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雪の降る冬の湘南を舞台に幾多の想いが交錯する「究極」の青春ラブストーリー(作品紹介:メモリーズオフ -Innocent Fille-/MAGES.)

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©MAGES./5pb./GloriaWorks

はじめに

この作品と出逢って。
正確には。この作品を見つけてから、長い間の思案と試行錯誤の末。
私の人生は、大きくひしゃげ、曲がってしまったように感じている。

きっかけは些細なことだったと思う。
私の好きなゲームと同じメーカー、同じスタッフだが明らかに毛色の違うゲームを見つけて。
あるいは、舞台が私の地元である神奈川県湘南地域だったから…というのも気に掛かった。

決定打は何だったろうか。
やはり、この「イノサンフィーユ」のメインヒロインの容姿の破壊力だったかもしれない。

FDのスチル

嘉神川かがみがわ ノエル】。
私のつまらない人生に於いて、これが初めての「一目惚れ」であったと記憶している。
ストラスブール出身の日仏ハーフ。金髪翠瞳の浮世離れした美少女。華奢な体格。ほろ苦い過去によって心を閉ざしている…

趣味が比較的プアで王道な「属性」に弱い私にとっては、この積み方は狂わされるのに十分だった筈ではある。しかしそのような属性はこれまでいくらでも経験してきたし、それだけではない「何か」が私の脳天を突き抜けていたのだと思い返している。
このファーストインプレッションを上手く言語化できないことを、私は恥ずべきなのだろうか。それとも言語化するだけ野暮というところか…

独りよがりな叙情はこれくらいにして。
この作品が20年続いたシリーズの最終作として据えられていることを知った私は、早速中古ショップで過去作の入手に着手した。
初期2作がセットになった「メモリーズオフ デュエット」を皮切りに、試行錯誤を経て確立された人気作「メモリーズオフ それから」。
シリーズで最もシリアスなシナリオとされる第7作「メモリーズオフ ゆびきりの記憶」。
大学生を主人公としてサスペンスと青春群像劇のテイストを取り入れた「メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム」。
当初は評判の良いシリーズタイトルを厳選して遊ぼうとしていた私は、気づけばそのシナリオ、世界観やメッセージ性に強く惹かれ、気づけばファンディスクや外伝を含めてほぼ全作品を集め、さらには各作品の設定資料集やCDまで買い漁る羽目になっていた。

他の所謂「美少女ゲーム」をプレイしても、ピンとくるヒロインはあまり多くなかった。
しかし、このシリーズには私の心を揺さぶり、狂わせるに値するヒロインが大勢いたのだ。
なかなかこの作品のグッズがある中古ショップに巡り逢えないことに苛立ちながらも、私は人生で初めてヤフオクを触り、ヒロインのグッズを落札した。
ヒロインのことを知りたくて。設定資料集欲しさに各地の新古書店やアキバ系ショップを巡り、時には高額な限定版パッケージに手を伸ばしていた。
ヒロインという「概念」目当てにここまで身体を突き動かされている私はさぞかし滑稽に見えることだろう。しかしながら。人をそのように狂わせ、突き動かすことが能う魅力が、このシリーズにあるということは何度でも主張するつもりだ。

そして2024年2月5日。
関東地方に雪が降ったこの日。
おおかたシリーズ全作品のプレイを終えた私。
冬を舞台にした最終作・イノサンフィーユのプレイを開始した…。

作品概説

対応ハード:PS4、PSVita、Switch、DMM、Steam
CERO:C(15歳以上対象)
オリジナル発売日:2018年3月29日

本作「メモリーズオフ -innocent fille-/イノサンフィーユ」は、KID→5pb.(MAGES.)より開発・発売されているADVゲーム「メモリーズオフ」シリーズの第8作(最終作)として2018年3月に発売された作品である。

メモリーズオフシリーズは、観光地としても著名な神奈川県湘南・鎌倉地域および江ノ島電鉄沿線を舞台として高校生・大学生のシリアスな青春ラブストーリーを描く恋愛ADVゲームの作品群である。
1999年に第1作が発売されて以降、開発発売元の倒産とIP移管を経て展開が続けられ、2024年3月現在ファンディスクや外伝作品を含めて20作品以上のゲームタイトルが発表されている。

本作はその最終作として開発された。
2013年11月、「其れは雪片。咎めの如く。」という仮称で制作が発表された。なおこの時点ではメモリーズオフシリーズとの関連を匂わせる箇所があったが、シリーズ作品である明言はなされていなかった。
その後、「メモリーズオフⅧ 自傷するレジリエンス」という仮称を経て、2017年9月末に現タイトルでの発表が行われ、シリーズ最終作であることも明示された。本作の開発には4年以上の期間が費やされたことになる。
タイトルの「イノサンフィーユ」はフランス語で「無垢な/無邪気な少女」という意味。

スタッフ陣は新旧が入り混じっている。
企画・原案・ディレクターは主にアートワーク面でシリーズ最初期から関与している相澤こたろーであり、一部キャラデザと原画も担当している。シナリオライターはシリーズ過去3作のほか、本編を担当しなかった作品のノベライズにも携わるなどシリーズを通して関わっている日暮茶坊を筆頭に、前作「ゆびきりの記憶」の企画原案からシナリオ実執筆まで携わった川嶋一洋らを迎えた計6人体制で執筆された。
メインキャラクターデザインは新たに平つくねが担当したが、サブキャラクター・ゲストキャラクターデザインにはささきむつみ・松尾ゆきひろをはじめとして歴代作品に携わった各スタッフが揃い踏みし計7人のイラストレーターがキャラデザを担当している。
劇伴音楽・主題歌はシリーズを通して担当している阿保剛・志倉千代丸が今作も担当している。

あらすじ

すべてのはじまりは、ただ 君を護るために

秋も深まる10月。
気付けば、高校生活も半分を過ぎていた。

札幌海陵高校へ通うかさねは、いつも「ここではない、どこか遠くへ行きたい」と願っていた。
そしてその願いは、幼馴染にして親友の莉一りいちの支えもあり、ついに叶う事となる。
『特待生特別国内交換留学制度』通称、トクトク制度に参加が認められ、姉妹校である湘南海陵高校へと一時的に転入することになったのだ。

「これは、新しい一歩だ」

湘南海陵高校には、莉一とその妹である柚莉ゆずりもいる。親友たちとの7年ぶりの再会と新しい場所への期待は、あまり感情を面に出さない累にも笑顔をもたらしていた。
まだ見ぬ、海辺の街。観光名所としても知られる湘南での生活は、そして訪れる新たな出会いは、累の心にどのような道を示してくれるのだろうか。

勇気を出して踏み出した、ささやかな一歩。
それは、自分一人では容易く掴む事の出来ない、未来へと向かっていく。

(パッケージ・公式サイト掲載より引用)

作品特長

シリーズ「最終作」「集大成」たる作風

本作は約20年続いたシリーズの最後の作品として制作され、シリーズを纏め・締めくくる作品として極めて高いクオリティを持っている他、シリーズ過去作からの登場人物の客演や過去作のオマージュなどの要素(後述)も多く含まれる。
シリーズ過去作を多く遊んだプレイヤーであれば、だからこそ感動できるというシーンが多く存在したり、過去作のストーリー展開のオマージュに起因する伏線(ミスリード含む)に勘付けるようになっている。

シリーズトップクラスのボリューム

本作の攻略可能ヒロインの数は僅か4人。シリーズでも最少の数字だ。
しかしながら、本作のプレイ時間は40時間級となっている。
これは攻略対象ヒロイン数がシリーズ最多であった「想い出にかわる君」やシナリオボリューム35時間という点をセールスポイントの一つにしていた「ゆびきりの記憶」などのシリーズ過去作と同等かそれ以上の数字となっており、共通部分こそ長いものの各ヒロイン・キャラの魅力はかなり丁寧に書き込まれている証左になっている。

雰囲気がガラリと変わる2つのルート

本作では序盤で大きく分けて2つのルートに枝分かれする。
歴代メモオフの雰囲気を引き継いだ、王道シナリオにシリアスなテイストを混ぜた作風の青春ラブストーリーを展開する「ライトサイド・ルート」(ノエル・寿奈桜ルート)。

ライトサイド攻略後に解放され、主人公の幼馴染である三つ子・三城兄妹(莉一・柚莉・琴莉)を巻き込んで主人公・累と彼らの過去に迫るサスペンスシナリオ「ヘヴィサイド・ルート」(柚莉・琴莉・ノエル裏ルート)。

本作ではライトサイド→ヘヴィサイドの順に攻略順が固定されていることになる。しかし、その自由度の低さは欠点になることなく、登場人物の印象から果てには世界観の印象まで読み進めるごとに大きく変化してゆく、心を鷲掴みにするような本作のプレイ体験の完成に大きく寄与している。

何を取っても卒の少ないシナリオ

青春ラブストーリー、ミステリー、サスペンス、愛憎劇など本作のシナリオはこれまでのメモオフシリーズの作品と同じく非常に多くの側面を持っているが、本作はどの要素も中途半端になることなく優れている。

まず大前提として登場人物の言動・感情などの機微の描写はゲーム全編を通して非常に丁寧である。
この点は甘いシチュエーションの場面からシリアスで緊張感のある場面まで、どんなシーンでも共通しており、まるでキャラが本当に生きているような迫力を全編通して楽しめる。

また各シーンにかかるシチュエーションは王道をなぞったようなものもあれば、気を衒ったような新鮮なものも多く含まれる。
個人的に印象が深かったのが、あるヒロインのルートで挿入される「泥沼テニス」と私が読んでいる場面。恋人を取り合ってスポーツで勝負をする…というシチュエーション自体は比較的ありふれているが、そこに至るまでの道程・前提が醸し出すシーンの雰囲気やその後のストーリー展開は非常に独特で印象に残る。

ちなみにその現場は片瀬江ノ島駅近くに実在する
(西浜公園テニスコート、投稿者撮影)

伏線回収によるカタルシスやそこに至るまでの論理構成の丁寧さ等ミステリーの要素も優れている。
特に、ゲーム最序盤からプレイヤーの思い込みを活用したトリックが仕込まれており、多くの人は最終盤も最終盤のある箇所でそれに初めて気付くことになっている。

過去作キャラの多数客演

今坂唯笑(1st)、陵いのり(それから)
仙堂麻尋(#5)、嘉神川クロエ(6)

これこそが本作最大のセールスポイントかもしれない。
本作は、過去作に登場したキャラクターが各作品のメインヒロインを中心に計12人、更にFDでは追加でもう1人登場する。
キャラ登場にあたっては「6」登場キャラである嘉神川クロエと稲穂鈴を除いてほぼ全てのキャラにおいて、オリジナルでキャラクターデザインを担当したイラストレーター(ささきむつみ、松尾ゆきひろ、森井しづき)を招聘し各キャラが成長した姿が新規に描かれた

今坂唯笑(27歳・看護師・総合病院勤務)

中でも、「1st」のメインヒロインである今坂唯笑は全編にわたって登場する。
口調に面影こそ残っているが立派な社会人になった姿で登場する為、同作を遊んだ人の中には感動のあまり号泣する人も出てくるかもしれない。

もちろん担当声優も全員揃って収録に参加している。中には今となってはとてつもないビッグネームとなった水樹奈々もいるが、特筆すべきはなんといっても既に引退から15年以上経過していた「1st」双海詩音役の利田優子氏が本作の為に限定的な復帰を果たしたことだろう。

双海詩音(26歳・図書館司書)

同作のヒロインでもトップクラスの人気を誇っていながら声優引退によりCVがつかない状態が続いたキャラクターだったが、本作は約15年ぶりに声がついた状態で陽の目を見ることとなった。

多数の過去作オマージュ

シリーズの集大成として制作された本作は、随所に過去作のオマージュ等を多数含んでいる。
例えば上のスチルはシリーズを通してプレイした人なら勘付く人も多いかもしれないが、実は「1st」のとある重要なシーンのスチルとほぼ同一の構図になっている。
また先程も少し触れたが、シナリオ展開は過去作の展開を参考にしたと思われる点がいくつか存在した。
だが決して退屈の源にはなっていない。ただ過去作のシナリオをなぞるだけではなく、そこから予想不可能な展開に分岐するミスリードに繋げるなど、むしろ本作独特の興味深いプレイ体験の完成を助けている。

おまけ:モノレールと時代考証

江ノ電沿線の藤沢市・鎌倉市を一貫した舞台として用いてきたこのシリーズであるが、実は江の島近辺を通る鉄道の中では全く登場がなかった湘南モノレールが今作では初登場している。

地元ではジェットコースターとして知られる

この路線の沿線では湘南江の島駅から西鎌倉駅までが登場。西鎌倉駅周辺は主人公の自宅周辺の背景美術として登場している他、目白山下駅は実名で登場。さらにこの駅を最寄りとする片瀬山公園は作中で頻繁に登場している。

話題を変えて。
見出しの時代考証…と言ってしまうと少々大袈裟がだが、個人的に感心した点があった。
本作は2010年の秋を舞台としている。発売当時から8年前、記事を書いている時点からは14年前にあたる遠い過去である。筆者は当時ピカピカ✨の小学校低学年であった。

スマホの普及率もまだ低かった年代ではあるが、作中でスマートフォンやSNS、チャットアプリといった小道具を違和感なく登場させる手段について気になった点が一つあった。
2010年当時はまだLINEはサービスを開始していなかった。後々起こった東日本大震災の影響によってサービス開始時に既読確認機能が追加された…という噂があるのは、ひょっとしたら読者のあなたもご存知の有名な話かもしれない。

そんな今作に登場するアプリの名称が「ChocoTalk」。韓国を拠点とし、当時サービス開始前のLINEに先駆けて日本でもチャット・音声通話のサービスを行っていたカカオトークのパロディと思われる。
やはり意外と考えて作り込まれているのだな…と感じた瞬間であった。
それだけです…ごめんね長々と…。

ヒロイン紹介

攻略可能ヒロイン数は4人でシリーズ最少。また今作には歳上ヒロインはいないが、これはシリーズでは3作目「想い出にかわる君」以来となる。

嘉神川かがみがわノエル(CV.千本木彩花)

本作のメインヒロイン。「メモリーズオフ6」のヒロイン・嘉神川クロエの妹。

私立林鐘寺女子高校1年生。15歳。
ストラスブール出身の日仏ハーフで、浮世離れした端麗な容姿を持つ金髪翠瞳の美少女。
中学生時代の苦い経験によって心を閉ざしており、家族・親友以外の人間にはまともに話を取り合おうとはしない。寿奈桜は唯一の中学時代からの親友。
その経験に思うところがあって女子校に進学したものの、あては外れてしまい何も解決しなかった。
寿奈桜・先輩の瑞羽と共に来ていた海陵高校の文化祭で主人公・楠瀬累と出逢ったことで、その運命は大きく変わってゆく。

「おもち」という名前のフェレットを飼っている。


いわゆる負けヒロインになるルートでも強い存在感を放つ本作の「メインヒロイン」たる存在。
最初に攻略可能なライトサイドの個別ルートに加えて、ヘヴィサイドでも「ノエル裏ルート」が用意されている。

そして上記の通り筆者が(紆余曲折の末に事実上の)ジャケ買いを果たす要因になったヒロインでもある。
この時点で嘉神川ノエルというヒロインには100点満点の異常な期待を寄せていたが、いざプレイしてみると100点を超えて120点の最高な体験ができた。
そして魅力でその上をいったとある別のヒロインに掻っ攫われてしまう失態を犯した。ルートクリアした時はまさかこんなことになるとは思ってなかったよ…

本作のヒロインで一番エロい。(異論は認める)
特にFDでは筆者は終始悶絶しながらプレイしていた。

志摩しま寿奈桜すなお(CV.徳井青空)

私立林鐘寺女子高校1年生。16歳。
累の下宿先アパートの大家「明龍あけのたつ神社」の娘。ノエルの中学時代からの親友で、あまり勉強は得意ではないがノエルと同じ学校に行くために高校受験時は猛勉強をしたという。
ギャルという言葉を具現化したような派手な容姿だが、実は高校デビューによるもの。
明るくノリが軽い一方、実は人間関係にかかる根深い悩みがあり、それを誰にも相談できず1人で抱えている一面もある。


まさかメインヒロインの親友というワードからルートの内容を想起する人は居られるだろうか…?
彼女のルートは古き良きメモオフの良さを体感できる。
バッドエンドも複数用意されており、どれも心を滅多打ちにされること間違い無し。

三城みき柚莉ゆずり(CV.武石あゆ美)

私立湘南海陵高校2年生。17歳。
累の幼馴染の三つ子・三城兄妹の真ん中。

北海道・羽幌で累とともに過ごしていた幼少期から明朗快活な性格で、抜群の運動神経と記憶力が自慢の少女。ちょっとアホの子。「なんでも部」を自称し運動部の助っ人活動を1人でやっている。
男子生徒からの人気も高い美少女だが兄がブラコンによる過保護を拗らせていることが悩みで、その為か言い寄ってくる男も少ない。
ノエルと寿奈桜は中学時代の後輩で仲も良い。

兄の莉一曰く「初恋の人は累」らしい。その真意はともかく、累のことは昔から家族同然に大切にしている。


パッケージヒロインの片割れ。
FDと合わせて彼女のシナリオではそれまでのメモオフシリーズでも度々描かれていた「家族」というテーマに歴代で最も踏み込んでいる。
本編ではかなりシリアスな展開になる一方FDにはバッドエンドが存在せず、その代わり意外な分岐が存在する。
ちなみに中の人はアダルト作品用裏名義をオープンにしている(旧芸名を流用し、一般の活動は本名を名乗る)ことで知られ、その影響かFDには事後シーンがある。

三城みき琴莉ことり(CV.本渡楓)

私立湘南海陵高校2年生。17歳。
三城兄妹の末っ子。
姉の柚莉とは対照的におとなしい性格。料理が得意で、作中でも累に振る舞っている。
羽幌在住時代は運動神経も鈍く、雪中を駆けている時に疲れて累に引っぱってもらうこともあった。この時期に金属製の小鳥のチャームを累からプレゼントされており、現在も大切にしている。

累とは互いに初恋同士である。


彼女の個別ルートに限らず、全編を通して印象がめくるめくように変化してゆくヒロイン。
FDでのアフターシナリオはかなり意外な始発点から展開してゆく。

主人公・サブキャラクター

楠瀬くすのせかさね(CV.坂泰斗)

本作の主人公。
私立札幌海陵高校2年生。17歳。
環境的要因から漠然と「遠くへ行きたい」と願っていたが、幼馴染の莉一から交換留学制度を紹介されたことで湘南に越してくる。
気怠げな性格の一方、凄まじい観察力を持っており人間関係のトラブルも簡単に解決してしまう一面がある。
剣道の有段者だが体力は壊滅レベル。
口癖は「なまらめんどい…」。
北海道暮らしが長かったので近所のコンビニ(ファ○マ)を指してセイコー○ートと呼んでしまうお茶目な一面がある。

三城みき莉一りいち(CV.鈴木裕斗)

このキャプで正解だったのか?(FDより)

私立湘南海陵高校2年生。17歳。
三城兄妹の一番上。累を交換留学に誘った張本人。気さくなイケメンで女子にモテる。

演劇部所属で役者志望になるほど入れ込んでおり、累と会話する際にもシェイクスピアを度々引用するほど熱心である。
女性の役を演じることも多い為女装に抵抗が無い…どころか比較的頻繁に女装しているところを目撃されている。
妹に対する愛情が少々拗れている一面があり、ただのシスコンに飽き足らず柚莉の制服一式を下着ごと借りて彼女に変装するなど常軌を逸している。
一方で幼馴染である累のことも気遣っており、国内留学ではなく正式に湘南に越してこないかという話を度々持ちかけている。

相葉あいば詩乃しの(CV.平流エレン)

湘南海陵高校2年生で、同校の生徒会長。
いつでも余裕のある落ち着いた態度を崩さず、多くの生徒に慕われている。
実家は日本舞踊の家元らしい。

実は同人作家をしておりイラストが得意。
自分より先に同人活動をしており、現在美大で油画を専攻している姉がいる。(キャラデザも設定があったが没キャラになってしまった)

処女。(FDでの本人談)


実はネクタイの色が異なるビジュアルが存在し、当初は主人公達よりも年上として設定されていた可能性がある。エロい雰囲気はその名残か…

日紫喜ひむらき瑞羽みずは(CV.矢作紗友里)

林鐘寺女子高校2年生で、生徒会長。
眼鏡(実は伊達)をかけたカタブツそうな容姿ほぼそのままの冷静沈着な人柄な一方頼りになる人物であり、ノエルや寿奈桜も慕っている。二人を連れて湘南海陵の文化祭に来ていた。

「シーサイドカフェYuKuRu」でアルバイトしており、マスターの信のことは頑なに「店長」と呼びその度に訂正を求められている。
実はヤのつく自由業をしている家のお嬢らしい。

稲穂いなほしん(CV.間島淳司)

エピローグより

シリーズ全作に登場する友人ポジション。
本作では26歳。前作まで勤めていたレストランルサックの運営元を退職。姉の鈴がオーナーをしている「シーサイドカフェYuKuRu」の雇われマスターをしており、特にブレンドコーヒー「YuKuRuブレンド」には自信を持っている。

「テンチョー」ではなく「マスター」と呼ばれたいが、従業員の瑞羽からは頑なに「店長」と呼ばれる上、旧知の仲である荷嶋音緒からは「信くんはテンチョーって感じなのに」という旨の言葉すら掛けられている。


今作では、稲穂信はただ主人公に助言を与えるに留まらない。過去の強い縁も存在する今坂唯笑や双海詩音といった面々も出てくるし、何より彼自身も今作で人生における大きなターニングポイントを迎えることとなる。高校生時代から定職に就くまでシリーズを通して彼の生き方を見てきた人であれば、感動すること間違い無しだ。

それ以外にも、彼が「テンチョー」と呼ばれたがらない理由に心当たりがある人なら、その周辺のコミカルなやり取りにもどこか胸の中で込み上げる感情があったりするのではないだろうか?

実は彼の視点から描かれる「アナザールート」も存在する。このゲームは、稲穂信という男がこのシリーズを通した真の主人公であることを改めて確認する作品とも言えるかもしれない。

ネタバレ回避について

この記事はネタバレを回避する為というのに留まらず、公式が想定していると思われる、あるいは私が体験したプレイ体験を再現する為に敢えてミスリードを多く混ぜ込んでいる。
記事を読んでいて違和感があった部分もあるかもしれないが、私の書いた文が下手でない限りそれは私の意図的な嘘による産物になっていると思う。
このゲームは序盤からフルスロットルで飛ばすように面白いのだが、そこには手の内を明かさない公式によるミスリードも大きく関わっており、ネタバレ回避は他の作品よりもかなり強く推奨される。

キャラクターの名前で検索することはプレイを終えるまで絶対にやめた方がいい。ファンディスクについて調べることすら推奨されない。
かなり制約が強いが、守れば究極のプレイ体験が実現することを約束する。

過去作との関わりについて

シリーズの最終作・集大成として作られた本作は過去作からの登場人物の客演などに限らず、会話やシナリオ展開のコンテクストも多くの部分をシリーズ他作品から受け継いでいる。

このゲームは単体でも楽しめる傑作であると私は考えているが、それでも一部登場人物のセリフでキザな言葉がいきなり出てきたりということがある。シリーズをやり通した人ならその背景を理解して受け入れられるが、そうでない人は困惑する限り…という場面があったことも否定できない。

そこで私からの個人的なお願いなのだが、このゲームを遊ぶにあたってはメモリーズオフシリーズの過去作品をプレイしてから改めて臨んでほしい。

個人的にシリーズ全作品をプレイする必要は無いと感じている。今作と繋がりの最も深い「1st」、今作と作風が類似している「それから」、ヒロインのバックグラウンドについて知ることができる「6」の3作品は個人的にオススメできるので、個人的にはここを経由してイノサンフィーユに臨んでほしいところである。
もちろん、シリーズ他作品に興味を持ったらそちらにも手を出して欲しい。

面倒な注文だが、良質なプレイ体験を読者に届けたい一心である。ご理解頂きたい…。

最後に

気づけば10000文字を数えるほどのかなり長大な記事になってしまっていた。
私の文章力の不足こそが最大の理由だが、一方これはこの作品・このシリーズの語るところの多さの証左でもある。

実際のところ、ネタバレ抜きで語るとなると1万字程度では足りないと感じている。作品自体の内容にしても私のプレイ体験にしても、あるいは他人に勧めるような点にしても。いざこの記事に書き散らかしてみても、私の本当に書きたいことの1割程度しか書けなかった気がしている。

以前もこのシリーズに関する記事は執筆しているが、この記事も含め全てネタバレの根幹を回避した形になっている。ネタバレ込みのレビュー記事に私の感情を爆発させたい…という気持ちも少なからず持っているが、明らかに需要がない為ネタバレ無しの紹介記事でお茶を濁しているという現状である。

このゲームを語ることができる仲間が増えれば、私にとっては至上の喜びである。この記事によって、このゲームやシリーズに興味を持っていただけたら嬉しい。

以前投稿した下記の記事において、本作でシナリオライターを担当された白木原怜次先生よりコメントをいただきました。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

(文責:ウオハゲ)

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