教員養成課程の大学生が系統看護学講座を読んでみた話。〜看護学概論編〜その2

さて、今回も『系統看護学講座 看護学概論』を読んだ感想を述べていこうと思います。

これは『系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論』を読んで書いたものなので、実際に本を読みながら「この人はここでこう思ったんだな」って読むのが一番楽しめると思います。多分。

一応リンク張っておきます。

1.看護理論とその構造

今回は看護理論についてから入っていくのですが、前回も述べた通り、この範囲は外野から眺めても少し面白かったと感じています。

この教科書ではまず看護理論家の業績の知識構造レベルから分析していました。どうやらその知識構造レベルは
①看護哲学、②概念モデル、③理論
の3つに分類できるようです。
いや、ちょっと待ってほしい。看護理論家たちの業績の構造レベルの3つ目に理論があるのはまずくないか?看護理論の構造レベルの話なのでその中のすべては理論に分類されるが妥当だと思うのですよ。とはいえ今後の展開で解決するかもしれないのでとりあえず読み進めていきます。

看護哲学
続きを読むと、分類した次からは各レベルの説明が入ってきました。まず看護哲学について大まかにまとめると、看護はどういう営みかということから、そもそも人間とは何かということまで論考するものであるようです。これは間違いなく理論の基礎の話なので、やっぱりレベル分けに理論があるのは命名がうまくいっていない気がしてしまいます。
とはいえこの内容自体が悪いかというと全くそういうわけではなく、むしろ学びになる部分があると私は思いますね。

これは看護に限らず、もっと介護だとか教育だとかそういった人と関わる職業においては、自身の営みはどういうものなのか、そもそも人間とは何なのか、などの根底にある理論を把握しておくことは自身のやっていることがわからなくなった際の道しるべとして役に立つ方位磁針になるんじゃないかなと思います。
とはいえあらゆる職業一般にそう言えるかというとそうでもなく、かえって自身のやっていることの嫌な部分などに気が付いてしまい逆に迷ってしまう結果になる場合もあるのでそこはいい塩梅で行っていくのが一般にはいいのではないですかね。

概念モデル
次の概念モデルの説明はこの本文の説明からは読み取りにくかったのでちょっと調べたうえで自分なりの解釈でまとめると、例えば人間を分析する際に、「相互関係」だとか「知的好奇心」だとかに着目し、そこから見える特徴に従った1つの見方を提示するものという感じでしょうか。私の理解力が足りないのか説明を読んでもあまり納得感が感じられませんでした。

とはいえこういった「人間は○○に従った存在である」といったような抜本的な主張は私はかなり好きなほうで、こういった考え方を見つけるとテンションが上がってきます。この後具体的な概念モデルの例があげられるようなので期待しておくことにします。

理論
そして3つ目の理論の説明は短いため少し引用してみることにします。説明は以下の通りです。

看護のある側面に限定した説明の枠組みである。
茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,p24

「うーん、つまり看護理論の中でもさらに狭い理論のことなのかな。だったら限定的理論みたいな名前にすればよかったのに。」
そう思って読み進めていくと厄介なことが増えました。また引用すると、

とくに具体性が高く抽象度が低い理論的知識を中範囲理論とよぶ。
茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,p24

も っ と 小 さ い 集 合 が 出 て き た 。
つまり集合の記号で表すとこういうことになります。

看護理論⊃理論⊃中範囲理論

直感的には何らかの名詞は修飾されれば集合として小さくなるような気がしますが、ここでは理論が修飾された理論に挟み撃ちがかけられている。
何とも奇妙なこともあるものだと思いつつ、命名が上手くいかないとこういうことが起こるのは他の学問でも往々にしてあることだと勝手に思っているので、私はここで命名の悲しさに明け暮れることとします。

命名への文句を抜きにすると、この中範囲理論は実践的な内容であるため、知っていると実際に使う機会が多い知識になる一方、外野から眺めて「ここ具体的過ぎて面白くないな。」となってしまう可能性もあるため少々不安を抱かずにはいられませんが、抽象化すればきっと応用の効く面白い話になるでしょう。抽象化したら中範囲理論じゃなくなるけど。

2.看護学のメタパラダイム

そして構造レベルの話を終えて入っていくのが、メタパラダイムについての話です。一応メタパラダイムとは何かを説明しておくと、現象探求のための概念や命題のことになります。無理やり和訳しようとすると「高次規範」といった感じでしょうか。かっこいい。こう聞くとメタパラダイムってめっちゃ重要なことのように聞こえますが、メタパラダイムで検索をかけても看護の話ばっかり出てきます。なぜでしょうね。

さてそんな看護のメタパラダイムは何かというと次の4つだそうです。
①人間、②環境、③健康、④看護
うん、ちょっと待って。看護の高次規範に看護があるよ。ここで痛感するのは看護に準ずる単語の乏しさですね。同じ単語を使わざるを得ない悲しさを感じるのは私だけでしょうか。

やや詳細にみていくために少し引用しましょう。

人間は看護活動の受け手、環境はその人を取り巻く状況、その人に影響を及ぼすすべてのもの、健康は看護の受け手の「良い状態」をさしている。
茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,p24

なるほど、つまり看護活動を考えるには看護活動だけでなく、対象の人間やその周りの環境、さらに健康とは何かを考える必要があるということのようです。

内容を見ると命名の悲しさに対して私は内容はかなりアツイものを感じます。ここで与えられているものは核(看護活動)、対象(人間)、条件(環境)、目的(健康)と解釈するとかなり学問としての可能性を感じることができると思うんですよ。「流石メタパラダイム、名前の通りだ。」って感じがします。

こうなると教育学などのメタパラダイムも興味が湧いてきますが、如何せん調べても看護のメタパラダイムばかりなので、看護以外の学問だとメジャーじゃない概念である可能性も考えられますね。

3.余談

長くなってきたので今回はここでいったん切りたいと思います。

素人の感想としてはやっぱり「理論」と「看護」の部分の命名だけは引っかかってしまいます。看護活動だとかもっといい命名がなかったのかなと気になるところではありますが、何か事情があるのかもしれないので詳しい人がいたら教えてほしいと感じます。

ちなみにこれを書いている現在は看護の日です。夕方のニュースでこのことを知り、急いで書きあげました。

こんな調子でこれからも書いていくので面白いなと思っていただいた方は、これからも読んで頂けると幸いです。ありがとうございました。

4.参考文献

茂野香おる.系統看護学講座 専門分野Ⅰ 基礎看護学[1] 看護学概論.第17版,医学書院,2019,384p,

「看護理論」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2021年11月22日(月)15:57 UTC,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E7%90%86%E8%AB%96

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