとして、悪さをしているのが本当にいるとすれば、それは実はごく一部に過ぎないでしょ?と思います。

 すべては人の捉えようだということです。

 そして、見た目が怖いとこの人は怖い人だと思ってしまうことや、〇〇人だからと偏見をもつこと、これ、もう幽霊を怖がっていたり、幽霊は悪さをすると言っているのと変わらないでしょ?

 生きている人間の怖さを描きつつ、人間の温かさにも気づくそんな作品だと思いました。

⑥ビボう六(佐藤 ゆき乃)


 怪獣たちが住む永遠に夜の状態の通称裏京都を舞台にしたファンタジー小説です。

 ある日二条城を歩いてた怪物のゴンスは背中に白い羽をもつ女性(人間)が倒れているのを見つけた。

 その女性には記憶がなく、白いかえるを探しているという。

 ゴンスは小日向と名乗る女性を裏京都を案内しながら白いかえる探しを手伝う。

 とりあえず、6個集めると1つの世界が形成される。

 例えば、京都には東西南北があり、土地があり、空がある。

 正六面体で世界ができている。

 一見素敵そうに見えるこの理論ですが、世界ができるというのはワクワクする反面、怖いものなのか、なかなか6個目のことが見つからない、いやわざと見つけられないのかもしれない。

 そんな世界の話ですが、本作品を読んでいて、いろんなことを自分の物差しで測りがちな私。肩書を聞いただけで凄いなと思ったり、ちょっと悪さをしただけであの人は悪い人だと思ったり、結構単純にできている私の物差しで、私以外の人の幸せを私の物差しで測ろうとしてしまう。

 おそらく、こういうことって、私以外の人でもあるだろうと思います。

 しかし、私の物差しで測ったら不幸だとか、やめとけよとか思うことであっても、実は当人にとっては幸せだったり、なかなか抜け出せないものなんだなと思うこともあります。

 マリーアントワネットが言ったかどうかは知りませんが、パンがなければお菓子を食べればいいじゃないだって、そういうことで、結局他人の価値観は他人の価値観。決してそれは否定してはいけないものなんだろうなと思った作品です。

 また、6個集めれば何らかの世界ができるというのも、なんとなくですが素敵ですよね。

 そして、今回、5作品を選定しようとした私に、6作品を選定させる理由となったのも本作品です。

 これで、私の2023年の読書の世界が完成したように思います。


⑦2023年 個人的 読書 オブ ザ イヤー

 さて、今年読んだ本で特に私のなかで印象に残っている作品を選定いたしました。

 正直、面白いという基準でいくならば、ここに書かなかった多くの本に当てはまっています。

 また、いろいろな気づきも選んだ6作品以外からもたくさんのものをいただきました。

 気づきは全て、感想として残しております。

 話題がそれましたが、個人的な読書オブザイヤーを発表いたします。

 私の2023年 個人的読書オブザイヤーは…



 月夜行路(秋吉 理香子)



 です。

  選定理由は、この作品を読んでから、私が生きているということそれ自体が、誰かの夢になっているかもしれないということをかなり意識しているからです。

 本作品でオカマバーのママ、ルナさんが語ったことは、これからも私の中に特に刻まれていくのだろうと思いましたので、本作品を今年の1冊に文句なく推せるなと思いました。

 おそらく、自分が今幸せなのかどうかを年に何回かは考えると思います。

 つらいとき、うれしいとき、ふと何気なくでもありうると思いますが、幸せだなあるいは不幸だなもしくは幸せじゃないと考える時、あなたは何をもって幸せだと思いますか。

 私は、そういうときテレビで出てくる人やSNSの迷惑ユーチューバー、あるいは近しい人、そういう人を思い浮かべることが多いです。

 あの人よりは幸せかもしれないとか、あの人が羨ましいとか、ふと思う時があります。

 そういうことを思う時って、大体、あの人が羨ましい。自分にないもの、お金、才能、努力、環境など様々あると思いますが、羨ましいなと思う時が多いです。

 でも、よくよく考えたら、私が羨ましく思っているあの人も、誰かに憧れている。

 忙しくなくて、平日をダラダラと過ごす日々を羨ましく思っているかもしれませんし、もっと別のことで羨ましく思っているかもしれません。

 そう、私がないものねだりをして他人のことを羨ましく思っているだけで、実は、私だって誰かの理想になっているかもしれない。

 そんなことに気が付く小説ってこの本が初めてだなと思いました。

 そして、今まで出会ってきた人たちや例えば初恋のあの人が、今もどこかで幸せであったら良いなと読後は思う作品だったなと思います。

 こういう気付きをいただけた作品ですので、私が読んだ2023年を代表する作品として選定いたしました。

 今、こうして書いていても温かい気持ちになる作品だなと思いますので、年末読みたいなと思いました。

 そんなこんなで2023年のオブザイヤーを無事に選定できたクリスマス前。

 ご興味がございましたら、是非、年末の読書計画の1冊にいれていただけば私も嬉しいです。

 冒頭にも書きましたが今年はたくさんの本を読むことができました。

 来年も、また読書オブザイヤーを書けるくらいに本を読めればなと思います。

 それでは、皆さま良いクリスマスと、よいお年を。

 さよなら

 さよなら

 さよなら……

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