MTGのスタンダードで、初心者や復帰者にまずはどんなデッキを勧めるか?(追記あり)
MTGスタンダードのローテーションが3年に変更され、2024年後半に変更後初のローテーション落ちを迎えた。
それと同時に、初心者や復帰者に勧めやすいデッキの傾向や方向性もはっきりしてきたとも言える。
自分はお店で、続かない初心者や復帰者を多数見送ってきた立場でもあり、
今回はその反省も含めて、初心者や復帰者が後に定着しやすいための、最初に勧めるデッキは何が最適か?を考察してみたい。
MTGスタンダードの、他のレギュや他TCGと比べた時の大きな違いは、初心者や復帰者でも「勝つ」という体験を得やすいという点だ。
他のゲームでは、プレイングやデッキ性能に差がある場合、格上に勝つことがほぼできない。
コミュニティーが出来上がっていて、すでに中級者以上しかいなかった場合、大会で1勝もできないので萎えて辞める、と言う可能性は大いにあり得る。
MTGスタンダードでもアベレージを見れば格上が良い成績を取れるのは他のゲームと同じではあるが、初心者や復帰したてでも、明らかに格上の相手に、早い段階で1マッチで1-2は取れた、という成功体験を得やすい。
その理由としては、
・BO3の対戦形式
・上級者でも事故負けする可能性がある
・MTGの近年のインフレはカードパワーが底上げされる方に向いていて、同レアリティー内でのカードパワーの差が少なくデザインされており、価格に比例せず安くて強いカードが存在する
・テーマが薄く、ジャンクデッキが組みやすいデザインである
・除去が軽くて強いデザインで、盤面をひっくり返しやすい
・対策カードやサイドボードにより、特定のデッキへのガンメタが可能
マッチで勝つのは上級者ではあるが、1ゲームは取れたという大勢に影響を与えない形で初心者も勝ちの体験が得やすいという特性は、MTGスタンダードの他にない大きな強みだろう。
勧めるデッキタイプについて後述するが、まずはこの特性を活かすために、初心者が体験しやすいように大会形式をBO1に設定する、ということを店やイベント主催者は避けた方がよい。
次に、負けたことを次に繋げられるかどうか、が焦点となる。
それがしやすい特性として、
・相性差を補完したり覆せる対策カード、メタカードが存在する
・サイドボードの存在により、対策カードによってメインのデッキパワーを崩さないようにできる
・直前にプレイされたカードが負けの要因になることが多く、何故負けたのか?が直感的にわかりやすく、反省やその後の対策がしやすい
あるカードを出されたことで・あるデッキタイプと当たったことで封殺されてしまったら、次はこのカードを入れてみよう、こうデッキを変えてみよう、という次に繋がる反省ができ、3年分の広大なカードプールを備えていることで、そのための拡張性や選択肢も豊富に存在する。
負けず嫌いな性格を持つ復帰者や中級者がストレスを抱えていずれ去って行ってしまうポイントがここだと思っており、彼らは反省の活かしにくいデッキを握っていた可能性がある。
ここまでの考察を踏まえて、初心者や復帰者にまずはどんなデッキを勧めるか?を詰めていく。
反省を活かせるのは、その色に対策カードが存在するか?が重要な要素となる。
ストレスをかかえる人は、その色やそのデッキのマナ域で対策カードがないか、対策カードとしては弱いため、答えのない反省をして延々としてストレスを抱え、いずれ萎えてしまうパターンだと思われる。
これは大抵の場合、現在握っているデッキの色や、フェバリットとして選んだ色の組み合わせが悪いと考えられる。
そこから逆算していくと、
確定除去や全体除去がある = 白 or 黒
パーマネントが除去できる = 白 or 緑
対策カードが存在する色の特性はこうなる。
さらに、
・どのマナ域でも使えて、構築の差があってもデッキパワーを保障する = ミッドレンジ
・特定のキーカードを使わない非テーマデッキ = ジャンク
これらから導き出される最初に勧めるべきデッキの結論は、
・黒緑もしくは白絡みの2色デッキ、または3色デッキ
・ミッドレンジかつジャンクデッキ
これを満たしているのならば、Tierデッキのレシピを渡してもよいだろう。
基本的にTierデッキの値段を妥協して組むと瓦解するが、この条件に適合しているならば、高いカードを性能が近い安いカードに差し替えても十分機能するし、必要に応じて徐々に高いカードに差し替えていく拡張性にも繋がる。
逆に初心者・復帰者に勧めてはいけないのは以下となる。
これはほんとうにやりがちなので注意したい。
① BO1大会
② 単色デッキ
③ 解答がない2色の組み合わせ(青黒、赤黒、赤緑、青赤、青緑)
④ 速攻のテンポデッキ
⑤ 特定のキーカードが必須なテーマが濃いデッキ
⑥ Tierデッキ全般(ミッドレンジジャンクを除く)
これらは一見デッキが組みやすく見えて、一般的に初心者向けと推奨されており、かつては店でもやっていたことも多く、今では反省している点でもある。
[ 追記 ]
① BO1大会
BO3で格上に1本は取れたという成功体験の方を積み重ねる方が重要。
② 単色デッキ
昔と違って安い構築級の多色土地も多く、最初から多色化しても価格面でネックになりにくくなっており、高くて手の出しにくい2色土地は、現代では大会でもらえるプロモパックからの引きで徐々に差し替えられる可能性もある、という点も重要。やれることの少ない単色をやっただけで辞めらてしまう前に、2色以上の多様な特性を早期に学ぶ方向に持っていくべき。
③ 解答がない2色の組み合わせ(青黒、赤黒、赤緑、青赤、青緑)
中級者に多いが、例えば置き物がほぼ破壊できない青黒で、置き物系デッキに負けることを永遠に悩んでいるうちにこのゲームが嫌になってしまう、というようなパターンに後々おちいるのを避けるため、初心者のうちはまずは何でもできる色の組み合わせの中から最初のデッキを選ぶべき。
④ 速攻のテンポデッキ
デッキパワーが低い速攻デッキは、デッキパワーの高いミッドレンジに太刀打ちできない負の体験が積み上がっていく可能性がある。同じくハンデスデッキも、デッキパワーが下がり、トップにも弱くなる。デッキパワーが高ければ、構築やプレイングの差も比較的小さくなるので、まずはミッドレンジを握るべき。
⑤ 特定のキーカードが必須なテーマが濃いデッキ
このカードでなくてはならないという特定のキーカードを持つデッキは、価格面で妥協して下位互換のカードに差し替えるとデッキが瓦解してしまう一方、除去とクリーチャーが中心というようなジャンクデッキであれば、どれを差し替えてもデッキ性能は大きくは下がらず、後に手に入ったカードと差し替えられるという拡張性もあるので、まずはジャンクデッキを握るべき。
⑥ Tierデッキ全般(ミッドレンジジャンクを除く)
MTGスタンダードは、構築やカード選択の試行錯誤の余地が大きいゲームであり、構築の余地が少ないので勝たなければ面白くない、という状況にもっともなりにくいゲームである。よって、拡張性のない完成形のTierデッキを最初から初心者が握る必要はなく、勝たなければ楽しくない、勝つために最初からTierを握らざる得ない、という他のゲームを遊ぶ時のような考えは必要ない。Tierデッキの価格だけをみて、MTG=金がかかる、と結論付けるのは、他のTCGを遊ぶ時の視点・常識で見た誤った認識であり、まずはその誤解を解くべきである。とはいえ、適当に組んだデッキで太刀打ちできるわけではないので、Tierを握りたいというのならば、その中からミッドレンジジャンクのレシピを選んであげるべき。
3年になったことで、ローテーションというタイトな部分の面白さは削がれたが、個人的には腰を据えた遊び方ができるようになった点はメリットの方が上回ると考えており、今まで初心者向けとされてきた定説も見直しが必要だと思い、今回要点を洗い直してみた。
大型イベントが再開し、5年間使用できるファウンデーションズが発売され、公式の競技レギュレーションもスタンダードが推されるようになってきている。
うちの店はここ数年、毎週遊べるスタンダード環境が実現しているので、
来年こそは、新規プレイヤー増にも期待したい。
以上