終わりの始まり


最近の私といえば、ずっとピアノと歌の練習をしている。地味な日常の中で、昨日出来なかったことが今日できるようになっている、そんな小さな変化に気づいては、喜びを噛み締めている。


「弾き語りができたら、気持ちいいだろうなぁ」

自分のリズムと呼吸に合わせて歌を歌うアーティストを見て、素直にそう思った。

無数にある星を眺めていて、その中でキラッと光った星に手を伸ばすような感覚。

とても届かないような位置から、日々の練習を重ねていくうちに、少しずつだけど、確実にその星に近づいている感覚が嬉しい。









そして昨日さ、めちゃくちゃ幸せな恋愛をしてる人の話を聞いてたんだけど。その幸せエネルギーを浴びてるうちに、私の細胞が起動したみたいで、過去の恋愛の記憶が今の私に流れ込んできた。






10数年前、私は幸せな恋愛をしていた。全開で好きを表現できる、安心して大好きでいさせてくれる相手だった。

その人とは、これから先ずっと一緒にいるんだと信じて疑わなかった。

でも、終わりがあったんだよね。その原因は私の未熟さ故の結果だと思ってる。彼に、私の人生を背負ってもらいたかった。自分の人生の舵取りをする事から逃げていた。だからバランスが崩れた。





その彼は出会った時点で、半年後には仕事で海外に数年間住むことが決まっていた。

私は2回か3回目のデートでそれを知って、相手はついてきて欲しいと言った。私も一緒についていきたいと伝えた。お金も語学力も何もなかったけど行くことだけは決めていた。

半年後、彼は旅立った。

私は仕事とバイトを掛け持ちしてお金が貯まったら追いかけていく事になっていたんだけど、奇跡的なルートでお金が転がり込んできて、彼が旅立った2ヶ月後には現地に行けた。

でも、その離れていた2ヶ月の間に少しずつ心の距離が離れていることに気づいていた。新しい環境で一から仕事を開拓しなければいけない彼は、心に余裕がなくなっていた。

でも、会えればきっと大丈夫だと自分に思い込ませて、強行突破で私は渡航した。

予感は的中で、やっぱりすれ違いばかりが起こった。

10年前の私は、大好きな人とずっと一緒にいるという未来を見ることができなかった。







そして今。

過去の恋愛で感じた、安心感や幸せな感情が流れ込んできて、また星がキラッと光った。











その先の物語を見てみたい。


好きな人と一緒に時間を重ねたいという夢の続きを、今の私からまた始めたいと思った。








今現在、私にはそんな相手はいない。だからこれから出会うという前提のお話。

相手もいないのにこんな夢を見てイタい女だな。

反射的にこんな心の声が上がる。あの星を掴みたいと伸ばしたこの手を引っ込めそうになる。

でも、今の私は引っ込めない。私だけは、私を馬鹿にしないと決めてるから。






全く弾けなかったピアノが、少しずつ弾けるようになるように。

手を伸ばせば、必ず、少しずつ近づいていく。

この感覚を信じてみたい。

あの日閉じてしまった物語の本を、もう一度開いてみようよ。

終わりのその先へ。




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