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蒲田健の収録後記:想田和弘さん

よく見る よく聞く

想田和弘さんの最新監督映画「ザ・ビッグハウス」

事前に台本を書かず、出演者との打ち合わせもせず、ひたすら目の前のことに

カメラを回し続ける“観察映画”という方法論で様々なものを撮り続けてきている

想田さん。

観察映画ではナレーションやテロップといった説明は排除されている。

そこにある素材がそのまま提示される。制作者の主張や一定の結論へとは

導かない。観客はその素材を好きなように味わっていい。

今回の撮影対象は、全米最大の巨大スタジアム・通称ザ・ビッグハウス。

ここを本拠地とするミシガン大学の

アメリカンフットボールチーム・ウルヴァリンズの人気は凄まじく、

10万人以上の観衆で埋め尽くされる試合がここ何十年にもわたって連続して

開催されてきている。となるとそこで行われる試合にフォーカスするのかな、

と思いきや、さにあらず。想田さんはその周辺にレンズを向ける。

愛する母校に寄付でバックアップをし試合ごとに集って旧交を温めるOB、

10万人の胃袋を満たすために忙しく働く厨房スタッフ、大観衆を当て込んで

一儲けを企むグレーゾーンの商売人、政治的もしくは宗教的メッセージの

アピールの場として利用する者・・・。

そこに集う動機や理由は様々。多種多様なごたまぜ状態である。

想田さんが撮るときのモットーは「よく見る よく聞く」。そしてこれは

観察映画の観客にも求められる態度なのかもしれない。そこに映っているものを

「よく見る よく聞く」。能動的に知覚する。捉え方は自由。

そこに唯一絶対の正解は存在しない。

それゆえ、そこから得られる体験は、お仕着せの規格品ではなく、

ある意味必然的に百人百様のオリジナルなものに昇華してゆくことになるだろう。

私はザ・ビッグハウスにアメリカそのものを見た気がした。

あなたにはどう見える?

「ありのまま 俎上に載せて 供される

         レシピ 味付け お気に召すまま」

P.S.ナレーションを生業としているものとしては商売敵(笑)ともいえる

観察映画ですが、世の中を見る目、審美眼、リテラシーといったものを

磨き上げるには格好の教材と言えるだろうなー。色んな意味で考えさせられます。



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