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列王記上17章/天から降るパン

本章は預言者エリヤが北イスラエル王国の王アハブを面罵するシーンから始まる(1節)。

前章に記述されているが、アハブとその妻であるシドン人イザベルが唯一の神ではなく、シドン、つまりはカナン民族の神であるバアル神への信仰に傾いたからだ(列王記上16:31-32)。

荒野をうろつく周辺の人は、王という政治的宗教的権威を面罵するのである。

北イスラエルの王アハブを面罵したエリヤは、彼の王国の支配下にない周辺の地、「ヨルダン川の東(3節」に身を隠す。

数羽の烏が彼に、朝、パンと肉を、また夕べにも、パンと肉を運んで来た。水はその川から飲んだ。

列王記上 17:6 新共同訳

また、荒野に身を隠すエリヤはかつて出エジプト記16章で古代イスラエルの民がマナという天から降るパンによって養われたように、神によって養われる。

荒野でしばらくの間過ごしたエリヤは、神に命じられてシドンのサレプタ、つまりはフェニキア人の地というこれまた周辺の地に赴く(9節)。

フェニキア人という異邦人の街の、さらにやもめという周辺の人とエリヤは出会う(10節)。

そのやもめは貧しく、餓死寸前である。ひと握りの小麦とわずかな油以外に一家の食料はない(12節)

一家を養うにはとうてい足りない。
5000人の人間を食べさせるのに五つのパンと二匹の魚しか無いくらいに足りない。

主がエリヤによって告げられた御言葉のとおり、壺の粉は尽きることなく、瓶の油もなくならなかった。

列王記上 17:16 新共同訳

エリヤの祈りは神に届き、パンの粉である小麦と油は尽きることなく、貧しい一家を養う。

・キリストの予型

「確かに言っておく。
エリヤの時代に三年六か月の間、雨が降らず、その地方一帯に大飢饉が起こったとき、イスラエルには多くのやもめがいたが、 エリヤはその中のだれのもとにも遣わされないで、シドン地方のサレプタのやもめのもとにだけ遣わされた。」

ルカによる福音書 4:25-26 新共同訳

アハブの妻イザベルの故郷にしてサレプタのやもめが住むシドンはフェニキア人の地である。
当たり前だがフェニキア人はイスラエル人ではない異邦人である。
神の人はウチに遣わされるより、周辺やウチとソトの間に出ていく。

前述のルカ書4章では列王記上17章のエピソードが直接言及される。
ではルカ書4章はどのように始まるか。

"ヨルダン川"で洗礼を受けたイエスは荒野という周辺の地へと向かう(ルカ 4:1-2)。
荒野の誘惑のエピソードである。

そこで「石をパンに変えてみよ。」との誘惑を受けたイエスは答える。
その答えは申命記からの引用である。

主はあなたを苦しめ、飢えさせ、あなたも先祖も味わったことのないマナを食べさせられた。

人はパンだけで生きるのではなく、人は主の口から出るすべての言葉によって生きることをあなたに知らせるためであった。

申命記 8:3 新共同訳

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