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「経営者」の働き方

経営書を読んだり、経営者セミナーに行ったりすると、よく言われることがある。

「仕事を委任せよ」

アルバイトやパート、新入社員、中堅社員、管理職、経営者、それぞれに役割分担があり、できること、やるべきことが違う。「できる」技術や「やるべき」責任によって報酬が支払われていると考えれば当然である。

ただ、必ずしも組織の中でそのような委任ができているかというと、そうではない。新入社員の知識や技術でできることを中堅社員や管理職がやってしまうことは多々ある。

自分でやった方が早いという判断もあるだろうが、本質的には別の部分に大きな理由があると思う。

自分も経営者として、可能な限り仕事を委任し、経営者にしかできない仕事をしなければと思い、ここ数年はほとんどの仕事を委任してきた。そうすることで経営者コミュニティの海外研修に1週間参加し会社のビジョンを見つめ直すことができたり、委任された社員が育ったりという成果もでる。

その一方で、自分の時間を持て余したり、お客様と直接の会話が減ることで仕事に対するモチベーションが保ちにくいといったこともある。

自分も含めて、仕事の委任が進まない一番大きな原因は「自己重要感が満たされない」ということに尽きる思う。

商売をするうえで一番の醍醐味は、目の前のお客様に喜んでもらう事、そしてそのお客様から「ありがとう」という言葉をいただく事だと思う。まさに自己重要感が満たされることである。

経営者たる者、経営に専念し、会社の規模を大きくして、よりたくさんの「ありがとう」を引き出すためにできる事を考えるべきだ、ということは頭で理解はしている。それを目標にやってきた。

しかし、そうすることで熱のこもった生の「ありがとう」ではなく、数字としての「ありがとう」が増える怖さと寂しさを感じてしまう。

松下幸之助氏の言葉に「企業は社会の公器」や「水道哲学」というのがある。企業が存在するのは、よりたくさんの人によりたくさんの利益をもたらすためとされるし、それはもっともである。今のパナソニックのように世界中で何億人もの人々に必要とされるのは本当にすごいことだと思う。

逆に、わずか数席の飲食店で予約が取れないほどの人気店のオーナーシェフも、そこに通うお客様に計り知れない価値を提供している点では負けていないと思う。

これはどちらが正解かではなく、何を目指しているのか、何を生きがいと感じているのか、「経営者」として成功したいのか、「商売人」として成功したいのか、などの価値観、目的の違いだろう。


このnoteを書くまでずっと「経営者」としてどうしたいのか?と自分に問いかけてきた。「経営者」として社会を変えるほどのインパクトある仕事をしなければと思っていた。しかし、そこに明確ではないものの違和感があったのも事実だ。

この先、会社をどうしていくのかの判断を迫られている。それは同時に「経営者」の仕事をしたいのか、「商売人」として仕事をしたいのかの結論を出す時かもしれない。




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