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正座で詰められる話“音霊魂子”

 

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「ねえ、なんで君正座させられているかわかってる?」

 日曜日。正午。買い出しに出かけて家に帰った俺は何故か魂子さんに正座させられていた。
正直わからない。別にやましい事をした覚えも無いのだから。

 「いや、ちょっとわからない」
 「…………………………………………………ふぅん?君さ、昨日、何してた?」
 「昨日?普通に仕事して帰ってきて……ほら、一緒に夕飯食べたじゃないか」
 「普 通 に ?」

 声のトーンが一気に下がる。
いや、普通に仕事してたよ?

 「へぇ……?ふぅん?」

 なんだろう。なにか地雷を踏んだのか。背中に冷たいものが走る。
落ち着け、落ち着くんだ俺。昨日何があったのかよく思い出してみよう。

 「昨日は朝起きて魂子さんの朝ご飯とお弁当作って仕事に行ったよね?」
 「そうだね。朝ご飯のヘルシーつけ麺、チンするだけでとっても美味しかったし、お弁当もちゃんとハートマーク入ってたしメッセージカードもすごく嬉しかった」

 いつからか魂子さんの弁当には必ずどこかにハートマークを入れる事になっていた。最初は俺の拘りだったのだけど、魂子さんが喜ぶものでついつい手が込んでしまい、今では隠れハートマークを毎度お弁当に入れるまでになっていた。
朝直接話せないことも多いので一言書いたメッセージカードをお弁当に毎回入れる事にしている。

 「そんで仕事して、お昼にああ、栗駒さんと大代さんとたまたま一緒になったから一緒にお昼ご飯食べ」
 「続 け て ?」

 食い気味に魂子さんは言った。なにこれ怖い。超怖い。やっぱりなんかしたのか俺。

 「そのまま事務所に戻って……えーと、仕事してたら山黒さんと我部さんが来たからミーティングの準備して……ああ、二人に紅茶入れて飲んでもら」
 「ふ ぅ ん ?」

 なんか俺がやばいことやらかしたのは間違いないっぽいぞこれ。もっとよく思い出してみよう。

 「ミーティングの議題が確か二人のホラゲのコラボ企画どうするかで、概ね企画が出来たところでミーティングが終わって、そうこうしてたら石狩さんが来て、防音室でちょっと試したい事があるから手伝って欲しいって言われたから手伝っ」
「……」

 三点リーダーは、三点リーダーのみはやめて!?笑顔なのに目がまったく笑ってない!!怖いよ!魂子さん超怖い!!

 「あ、あとは千代浦さんが家に持ち帰れなかったガンプラを帰宅ついでに千代浦さんの家に持っていったらコーヒーご馳走にな」

バン!

 「ヒィ!」

 魂子さんは凍りついた笑顔のまま机に手を叩きつけた。ちょっと痛そうにしてる。かわいい。……………じゃなくって。

 「あ、あとは帰りしなに収録だった魂子さん迎えに行って夕飯一緒に食べて、魂子さんの配信の準備手伝って……」

 「そうだったね。そこからはいいや。私もよーく知ってるし」
 「あ、はい」
 「じゃあもう一度聞くね?なんで君が正座させられているのかわかる?」
 「それが……皆目見当も……」

 魂子さん。ハァ、とため息。

 「これ、今朝送られてきた写真なんだけどさ……」

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 魂子さんはスマホを取り出すと画面をこちらに見せてきた。
昨日の昼食風景である。俺を挟んで栗駒さんと大代さんが映っている。

 「………えっと」
 「まだわからないかな……真白とおこまと昼食を食べる。まあ仕方ないよ。一緒の場所で働いてるし別に仲悪いとかでも無いしね。一緒に食べるのが自然だし。私はひとり寂しく君が作ってくれたお弁当を食べていたけど」

 「あ、はい」

 「私はひとり寂しくお弁当食べていたけど!仕方ないよね。私は収録で離れた場所にいたんだから。君が!真白とおこまと!一緒に楽しくお昼ごはんを食べてた時私ひとりだったけど!!」
 「えっと……魂子さんごめんなさい。時間合わせてテレビ電話とかしながら一緒に食べたら良かったね」
 「今度からは気をつけるように」
 「はい」
 「で、この写真なんだけど」
 「はい」
 「なんでちょっと鼻の下伸ばしてるの?」
 「伸ばしてないよ!?」

バン!

 「ヒィ!」

 魂子さんは再度凍りついた笑顔のまま机に手を叩きつけた。ちょっと涙目で痛そうにしてる。やっぱりかわいい。……怪我とかしてなければいいけど。

 「これ、鼻の下伸ばしてるよね?おこまとこんなにくっついてさぞかしいい匂いがしたんだろうね?真白ともこんなにくっついてハーレム気取り?何?浮気?浮気なの?私はもう必要のないの?違うよね?君には私しかいないもんね?」
 「浮気じゃないです」
 「声が小さい」
 「浮気じゃないです!俺には魂子さんだけです!!!」
 「よろしい」

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魂子さんはニッコリと笑うとスマホを操作し始めた。まだ目は笑ってない。

 「で、次はこれなんだけど」

 写真には紅茶とケーキを前にした我部さんと山黒さんが映っている。

 「我部先が紅茶とケーキご馳走になっちゃったってこれ送ってきたんだけど?どういうこと?」
 「いや、えっとちょっと待ってもらってる間にケーキと紅茶を出しただけだけど……」
 「私はこのときひとり寂しく収録に励んでました。君が我部先とねくろちの胸をガン見しながら楽しくお茶会してた時私は一人で!孤独に!収録に!励んでました!君が!二人の胸を揉みてえとか思ってる時」
 「思ってねえよ!?ガン見もしてない!!」

 完全な冤罪である。

 「嘘だ!私だって横に二人がいたら胸をガン見して揉みしだきたくなるのに!大の成人男性がそう思わないわけがない!」
 「そらちらりとは思ったことはあるけども!」
 「ほらやっぱり!きっと影では私の事奇乳パイセンとかいってみんなで陰口言ってるんだ!私はもういらないんだ!」
 「魂子さん居なくなったら俺は死ぬよ」
 「えっそうなの。えへ」

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 えへーとだらしなく笑う魂子さん。
くっそかわいいなオイ。

 「魂子さんの分のケーキ持って帰ってきて冷蔵庫に入ってるからまた後で二人きりでお茶会しよう」
 「うん。そうする」
 
 魂子さん、コホンと咳払い。

 「で、次なんだけど」
 「はい」
 「なんで石狩と二人きりで密室に入ってるの?浮気?やっぱり浮気なの?私もう要らない娘なの?捨てられちゃうの?私みたいな面倒くさいタイプじゃなくて石狩みたいにサバサバした普段クールな感じだけどデレたらかわいいタイプの方が良かったの?やっぱり私捨てられちゃうの?もう要らないの?私嫌だよ?せっかく君と付き合えたのに」

 確かに付き合うまでは紆余曲折あった。今俺は忙しくなってきたあおぎり高校の不足人員として親会社から派遣された俺は用務員として雑用をしている。付き合った経緯などは省くが、ラノベにすると大体10冊分ぐらいの物語はあったと思う。決して書くのが面倒だから省くわけではない。

 「はぁ……」
 「なんでため息!?やっぱり私なんてもう要らないんだ!きっとちよちゃんともこっそり浮気してたんだ!私一人だけ除け者にしてみんなでイチャイチャしてたんだ!」
 「してねえよ!!!俺にはたまこだけだよ!!!」
 「ほんとに?」
 「本当に」
 「じゃあ証明して?」

 魂子さんはそっとを目を閉じて口を突き出す。今更たまこなんて呼び捨てたのが恥ずかしくなってきた。

 「じゃあ……行くよ」
 「……うん」

 唇を重ねようとした時俺のスマホの通知音。

 「ん?」

 魂子さんは俺のスマホをひったくると通知の内容を見る。

 『昨日はありがとうございました!たまこによろしく言っておいてください💛』

 水菜月さんからのメッセージだ。

 「……………………ねえ」
 「はい」
 「なんで夏希とこっそり会ってるの?」
 「いや、それは……」
 「黙ってたよね?なんで?冗談じゃなくて本当に浮気してるの?しかも夏希?よりによって夏希なの?一回会っただけじゃん!なんで二人でこっそり会ってるの?ねえ!!!」
 「いやそれは」

 魂子さんの誕生日プレゼントを買うのを手伝ってもらったのと誕生日のサプライズの打ち合わせなんて言えるはずもない。

 「いやそれは、じゃなくて!!!!」
 「はい」

 どうしよう。正直に言わないとこれ誤解解けないっぽいぞ。

 「実は……」
 「聞きたくない!」

 この後、魂子さんをなだめるのに数時間を擁し、ようやく話を聞いてもらって真相をわかってもらい、デレにデレた魂子さんとイチャイチャしていたら今度は校長からの連絡で校長との仲を怪しまれたのだが、それはまた別の話。


💜あとがきと言う名の言い訳☪️
 ドM向けのひたすら魂子さんに詰められる話書こうとしてたけど、ゴメンな。僕書くとなんかギャグっぽくなるわ。こうしないとまるっきり魂子さんのASMRのまんまになっちゃうし。というかなっちゃったし(この作品はリテイク5作目)
 そういうの欲しい欲しがりさんは魂子さんのASMRにそういう話いっぱいあるからそっち聴いてもろて。おすすめは裏たまこちゃんねるのS彼女。未だに途中までで良すぎて失神してしまうため全部聴けてないドMもいる名作。

 普段たまちゃんって呼んでる人は脳内で勝手に魂子さんの部分をたまちゃんって変換してください。
呼び名変えただけの別バージョン作るのもアレだしね。

それでは、また。

今回の挿絵、見出し絵は たまちゃん@たまっ子💜☪️ @otamahan3010

に作っていただけました!ありがとうございました!

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