教員養成課程の大学生が系統看護学講座を読んでみた話。~看護学概論編〜その5

さて、久しぶりに『系統看護学講座 看護学概論』を読んだ感想を述べていこうと思います。

ちょっと7月は忙しかったのと今回の題材が難しすぎて筆が進まず更新できませんでした。これからは夏休みなので頑張って更新していきたいと思っています。

これは『系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論』を読んで書いたものなので、実際に本を読みながら「この人はここでこう思ったんだな」って読むのが一番楽しめると思います。多分。

一応リンク張っておきます。

1. 前回の補足

前回基本的ニードをベクトルで表そうとしましたが、実際の人間の欲求ってそんな総和で表せるようなものじゃないということにこの1ヶ月の間で思い直しました。

人間の欲求ではそのときに最も強いものが支配的になり、それが充足されたらその欲求は弱まり、次の欲求が支配的になるという解釈のほうが実際に即しているように感じます。
よくよく考えたら、$${1}$$眠い時と$${1}$$眠いし$${1}$$お腹減ってるときで後者の大きさが$${\sqrt{2}}$$となり約$${1.4}$$倍の大きさになるわけがないですしね。

しかし前回考えた基本的ニードベクトル$${\vec{n}}$$が全くの無意味であったかというとそういうわけでもないように感じます。
これはその人の充足すべき基本的ニードをベクトルにしてすべて足し合わせたものなので、この中から最も支配的なものを選択し、順番に充足していくという手法を考えることができます。

つまり、最初に充足すべきニードは$${a_{j}e_{j},\quad a_{j}=max\{a_{i}\}}$$を求め、その$${e_{j}}$$に対応する基本的ニードであることがわかります。

そしてある程度充足されると次の対応する基本的ニードを充足していき、$${\vec{n}}$$を$${\vec{0}}$$に近づけていくことで、おそらく患者にとって寄り添ってもらえていると感じることができるような看護になるんじゃないですかね。外野の人間なんでよくわかりませんが。

やはり外野の人間が浅いリサーチで何かコメントをすると的を射ることができないことがしばしばあるのは仕方のない事ではあると思いますが、以後もっとリサーチをしてより面白いことを書いていけたらなと思っています。
くれぐれもこれを読んでいる人はこの内容を真に受けないようにお願い致します。

2. シスター=カリスタ=ロイ

2.1. ロイの理論と不可避な道

さて、ロイの理論ではロイ適応モデルとロイの理論の中で有名なものが「ロイ適応モデル」というものなのですが、これが今回の悩みの種でした。
この部分はこの本だとちょうど見開き分くらいの面しかとられていなく、少しだけ記述をして次に行ってもいいかなと思っていたのですが、次の一文を読んでこれは深堀しなきゃなと思いました。

ロイの理論はロイ適応モデルとよばれ、わが国でも多くの教育施設や医療施設で用いられている。

茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,p35

教育施設で使われている…
つまりこれは教員養成課程の学生としては避けては通れない道なわけです。とはいえこの本では先ほど述べられた通りそこまで多くの説明がなされているわけではありませんでした。
ある分野について詳しく知りたいという人間は概論と名の付く本には手を出すべきではありませんね。

2.2. ロイ適応モデルの誕生

さて、ではまずどのようにしてロイ適応モデルが誕生したのかについてまず系統看護学講座を大雑把に要約すると、
『ロイ適応モデルはロイが「適応レベル理論」と、「一般システム理論」の影響を受け、人間とその集団を全体的な適応システムととらえ、そこから作られた理論』
といった感じになります。

とはいえそれぞれの理論が一体どのようなものであるかがわからないと何とも言えないのでまずそこから確認していきましょう。

2.2.1 適応レベル理論

まず「適応レベル理論」についてですが、これは精神物理学者のヘルソンが提唱したものと書かれています。まずのところ精神物理学という学問について少々Wikipediaから引用しましょう。

精神物理学(せいしんぶつりがく、ドイツ語:psychophysik、英語:psychophysics)は外的な刺激と内的な感覚の対応関係を測定し、また定量的な計測をしようとする学問である。(中略)外的な刺激は物理量として客観的に測定できる。そこで外的な刺激と内的な感覚との対応関係が分かれば、内的な感覚(クオリア)も客観的に測定できることになる。

「精神物理学」『ウィキペディア日本語版』
最終更新日2022年4月25日 (月) 12:55 UTC

とまあちょっとわかりにくい説明ではありますけど、概要を要約すると、「質的な出来事と感覚の対応をもとに人間の知覚をブラックボックスとして物理的に見ていく学問」といった感じでしょうか。
ともかく人間を刺激に対する関数として見ていく学問ということですね。

では適応レベル理論はどうなのでしょうか。適応レベル理論で検索をかけるとその殆どがロイの話になっているため、少々てこずりました。どうやら順応水準理論と呼ばれていることが多いようです。この順応水準理論がどのようなものであるかをWikipediaから引用しようと思ったのですが、英語版しかなかったので私の方で大雑把に要約します。

順応水準理論はある刺激に対する個人の判断の基礎は、これまでの経験や記憶が基準となるという理論である。例えば視覚でいうならば、単色の明かりのもとではあらゆるものが無色のものに見えてしまうなどが該当する。

つまり何らかの刺激に対する反応は環境に影響を受けるという感じの話だと私は解釈しています。

2.2.2 一般システム理論

では次に一般システム理論について述べていきたいと思います。これは生物学者のベルタランフィが提唱したものであると書かれています。

wikipediaによると、

20世紀前半に提唱された、現象のマクロな挙動を直接的にモデル化して扱う科学理論のことである。

「一般システム理論」『ウィキペディア日本語版』
最終更新日2022年8月7日 (日) 22:37 UTC

と書かれています。モデル化をすることによって詳細はともかく現象を説明できるといったようなざっくりとした説明だとちょっと厳密ではないような気もするので、詳しく知りたい人はWikipediaを読みに行ってみてはいかがでしょう。とりあえずはこの大雑把な理解で進めることとします。

2.3. ロイの適応モデル

つまりこれらをまとめると、人間の刺激に対する反応を、 内部でどうなっているかはともかくモデル化して取り扱おうというのがこの考えの原点になるということがわかりました。

では内容に入っていきましょう。まず人間または集団を全体のシステムとしてとらえます。そしてその人間・集団に外的又は内的な刺激が加わると、コーピングプロセス(対処過程)を経て反応が現れます。このとき、反応は4つの適応様式のいずれかのものがアウトプットされることになります。

ではそれぞれの適応様式について述べていきたいと思います。
1.生理的-物理的様式:身体機能など
2.自己概念-集団アイデンティティ様式:心理的側面
3.役割機能様式:発達段階や社会的役割
4.相互依存様式:親密な人間関係
大雑把に教科書をまとめるとこんな感じです。

さらに刺激に関しても3種類あるとされ、それぞれ直接的な「焦点刺激」、焦点刺激に影響を与える「関連刺激」、その段階では影響が不透明な「残存刺激」があると述べられていました。

そしてロイは看護の目標をこの適応の促進であるとしました。

2.4. ブレイクタイム

※ここはおふざけの内容なので数式が嫌いな方は「3.余談」まで読み飛ばしてもらって大丈夫です。

以上の説明を読んでも私にはいまいち理解がしにくかったため、とりあえずいつものようにこれを「私には」わかりやすいように書き換えていきたいと思います。

刺激を$${S}$$(Stimuli)、適応を$${A}$$(Adaptation)で表すことにします。
するとコーピングプロセスを$${f}$$としたときに
$${S\stackrel{f}{\to} A}$$
と表すことができます。

つまり$${\exist a\in A, f(s)=a}$$ということが言えますね。

一応確認しておくと、上で挙げた3つの刺激はは刺激$${S}$$の部分集合であると言えますし、4つの適応システムは適応$${A}$$の部分集合であると言えます。

さて、この教科書に記述されていることをまとめるとこのようになりますが、これ以上この教科書とにらめっこしても進展はなさそうです。

ここでいつものようにWikipediaを参照してもいいのですが、今回はちょっと遠回りしてみます。具体的に言えば看護専門学校に通う高校時代の知人の力を借りることにしました。すると実際に学校で使っている教科書の数ページの写真を送ってもらうことができました。

今回送られてきた教科書は『NURSING TEXTBOOK SERIES 看護学概論―看護追求へのアプローチ』というものでした。

この教科書を読むとわかることとして、まず人間は統合性を維持して環境に適応するためのプロセスを持ち、身体機能を調節する調節器サブシステムと認知駅・情緒的に対応する認知器サブシステムの2つが存在するようです。そしてこの2つのプロセスは4つの適応システムで構成されるものだそうです。

私はこれを読んで刺激に対して恒常性(ホメオスタシス)が働いているという解釈をしました。

さて、刺激に対して統合性を維持するのが2つのプロセスであるため、$${x}$$を自己、$${s(x)}$$を刺激を加える関数としたときに、このプロセス$${p(x)}$$は、$${x=p(s(x))}$$を満たすようになっているといえるのではないでしょうか。
故に$${p(x)=s^{-1}(x)}$$、つまり$${p(x)}$$は$${s(x)}$$の逆関数であると考えることができるのではないかと私は考えました。

つまり刺激の関数$${s(x)}$$を決めれば、したがってそれに対応する適応の関数$${p(x}$$もただ一つに決まるため、上で述べたコーピングプロセスである$${f}$$の写像は、ただ単に逆関数を対応させた写像であったことになります。

最初に定義した$${S}$$は$${s(x)}$$を集めた集合であり、$${A}$$は$${p(x)}$$を集めた集合であることもここではっきりしますね。

よくよく考えれば対処とは元の状態に戻すための作業であるため、これが変化に対する逆写像を対応させる写像であることは自明なことであったともいえますね。

まとめると、ロイの適応モデルはこの刺激の関数$${s(x)}$$を3つの種類に分類し、さらにそれに対する逆関数である適応の関数$${p(x)}$$を4つの枠組みでとらえるモデルを構築したものであるということがわかりました。
またこの適応が上手くいっていない状態は自身に刺激の影響が残ったままになってしまうため、この適応を促進することが看護であるという主張も理解することができました。

3. 余談

今回あまりにも長くなりそうなので、ここでいったん切ることにします。
流石に今回でロイの適応モデルをふざけたまま終わるのも面白くないので、次回は他の分野などで見られる問題対処や回避などと比較してロイの適応モデルを終わろうと思います。

こんな調子でこれからも書いていくので、面白いなと思った方は、次回以降も読んで頂けると幸いです。ありがとうございました。

4. 参考文献

茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,384p,
「精神物理学」『ウィキペディア日本語版』最終更新日2022年4月25日 (月) 12:55 UTC URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6
「Harry Helson」『Wikipedia: The Free Encyclopedia』最終更新日2022年7月10日(日)06:06 UTC URL:https://en.wikipedia.org/wiki/Harry_Helson
「一般システム理論」『ウィキペディア日本語版』最終更新日2022年8月7日 (日) 22:37 UTC URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E8%88%AC%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E7%90%86%E8%AB%96
ライダー島崎玲子.NURSING TEXTBOOK SERIES 看護学概論―看護追求へのアプローチ (第4版),医歯薬出版,2018,240p

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