見出し画像

興味がある歴史の話。

「歴史に興味がある」。
そういうと戦国武将がどうのだとか、あるいはフランス革命における民衆の変化はどうだっただとか、はたまた古代メソポタミア文明のシュメール人はどこから来たのかだとか、そういった話を想像してしまいがちだけれどさにあらず。
僕が興味のある歴史とはそういった類の話ではない。

はるか過去の世界に思いをはせるのは嫌いじゃない。
数百万年も昔に誕生した人類が何をして暮らしてきたのかということも想像するだけでワクワクするし、文字誕生からこっち、すなわち歴史時代の色んな出来事だって実際に体験してきた人たちがいるという現実を考えるとワクワクしてくる。
中学高校と歴史の授業も別段嫌いではなかった。
僕の頭の出来は少々悪いので成績のほうはお粗末なものだったし、歴史上の人物の名前も大きな事件の概要もさっぱり覚えてはいないけれど、歴史教育で学ぶような歴史が嫌いなわけでもない。

しかしいま僕が興味がある歴史はまた別のものだ。
端的に言ってしまえばそれは、「歴史上の人物・物事として大きく扱われているものって本当はどうだったの?」という疑問だ。
そして「じゃあ現代のあれやこれやも後の世界では別の捉えられかたするんじゃない?」というワクワクだ。

具体例を挙げよう。
六歌仙のひとり、喜撰法師。
具体例と言いつついきなり実在が怪しまれる人物というのがアレだけど、とにかく偉大な歌人として扱われている人物だ。
喜撰法師の詠歌で残ってるのはたったの二首のみだが、そのうちの有名な方、つまり百人一首に収録されている方が
「わが庵は都の辰巳しかぞすむ世を宇治山と人はいふなり」。

「私は都の南東にある庵で心静かに暮らしているだけなのに、世間の人は世を憂いであのような辺鄙な山に住んでいると言っているようです。困ったものですね」

概ねこんな意味の歌だ。
でもこれって現代の価値観で考えるならば…

「カーッ!俺は自然体で暮らしてるだけなのに世を憂いでるって言われちゃうんだよなァ~ 俺ってそんなに憂いでる?憂い出てる?
別にそんな気まったくないしこれが俺にとっての「普通」なのになァ~、カーッ!」

どう考えてもただのイタイ人である。
というか地獄のミサワ「女に惚れさす名言集」の登場人物である。

いや別に喜撰法師を腐したいわけではない。
僕が言いたいのはそもそもこの歌はそんなに高尚なもののつもりで書いたものではなくて、それこそ平安時代に地獄のミサワ先生みたいな人がいてギャグとして書いたものなんじゃないか?ということだ。
長唄の喜撰も「小坊主を放っておいてこっそり芸者遊びをしてくる」っていうキャラだったしね。

ということは、それこそ地獄のミサワ「女に惚れさす名言集」が、数百年後の教科書に「21世紀に流行った狂歌であり、地獄のミサワはこの時代を代表する歌人であった」とか書かれてたりしないかな、などということを考えてしまうのである。

あるいはシュメール人。
どこからやってきたのか謎という出自と、楔形文字の発明や高度な数学・天文学の知識、そして例のやたらとでかい目の彫刻も相まって「宇宙人だったのではないか?」というトンデモ説の格好のエサになっているけれど、例えば現代の文明がなんらかの原因で突然滅びてしまったとして、何千年か後に地中から90年代のアニメイラストが出土したら同じようなことを言われるんじゃないか?と思ったりするのだ。

はたまた土器。
土器はその文様や形状から当時の時代的特徴、民族的特徴をとらえることができるため、考古学や歴史学の重要な資料になる。
じゃあ現代の土器にあたるものってなに?と考えたらペットボトルがそうなんじゃないかと思うのだ。
数千年後、数万年後の未来人が地中を掘り返すとペットボトルの残骸が出てくるわ出てくるわ。
調べるうちにどうも飲料水を入れる食器としての使い方だけでなく、飲用以外でも様々な液体を入れていたようだ、ってわかったり、玩具にもなっていたようだぞ(ペットボトルロケット)だとか、宗教儀式・まじないに使われていた節もある(猫避け)とか言い出したりするんじゃないだろうか。
広く民衆の生活に浸透していたようだし、この時代区分は「ペットボトル時代」と呼ぶことにしよう、なんてことになるのかもしれない。
一緒に出土した萌えフィギュアは「乳房や臀部が強調されていることから、農作物の豊饒を祈る地母神崇拝のための人形と考えられる」とかという解釈になるのかもしれない。

ツイッターだって俳句みたいな扱われ方をするかもしれないし、ネタツイートで莫大なフォロワーを抱えている人が六歌仙みたいな扱いを受けるかもしれない。

そんな未来があるのかと思うとワクワクするし、過去の出来事だって実はそんなような事だったりしたのかも、と思うとワクワクしてしまう。
僕はそんな歴史に興味がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?