「ガンマウォールの過去、現在、未来」その7)上通店

◆2店舗展開
 ガンマウォールは小山店と上通店と2店舗を運営している。小山店は郊外の熊本ICや熊本空港に近いところにあって100坪以上の大型店舗だ。一方で、上通店は街の中心地の商店街のアーケード内にある40坪の小規模店舗だ。
 小山店を2017年2月に開業したあと、約半年で2号店である上通店を2017年9月に開業した。人通りの多い商店街で、ボルダリングを知ってもらい、そのあと続けるお客様に3-4級までステップアップしてもらうことをコンセプトとした。小山店は車でしかいけないため、小学生や大学生、OLさん等車を持たない顧客層にリーチできたことは良かった。実際、小学生が上通店でボルダリングを始めて、中学生のときに福岡のコンペで入賞するところまで成長するという実例も現れた。

◆視覚障碍者との交流型イベント
 そして、視覚障碍者と健常者の交流型クライミングイベント「モンキーマジック」を上通店で開催した。その後も地元の医療機関のメンバーのバックアップがあって、ローカルの交流型イベント「くまモンキー」を上通店で続けてきた。上通店は、電車やバスでアクセスできるため、視覚障碍者の人が自力でアクセスできるし、ウォールの高さが3.3m、マットが継ぎ目のないシームレスマット、壁構成は垂壁中心、と視覚障碍者が安全性を確保する上で理想的なクライミング環境だった。一時期は盲学校にクライミングウォールを建てるという計画も盛り上がったが、パラクライミング世界1位でモンキーマジック代表の小林さんが「視覚障碍者がクライミングをきっかけに街に出て、そのあと飲み会に行くなどリアルな社会の空気を吸ってほしい」という方向性を出していたので、ベクトルが維持された。クライミングは、自分のペースで楽しむスポーツであり、それは視覚障碍者も健常者も変わらない。そんなクライミングの原点を確認できるイベントに関われたのは貴重な経験だった。

◆見切り発車を反省
 ただ、あとから冷静になって振り返ると、街の中心地のアーケード内にクライミングジムを出したことが正解だったかは反省の余地がある。郊外のイオンモールの駐車場はほぼ無限にあり駐車料金も無料だ。上通店の周りの駐車場は1時間200円~400円で数時間クライミングをするとジムの利用料金よりも駐車料金の方が高くなってしまう。もともと光の森やイオンモールとの競争があったにもかかわらず、バスセンター跡地に「サクラマチ」が出来て、上通・上乃裏・並木坂のエリアとしての存在意義が問われている。そしてコロナウィルスの流行でイベントや人との交流が控えられる中で、さらに熊本駅ビルに商業エリアが出来る予定だ。そのような事業としては不利な環境にも関わらず、上通店をアットホームで初中級者が楽しめ、キッズも遠慮なく通える空間を作って盛り上げたのはスタッフの馬場君だ。馬場君は接客とコミュニティづくりに天性の才能がある。コロナが落ち着いたら、ジムコンペのあとの飲み会、海でBBQから遠泳して、さらに外岩セッションとか、上通店らしいアクティブな企画を再開できる日を妄想している。
 コロナウィルスの脅威が去っていない今、上通店はスタッフがいない無人営業の時間帯を有人営業と並行して試験的に運用している。スポーツジムでは24時間無人で使い放題というジムが標準的な選択肢だ。コロナが無くならないのであれば、それを乗り越える何かを探すしかない。そうやって試行錯誤しているのが2020年7月時点での現状だ(続く)。

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