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声劇台本「ガチ恋裁判」

もしも、ガチ恋が罪に問われる世界があるとすれば……?!


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声劇データ

✓上演時間 15分程度
✓上演人数:4名(女性2名/男性1名/不問1名)
✓ジャンル:コメディ

あらすじ

配信者への「ガチ恋」が罪に問われる世界線。
人気配信者へのガチ恋罪に問われた女性の裁判風景が描かれるコメディ作品。

登場人物

1.裁判官:男女不問。演者の中では一番年齢が高い。人格者であり、真面目な性格。ただし、本人としては至って真面目な発言をしているつもりが、周囲からはおふざけをしているように誤解されることが多い。

2.検察官:男性。30代後半。基本的には真面目な仕事人間。女性に縁がないことが最近の悩み。

3.弁護士:女性。30代後半。少々ヒステリックな性格で、裁判では異議を申し立てることが多い。しかし法廷の外では「法曹界のマドンナ」などと呼ばれており(本人は知らない)、その美貌には定評がある。実はイケボンバーにガチ恋している(?)。

4.もめるん(被告人):女性。年齢設定は自由。とにかく痛々しいが、他人の痛みに共感を抱き励ますなど、常識人的な一面も伺える。メンタルが不安定。

(5.イケボンバー(被害者):男性。20代。声はイケボだが、見た目はブサイク。本人もそれを自認しており、写真は極度の加工を加えるなど対策をしている。
※声劇には直接登場しません

声劇台本「ガチ恋裁判」


裁判官:「ではただ今より「もめるんちゃんがイケボンバーくんにガチ恋しちゃってる件」について審理を始めます。被告人は証言台の前にお願いします」

もめるん:「ねぇ!  あたし、ボンバーくんにガチ恋なんてしてないってば!」

裁判官:「被告人は質問されたことにだけ応えるように。それでは被告人、まずはあなたのお名前を教えてください」

もめるん:「ふわふわらぶりーランドのお姫様! もめるんです!」

裁判官:「生年月日は?」

もめるん:「えーっと……2005年の7月7日生まれ! 永遠の17歳です」

裁判官:「職業は?」

もめるん:「市役所勤務です」

裁判官:「……分かりました。えーそれでは、証拠調べを行いますので、検察官は起訴状を朗読してください」

検察官:「はい。被告人もめるんは、昨年2月音声配信アプリ「かーきんぐ」にて被害者であるイケボンバー氏と出会い、配信に通ううちにガチ恋となりました。ガチ恋禁止法1条によるところの終身刑、即(すなわち)<一生イケボを聞いてはいけない刑>を要求するものとします」

もめるん:「だからガチ恋なんてしてないってば! もめるんはボンバーくんを配信者として応援していただけで、恋なんてしてないもん! てゆうか一生イケボが聴けないなんて死んでも嫌ぁぁぁぁ!!!!」

(SE:木槌(がベル)の音→カンカン)

裁判官:「静粛に! 被告人は質問された内容にだけ答えてください。ただし、被告人には黙秘権があります。質問された内容であっても答えたくない場合は答える必要はありません。それでは被告人・もめるん。今検察官が読み上げた起訴状に間違いはありませんか?」

もめるん:「だからぁ! 間違いだらけだってば! もめるんは、ボンバーくんにガチ恋なんてしていません」

裁判官:「弁護人の意見は?」

弁護士:「はい。被告人同様、無罪を主張いたします」

裁判官:「はい。では被告人は一旦席に戻ってください。それでは検察官、冒頭陳述(ぼうとうちんじゅつ)をお願いします」

検察官:「はい。被告人もめるんは、2022年1月ごろに音声配信アプリ「かーきんぐ」にて被害者・イケボンバー氏の配信を視聴。その魅力的な声と配信内容に引き寄せられ、毎回のように配信を聞くようになります。そして2月ごろから課金をはじめ、4月時点で10万円を越える金額を貢ぎ、そのときお礼としてイケボンバー氏にメッセージアプリなどのアカウントを教えるように強要。声も優しければ心も優しいイケボンバー氏はこれに答えます!」

弁護士:「異議あり! 検察官の言う「魅力的な声と配信内容」「声も心も優しい」というイケボンバー氏に関する情報は私情によるものであり、客観性が見られません」

検察官:「何を言っているんですか? 弁護人はボンバーさまの配信、聞いたことないんですか? 「かーきんぐ」は2020年にサービスが開始された小さいアプリながらも、ボンバーさまは常に同接(どうせつ)300人以上を誇る大人気配信者さまですよ?男の私が聞いても楽しめるんですから、ボンバーさまの配信は素晴らしいに決まっているじゃないですか。なお、帝都(ていと)大学音声研究学部の分析によりますと、イケボンバー氏の音声には人を癒しへと導く特殊(とくしゅ)な周波数が含まれていることが判明いたしましたので、こちらの実験ファイルを証拠として提出致します」

裁判官:「なるほど。序盤の口述内容には若干の疑問がありますが、この実験データは確かなようですね。証拠として採用しましょう。よって弁護人の異議を却下します。検察官、続けてください」

検察官:「はい。4月に連絡先を交換してからというもの、被告人の要求はエスカレート。ボイメや寝落ちもちもちなどを強要。しかし、8月時点での被告人の課金額は100万円を越えており、その他にも個人的にプレゼントなどを送っていました。これらの行為に感謝の気持ちを抱いていたイケボンバー氏は、被告人の要求を断ることができなかったのです。」

弁護士:「質問あり! そのボイメはどこで聴けますか?」

検察官:「証拠として提出してありますので、あなたはいつでも自由に聴けるはずですが」

裁判官:「そうですね。既に私も聞いています。「もめるん、今日も1日おつかれさま。大好きだよ」というような、面白くもおかしくもない内容ばかりでしたが」

弁護士:「証拠に見落としがあったようですね。後ほど、証拠を確認します」

検察官:「大変失礼ながら弁護人。証拠を見落とすとは、お忙しいんですね?」

弁護士:「いえ、ちょっと彼氏と別れたばかりで」

もめるん:「うわぁ、かわいそう……」

弁護士:「あなたにだけは同情されたくないわよ!」

もめるん:「弁護士さんは寝落ちもちもちする相手いるの? もめるんには居るよ?」

弁護士:「お金と物で買った相手と恋愛ごっこしてるだけじゃない、くだらない!」

裁判官:「弁護人、落ち着いてください。あなたがそれを言っては裁判が成立しなくなります。そして被告人は余計な発言を控えるように。とくに弁護人の心を痛めつけるような内容は辞めてあげてください」

もめるん:「はーい」

裁判官:「それでは検察官、続きをお願いします」

検察官:「あぁ、はい。あの弁護人、私も独り身です。この下らない裁判が終わったら、一緒にご飯いきませんか?」

裁判官:「検察官。ここは神聖なる裁判所であり、マッチングアプリではありません。ご飯は私も含め3人でいきましょう。まずは間に人が入り、お友達から始める……これが清らかな交際というものです。それでは、続きをどうぞ」

検察官:「では食事代は裁判官の奢りということで、まずは3人でご飯から始めましょう、弁護人。えー、続きですが、9月に入りますと、被告人の要求はさらにエスカレート。イケボンバー氏がそれに対応できないでいると、スタイルがいいわけでもないくせに露出が多い写真を送りつけたり、死ぬ死ぬ詐欺的な内容を昼夜を問わず送信。周りのイケボンバー氏のファン、通称・ボンバーズの人々にもマウントを取るような発言を繰り返すようになります。これに耐え切れなくなったボンバーズの方たちは、続々と配信から去っていき、最近では同接・10名以下という過疎枠になりました。こうした行為に耐え切れなくなったイケボンバー氏は、同年11月に被害届けをガチ恋警察に提出。これが受理されました」

弁護士:「異議あり! 検察側の主張はあくまでイケボンバー氏からの訴えを採用したもので、被告人がイケボンバー氏に恋愛感情を抱いていたという根拠が全くありません。あっ、お食事の件に関しては異議ありません。できれば高級焼肉が食べたいです」

検察官:「焼肉、いいですね。承知しました。ところで被告人の恋愛感情に関しては、イケボンバー氏とのメッセージのやりとりの中に嫌という程見られますよ? 「好き」「愛してる」というシンプルなものから、「ボンバーくんの脇の匂いを嗅ぎたい」「ボンバーくんの鼻毛を送ってほしい」という気色悪いものまで様々です。ちなみに、イケボンバー氏はこの要求に対し「仕方なく親父の鼻毛を送った」と証言しています」

もめるん:「ちょっと待って! あれお父さんの鼻毛なの?! もめるん、お庭に植えて毎日お水あげてたのに……大切に育ててたのに……」

裁判官:「被告人の個人的な趣味と行動は全く理解できませんが、証拠品を見る限り恋愛感情はあったとみるのが一般的でしょう。よって、弁護人の異議は却下します。ちなみに、焼肉も私の胃には重すぎるのでこちらも却下します。しゃぶしゃぶにしましょう」

もめるん:「ねぇ!さっきからあなたたち何なの?! 裁判やる気あるの? 焼肉とかしゃぶしゃぶとか……どうでもいいよ! もめるんにとって、ボンバーくんは心の支えだったの!ボンバーくんが居るから、仕事もできたし、結婚できなくて実家を出れない現実を忘れることもできたの! 他のボンバーズなんかみんな消えればいい。もめるん同担は徹底的に拒否る主義なの! ボンバーくんはもめるんだけのものなの!!」

裁判官:「被告人は静粛に。今は分からないと思いますが、焼肉を食べるのが辛くなる日がきます。絶対にしゃぶしゃぶは譲れません」

検察官:「分かりましたよ、裁判官。しゃぶしゃぶにしましょう。ところで、この辺で被害者でもあるイケボンバー氏を証人として召喚したいのですが、よろしいでしょうか?」

裁判官:「いいでしょう。それでは証人イケボンバー氏は、証言台へどうぞ」

(SEのしくはモブ:ざわざわ)

弁護士:「え、イケボンバーくんって……」

検察官:「ちょ、え?! イケボンバー、え?! 声いいのに……えっ、見た目……」

裁判官:「これは……証人は裁判所までの道で、何者かに顔を強打されたのでしょうか? というか、検察官と弁護人は彼の顔を既に知っていたのでは?!」

検察官:「いや……ほとんどリモートでの取り調べでしたし、常にマスクと眼鏡を装着されていて、恐らく加工も入っていたので……この感じはちょっと想定してなくて……被告人ほどではないものの……応援で3千円分課金してしまった自分が悔やまれます」

弁護士:「あら、イケボンバーさまとか呼んでたから、てっきり元ボンバーズのメンズチームかと思ったのに、雑魚じゃない。私はね、このバカ女がくる前は車一台分は余裕で課金してたのよ? それが、まさか……こんなことって。あなた、忠(ただし)よね?! 私がマンション買うと同時に「おれ、ここではやりたいことができない」って言って出て行った……あの忠よね?! あっ「やりたいこと」って配信だったの? 私が防音性を重要視しなかったから、出ていったの?」

裁判官:「弁護人は人間を表面的な要素では選ばない、素晴らしい女性ですね。検察官、あなたは決してイケメンではありませんが、清潔感があって爽やかな印象です。あなたなら弁護人を救えますよ」

もめるん:「ちょっと待ってよ! こんなの聞いてない!! ボンバーくんがくれた写真はアイドルみたいに可愛い顔してたよ? 加工しすぎて、周りの景色とか全部歪んでたけど!!! それが……加工ないと、こんなことになっちゃうの? もう無理!! 私、こんな人にガチ恋なんてしてません!! っていうか、貢いだお金返してよ!!!! もう最悪!!!」

裁判官:「被告人、人を見た目で判断してはいけません。それに弁護人はこの方と交際を……」

弁護士:「触れないでいただけますか? 声だけでは元彼と分からずに、必死で課金した挙句、バカ女にマウント取られて。この裁判の弁護だって本当は断りたかったんです。でもボンバーさまとお近づきになれると思って引き受けたんです。それが、この有様。久しぶりに顔を見たら、もう何で好きになったかも分からなくて……」

もめるん:「弁護士さん、大変だったね。もめるんもね、彼ぴっぴと別れてすぐにコイツの声に騙されたの。辛いよね。でも、弁護士さんには、検事さんっていう新しいパートナー候補がいるじゃん。だから大丈夫だよ」

弁護士:「そうね、ありがとう」

検察官:「裁判官、ここは被告人を無罪にしちゃって、4人でしゃぶしゃぶいきませんか? 私も長いことこの仕事をしてますが……こんな複雑な気持ちになるのは初めてです。みんなでお酒でも飲んで、今見たことは全て忘れてしまいましょう!!」

裁判官:「そうですね。では被告人は無罪!これにて閉廷!! さぁ、しゃぶしゃぶに行きましょう」

もめるん:「えーーーっ?! もめるんはすき焼きがいいっ!!!!」


がみのろま 自己紹介

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