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声劇台本「冬のソフトクリーム」

音声配信アプリ・Spoonで行われた声劇CAST投稿企画 #フユコイ2 で多くのみなさまに演じていただいた台本です。フリー台本としますので、企画に参加できなかったあなたも、ぜひ演じてみてください。


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声劇データ

✓上演時間 10分程度
✓上演人数:2名(男性1名/女性1名)
✓ジャンル:恋愛

あらすじ

男と女は不倫関係(男に妻あり)。
その関係が男の妻に見つかり、2人は別れることになる。
年末、最後の旅行に出かける。

登場人物

●男
妻がいるが、女を本気で愛している。公務員。
基本的には真面目な性格。

○女
自営業。男とは仕事で出会う。
割り切った関係であると言い聞かせながらも、次第に沼っていく。
気が強く、はっきりとした性格。

※●●には男性演者名
 ○○には女性演者名を
 それぞれ入れてください。

声劇台本「冬のソフトクリーム」

※ (M):モノローグ

★場面1:ホテルの一室・事後

●「なぁ、別れてくれないか?」

○「なによ、いきなり」

●「妻にバレた。今年中に別れないと離婚だって。それに君にも慰謝料を請求するって言い出してさ」

○ 「遊ぶのが下手なのね」

●「すまない」

○「慰謝料はいくらでも払えるけれど。あなたは奥様と別れられないわよね?」

●「妻の父親は町でかなりの権力を持っているんだ。俺自身はともかく、父さんや母さんたちも世話になっているから……」

○「分かった。別れてあげるわ。でも、最後にひとつだけ、お願いをきいてほしいの」

●「お願い?」

○「2人で旅行に行きたいわ。できれば大晦日に。日帰りでいいの」

●「大晦日に旅行?」

○「私たち、いつもこうやってホテルで会うだけだったじゃない? だから、最後はどこか別の場所に行ってみたいの」

●「分かった」

○「その旅行のときだけは、奥様のことを忘れてね。ただの『恋人同士』として、思いっきり楽しみたいから」

●「そうだな。最後の思い出をつくろう」

★場面2:旅行先

●「この寺、合格祈願で有名らしいぞ」

○「へぇ。だからこんなに人が多いの?」

●「それもあるだろうけど、今日は除夜の鐘を撞(つ)きたい人たちかもな。もしくは、もう初詣に並んでいるとか」

○「鐘を撞けば煩悩が消えるっていうなら、いくらでも撞くけど。人間そんなに簡単じゃないのよ」

●「それもそうだな」

○「あとは……初詣か。1回くらい一緒に来てみたかったわね」

●「あぁ……」

○「そんな顔しないでよ。ただの冗談。さぁ次に行きましょ」

●「……君は、美人だな」

○「何? 急にどうしたの?」

●「出会ったときから思ってたことだけどさ。改めてこうやって外で見ると、綺麗なんだなって。俺には勿体ないよ」

○「ありがとう」

●「せめて、もう少し早く出会えてたら……」

○「そういう話しはやめて! 今日はただの『恋人同士』として旅行を楽しむって決めたでしょう?」

●「そうだったな。あっ、おい! これ、紫芋のソフトクリームだって! 食べないか?」

○「こんな寒い日に? あなたって子どもみたいね」

●「は?! あれ、美味(うま)そうだろ?」

○「そうね。じゃあ、私も1口だけもらうわ」

★場面3:男、ソフトクリームを買う

●「はい、あーん!」

○「もう、子どもじゃないのよ?」

●「いいから! ほら、あーーーん」

○「んもう。しょうがないわね。あーーーん」

●「ははは、可愛いな、その顔。そういう顔も持ってるんだな」

○「いいから! 早くちょうだいよ! この歳であーんするなんて、恥ずかしいのよ?」

●「はいはい。ほら、あーーーん。……どうだ? 美味いか?」

○「えぇ、美味しかったわ。甘くて、冷たくて」

●「あぁ。そうだな。……あっ、あの辺で写真でも撮るか? みんな撮ってるぞ」

○「そういうのはやめておきましょう。今までだって1枚も撮ってないじゃない」

●「いや、だからさ。最後に1枚くらいいいだろう?」

○「必要ないでしょ? 思い出は、脳にだけ焼き付けておけばいいわ」

●「それもそうだな」

○「そろそろ帰りましょ。私、明日は朝から実家に行かないといけなくて。早いのよ」

●「俺も明日は妻と……、いや、その、朝が早いんだ」

○「じゃ、駅まで一緒に行きましょ」

●「あぁ」

★場面4:駅のホーム
☆SE1:駅のアナウンスやざわざわ感など

●「じゃあ、ここで。また…は、ないんだよな。ははは」

○「そうよ。私たちの関係は今年で終わり。来年からは、お互いが一切いない人生がはじまるの」

●「すまない、色々苦しめたよな」

○「本当よ。辛かったわ。あなたに抱かれる度に、顔すら知らない奥様の影を感じてた」

●「悪かった。でもこれだけは信じてくれ! 俺は君のことを……」 

○「(食い気味に)それ以上は言わないで」

 ●「……あぁ。分かった。じゃあ、さよなら」

○「さようなら。来年は若い男でも見つけて、結婚するわ」

●「それはいいな。応援してる」

○「ありがとう。じゃ、バイバイ」

★場面5:女、帰宅の電車の中
☆SE2:電車の走行音など(電車に乗車してると分かる音)

○(M)『何が『応援してる』よ? ふざけないで! 今さら新しい恋なんてできるわけないじゃない。馬鹿。あのソフトクリームの味が消えないのよ!! 甘くて、冷たくて、美味しくて……最悪よ。でも、あなたとは今年で終わり。そう決めたの。それで来年からは、もう顔も見られない人を想いつづけるの。だって、まだ、こんなに愛してるんだもの●●!!』

★場面6:男、ホームを歩きながら
☆SE3:ホーム内のアナウンスや人々の騒がしさなど

●(M)『なんだか口の中が甘いな。それに、いくらなんでも寒すぎじゃないか? …あぁ、あのソフトクリームのせいか。あれはもう、一生食えない味だな。来年は甘さが消えて、寒さだけが残るってわけか。自分から『別れてほしい』って言ったくせに、わがままだけどさ。我ながら、最低の男だとも思う。でも、これだけは言わせてほしかった。本気で愛してたよ、○○!!』


がみのろま 自己紹介

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