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インターネットにおける不思議な出会い

インターネットが我が国に普及し始めたのは僕の記憶が確かならば1998年頃。
Win95の発売を皮切りに、すなわち1995年からインターネットという言葉はぼちぼち耳に入るようになっていたけれど、実際に周りでやっている人をちょいちょい見かけるようになったのはこの年からだったように思う。
そういえば携帯電話の急激な普及もこの年からだった。
1998年という年は日本にとっては大きなパラダイムシフトがいくつもあった年なのかもしれない。

閑話休題。
兎にも角にもインターネットが普及して、いままでは絶対に縁のなかったであろう人と連絡を取りあえる時代がやってきたのがいまから20年以上前。
インターネットの歴史は出会いの歴史、などと言うと、記事のタイトルも手伝ってまるで出会い系やマッチングアプリについての話をしようとしているように思えてくるけど然にあらず。
僕が今日話したいと思っているのは、ウェブログ、すなわちブログの話である。

そもそもこの令和の時代にブログが「ウェブログ(weblog)」の略称であった事を覚えている人がどれだけいるのだろうか?
個人ニュースサイトやweb日記、掲示板サービスをメインとした個人サイト等が我が国のインターネットにおけるメインカルチャーだった時代、そのサービスは英語圏から突然にやってきた。いわば黒船である。ペリーである。リア・ディゾンである。
日本じゃ普及しないだろ、という大方の予想を裏切り、気がつけば猫も杓子もブログ、ブログ。
個人サイトをやっていた人もどんどんブログに乗り換え、携帯電話から投稿できたことから中高生も流入し、芸能人はブログやってまーすを合言葉にペニーオークションの宣伝に勤しんだ。

それが2002年から2005年頃。
その後はmixiに端を発したSNSブームが巻き起こり、「友達に向けて書くならばSNSでいい」ということに多くの人が気づき、その後のtwitterに終着する形でブログサービスは急速に萎んでいくのだけれど。
(ところでnoteはそのブログサービスの復権のようにも思えて面白いね)

「何の才能も特技も、変わった趣味も持ち合わせていない人間がブログをやるとどうなるのか?」
我が国におけるブログブームというのはそれをあからさまに抉り出して顕在化させたといっていい。
つまり、ありていにいって「大半の人は書くことがなくなってやめる」ということだ。

何の才能も特技も、変わった趣味も持っていなかった僕も御多分に漏れずにブログを始め、何の才能も特技も、変わった趣味も持ち合わせていないことからすぐに書くことがなくなって、予想通りに自然と更新が途絶えた。
最初は身の回りの出来事を書いてみたり、ちょっと気になったものについて書いてみたり、あるいはニュースをネタに記事を書いてみたり。
しかしそんなものはけっして続きはしないのだ。
けっきょく数年間の間で書いたエントリは60弱。
しかもそのうちの半分くらいはmixiでの日記からの転載という水増し作戦を含めての数字だ。
やはり世界に向けて発信することなんて無いもんだなあと、壮大なんだか矮小なんだかわからない事を思いつつ更新を諦めた僕のブログにあるコメントが書きこまれていた。

コメントがあった記事は地元のお弁当チェーンについて書いたもので、どういうわけか検索にちょくちょく引っかかっていたらしい。
コメントが書きこまれたのは記事を書いてから4年後の2009年で、当然ブログを完全に放置していた時期だったので、一月遅れで気がついたところで慌てての返信。
そのあと何度かのやり取りがあり、このコメントをくれた方の人となりもなんとなくわかってきた。

その方は高校一年生の息子さんを持つお母さんで、僕と同郷で、野球が好きで、中日ドラゴンズのファンで、のり弁当が好きな人だった。
当時の僕は若かったせいか、自分とかけ離れた世代であったり立場であったり、あるいはまったく違う趣味を持っている人との交流が皆無に近かったこともあり、この方とのコメント交流はとても新鮮だったと記憶している。

それから二年後の2011年、その方が久しぶりにコメントをくれた。
2年経って当時高校1年生だった息子さんも3年生になり、いよいよ受験か就職か、という時期になっていること等、近況報告のようなコメントだった。
僕もそれに対して近況報告のようなコメントを返しながら月日が経つのは早いものだなあと感慨にふけっていた。

以来、毎年夏になると近況報告を交えたコメントがその方から届き、それに対して僕も返事を書くという手紙のようなやり取りを繰り返している。
やり取りがあるのは年に一度。
ブログを見る習慣も無いし通知が来るわけでもないので、数ヵ月遅れでの返信になることもザラ。
それでも毎年毎年、その方は夏になると僕のブログのその記事にコメントをくれる。

ここのところ暑い日が続くなあと思ってクーラーを入れたところで気がついた、そうだ、ブログを見に行かなきゃ。
案の定、その方は今年もコメントを書いてくれていた。

2009年から今年で12年。
なんと干支が一回りしてしまっている。
インターネットの世界は急激に進化して、新たなサービスが始まる一方で無くなるサービスも数多い。
しかし、このインターネットの普及がもたらせた不思議な交流のためだけに、ブログはずっと残るサービスであってほしいなあと思いながら返事を書く夏の夜だった。

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