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新しい景色ってなんだ〜クロアチア代表のスカウティングレポート〜

クロアチアを分析していく。

●配置

4-3-3ベース。
やはり中盤3枚の匙加減でゲームを動かすチームである。
攻撃でも守備でもペナルティエリア付近にわらわらと人が集まる時に力を発揮する雰囲気があり、そのジョイントを中盤3人、ブロゾビッチ、モドリッチ、コバチッチが全部やる。
守備は4-5-1風に配置する。モドリッチが中盤ラインから離れる事が多いが"CFと並列で4-4-2"という約束はおそらくない。トリガーがノリなのかハメ所の約束があるのか不明だが、"モドリッチが前に出て前プレのスイッチを入れるよ"という共通認識は存在している。
そのモドリッチは初戦モロッコ戦では相手にアンカーがいるわけでもなかったのでボールサイドのCH付近まで追いかけて行っていたが、その結果中盤の4枚に何か影響があるわけでもなかったので何をしているのかよくわからない。溝が生まれる可能性は普通にありそう。
4-5-1でハーフウェー付近にラインを設定するとベルギーでもなかなかビルドアップに苦労していたので強固であると言って良さそう。終盤のスクランブルではあたふたしていたがそれはお互い様だった。
DF、MFは人に強く、ボールに強い。コバチッチとブロゾビッチは勢いよく縦方向に飛び出してボールに食いつく事もあり、そこでボールを奪えればカウンターチャンス。横からのコンタクトでモドリッチ、コバチッチからボールを奪うのはなかなか難しく、ファールで止める事も含めて判断と覚悟が要求される。
ワイドの対人も我慢強く対応できているがモロッコならハキミ、カナダならアルフォンソ・デイビスは突破できそうなシーンもあったので三笘ならどうにかできる。ただ、それはクロアチアも折り込み済のようでSBが1vs1に晒されないようにSH、IHが協力して守るように設計されている。反面カウンターを喰らうとSBのスピードが弱点になる可能性はある。グバルディオルがいないところから進んでいきたいところ。

保持は2CBと中盤中央のブロゾビッチでボール交換しながら前進。特に左CBのグバルディオルの左足の配球が良い。スピードもあって自分でドリブルで進める事もできるのでブロゾビッチを警戒しすぎると持ち運んで縦パスを刺される危険がある。グバルディオルがいる左と異なり、右のロブレンは単品で配球できるわけではないが右SBユラノビッチ、そしてモドリッチが助けにくる。さらにクラマリッチもここを助けにくるパターンがあるが、日本としてはこの辺でハメ込む狙いは持てるかもしれない。グバルディオル付近でハメようとするのはリスクが大きいので前からボールを奪いに行くならこちらサイド。クラマリッチは左WGペリシッチと違って単独でこじ開ける質があるわけでもないので大怪我はしないだろう。たぶん。モドリッチに抜け出されたら話が変わるが。

崩しの局面はWGとIHを含むユニットを使い、大外にSBが絡む場合とCFが絡んでハーフレーンに突進するケースがある。少しストライカーのクオリティに不安があるメンツだが、CF含め自分のポジションに固執する選手は(ペリシッチ以外)おらず、色んな位置でトライアングルを回して配置を入れ替える。この形で生きてくるのは無論モドリッチであり、特に敵陣に押し込んだ局面で大外に移動して縦突破、マイナスのボールでPA角を狙わせるなど攻撃のバリエーションを持った。左はペリシッチの突進を後方からソサが支援。コバチッチがやり直しをサポートする。ぐるぐるする事はあまりない印象。ペリシッチの質を優先。コバチッチはニア突進してのフィニッシュが上手いので警戒。

GKor最終ラインからのロングボールは、競り合う選手の後ろへしっかりランキングする選手がいる事がポイント。CFのリヴォヤやクラマリッチがやや流れながらハイボールを競り合い、その向こうにペリシッチがしっかりランニングして相手の最終ラインをいちいち押し下げる作業をする。対応がややこしい部分で、守備側はこの上下動を焦れずに続ける必要がある。


●ネガトラ

ボールへの強さを生かしてきっちりボールホルダーを捕まえに行く。ここを外されるとCB2枚がカウンターに晒される局面は普通にありそう。デブライネには外されていた。クロアチアは誰がどこで無理してイエローを出すのかの勘定もしっかりやりたいし、日本は早めにブロゾビッチから一枚引き出せると展開を変えられる。狙いはロブレン側のSBとの間のランニング。ユラノビッチは背走する際の状況判断が悪い事が度々あり、置き去りにできる可能性がある。

●ポジトラ

前述のCHの前向きプッシュ含め、モドリッチ、コバチッチがボールを持ってしまうと一気に相手を振り切ってスピードアップしてくる。このカウンターを止める必要は確実にあり、ボールの失い方に気を払う必要がある。
単純に怖いのは、日本のWGがボールを持って縦ではなく内側への侵入を狙った時に、ボールを弾かれる、それがちょうどモドリッチの足下にいっちゃいました、という形で、これだけで致命傷になり得る。細心の注意を払いたい。

●連携と個

2戦目のカナダ戦で、やや中央寄りにポジションを取った右WGのクラマリッチが活躍した。左は大外アタッカーのペリシッチが務めるので左右バランスは異なるが、とはいえこれは両SBの攻撃参加の振る舞いによる差異ではなかった。というか両SBは劇的に高い位置を取る事はあまりなく、あくまでもトライアングル形成のサポート遊軍である。
ビルドアップでは「CBとブロゾビッチ」相手にトライアングルを作り、当然ブロゾビッチ付近は相手に警戒されているので高頻度でSBがCBからボールを引き取る。別に上手くはないが大きなミスもない。左のソサはたぶんでかい(欠場とのこと)。出し所がなければシンプルにWGの足下を狙ってその落としでIHが前向きという形を狙い、ミスが出れば球際デュエル。という連続。

ミドルゾーンでは「CBとIH」か、「IHとWG」とトライアングルを作りながらサポート。基本は後方支援とネガトラ対応。スピードは普通。単独で危険になる事はないが周囲とジョイントするのが非常に上手い。
IH2人(モドリッチ&コバチッチ)の配置だが、ここがいまいちわからない。たぶんパターン化すれば3,4種なんだろうが、比較的モドリッチ、コバチッチ共に頻繁にレーンを動く。ブロゾビッチがどうやってサポートポジションを取れているのかよくわからないが彼はいつもボール付近にいる。ボールが入ればどこにいても上手い3人なのでノリでもどうにかなるとは言える。配置に拘りがない3トップが内に入ったり一列落ちたりする動きの中から正解を探していく作業を行う。
問題はストライカーのクオリティだが、両WG含めてみんなシュートが上手いのは間違いない。PA付近で目の前を開けるのは絶対に避けたいところ。クロアチアはそこでDFのズレを作ってワイドを使い、相手DFに後ろを向かせたところにマイナスの折り返しでフリーを作る、というような狙いはたぶんある。大外にもう一枚飛び込む、という入り方を徹底して行える走力と抜け目の無さがあり、クロス対応は常に精神を尖らせる必要がある。セットプレーも同様。

●セットプレー

そのセットプレーは、まずキッカーがモドリッチである時点でなるべく避けたい。FKはもちろんだが、CKもみんなでかいのでチャンスになる。こういう試合でロブレンが決めそうな予感もある。第三戦でルカクとの競り合いに晒され続けて耐え抜いた分、解放されてめちゃくちゃ生き生きしている可能性がある。両サイドからのロングスローも装備しており、PA前までぶん投げてくる。筋肉である。ここの対応は青森山田出身柴崎がレクチャーしているだろう。知らんけど
あとキックオフも右サイドに人を多めに置いて左のペリシッチに蹴っ飛ばすみたいな事をやってちゃんとチャンスになっていた。

●態度

前回大会もそうだったが、クロアチアは基本的に"流れが悪い時間を受け入れる"事ができるチームに見える。中堅ヨーロッパの代表チームにありがちなのかもしれないが、どうにもならない状況の時にはじっくり待つ事を厭わない。ボールを持っても相手に持たせても、現状を静観する事ができる。変えようがないなら待ちましょう。を実践できる経験値がある。あと諦めもある。
日本はコスタリカ戦でも、悪い時間帯に"何かを変えなければ、変えなければ"と強迫観念のように考え込み、そしてバランスを放棄していたように見えた。このへんの優先順位の考え方が両チームで大きく異なる。状況を生み出す、そして変化させるのは常に日本側になるだろう。
ドイツとスペインは自身のゲームモデルに固執する意図から配置を変えようとしなかったが、クロアチアはリソース的に他のやり方にたどり着く事は難しいという理屈で4-3-3のベースをイジる事は考えにくい。試合中の変更もまずないだろう。
日本は得点を取りに行くには4-2-3-1がいいのか5-2-3がいいのか、はたまた別の選択肢があるのかが釈然としないまま試合を迎える印象がある。ただ相手チームから見ても判別はついていない。クロアチアが状況を静観するチームである事からも、試合が始まってからやれる事を諸々試す形でも良いのではないかと考える。そのためにはまず失点しない事をベースにすべきで、変更パターンを多めに持ちたい。雰囲気的に120分かかる事も予見できそう。と考えて予想スタメンは


権田
冨安 / 吉田 / 伊藤
酒井 / 田中 / 守田 / 長友
南野 / 鎌田
前田


とする。酒井が落ちて4バックにする必要があった場合を想定して谷口ではなく伊藤とした。5バックを変更するつもりがないなら谷口の方がもちろん良い。誰かがイエロー出したら穴を埋めるという意味で、右でも左でも使える谷口をベンチに残すメリットもありそう。
中盤は遠藤のボール狩りはもちろん外しにくいところなので実際はスタメンだろうが、相手の溝を探すボール保持を志向する際には川崎コンビが良いと思う。おれなら碧、という程度の発想。
三笘と伊東の走力を延長後半まで残す意味で前半はベンチに置きたい。
まずボール保持の時間を長くして、点を取るにはどこをどうすべきかを探していく作業を行いたい。そのために南野は広く動き回ってボールを引き取る事と、周囲と連動した守備対応とポジトラの持ち運びを期待したい。久保が出られる出られないに関わらず彼に最適なタスクであろう。偵察要員みたいな使い方だけど。仕留める仕事は堂安がやってくれる。

さあ、新しい景色ってなんだ、の回答を見に行こう。

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