「ガンマウォールの過去、現在、未来」その3(開業後)

◆スタートダッシュは好調
2017年2月24日の開業後、ガンマウォールのスタートダッシュは好調だった。100坪の敷地に、スラブ、垂壁、110度壁、130度壁、ルーフ壁と5種類の壁があり、8級から初段までテープ課題は100個以上用意した。オープンのルートセットは、元Boldの野田さん、川中さん、Ziprockの渡辺数馬さん、沙亜里さん、グランドワズーの宮田さん、ミノリテの猪井さんの6人にお願いした。ホールドもTeknikやEgripを中心に人気のメーカーやシェイプを厳選し、課題のバリエーション、ユーザーに納得感のあるグレーディングを心掛けた。クライミングジムにおける課題はレストランにおけるメニューのようなもので、オープン当初から現在に至るまで強いこだわりをもって取り組んでいる。

◆プロダクトとして課題にこだわる
壁の構成について説明すると、強くなりたいコアクライマーには強傾斜壁(130度以上)が必要だし、逆に女性や子供の初心者には緩傾斜壁(90度~80度壁)が必要となる。課題についても、何度も登りこんで保持力やムーブを習得するためのトレーニング課題、パワーが試される課題、足技や柔軟性が試される課題、コーディネーション課題、コンペ課題、外岩モチーフ課題等バリエーションをそろえるのが重要だ。一人のセッターで作り続けると、作風が固まるので、ゲストセッターを呼んで新しいインスピレーションをもらいながら、セットスキルを磨いていった。グレードについては、強いクライマーが自分のたどってきた道のりに合わせてつけるとどうしても厳しくなる。世の中には4-5級や2-3級を乗り越えられない顧客層もいるので、クライマー層と初中級者のバランスに注意をした。
 ただ、外岩の開拓やFISTというコンペの主催をしていた熊本県の老舗クライミングジムRanchの背中はずいぶんと遠かった。クライミンググッズを取り扱う輸入代理店や、九州のコアなクライマーには、「ガンマウォールってできたらしいね」というくらいの認識しかなく「面白そうだから行ってみようか」というところまでの認知は得られていなかった。

◆オリンピックをきっかけに市場を拡大する
一方で2017年の熊本県ではボルダリングがコアなクライマー層を超えて、一般市民に広がる過程にあったので、テレビや雑誌の取材にはしっかりと準備をしてから対応した。そのあと、お店に来てくれた体験のライトユーザー向けに、初心者用の課題を集めたビギナーズサーキットというプログラムを作り、ビギナー層の育成を頑張った。キャラが控えめな高田君がつくるクライマー向けの高グレード課題やウィークリー課題も、ジワジワと熊本県のコアクライマーに認知されるようになっていった。接客を通して、初めて体験に来た人に登り方を教えて、数か月後シューズを案内して、飲み会に行って、コンペをやったり外岩に行ったり、それぞれ感動のステージが上がっていく時間を共有できるのはすばらしい体験だ。オリンピックの正式種目化も追い風になって、東京の輸入代理店の展示会も華やかだった。2017年はここ数年で全国的にボルダリングの勢いが一番あった年といえるのではないだろうか(続く)。

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