蒲田健の収録後記:辻村深月さん


あなたを助けたい

辻村美月さんの最新刊「かがみの孤城」

デビュー当初十八番としていた、十代の少年少女の心の機微を描く物語。

作家としてのキャリアが一回りし、自身も子を持つ親となり、

大人としての視点が複層的に加わることによって、パワーアップした

原点回帰ともいえる今作。


様々な事情から中学校に通えなくなってしまった7人の者たち。

7人7様のそれぞれの事情は、当人たちのとっては、

例えば「いじめ」「不登校」などといった一般名詞で括って語れるものでは

決してなく、それぞれに個別具体的な事情である。


描かれている事情そのものはフィクションである。


しかしながらこれらが読者によって咀嚼され、消化され、読者自身の

血肉となったとき、読者自身の個別具体的な事情を、時に転回させ、

助けるものになり得るのかもしれない。


それは子供にとっても、大人にとっても。

願いは、子供大人関係なく、一人でも多くの人にこの作品が

届いてほしいということ、とおっしゃる辻村さん。


おっっしゃる通り。

一人でも多くの人に届くべき作品である。

そしてそれらのメッセージとともに特筆すべきは、

この物語の仕掛けそのものの見事さである。いたるところに配置された

伏線の回収具合、着地の見事さ、これぞプロフェッショナルの業。

読了して、全てを了解した状態でもう一度精読せずにはいられないこと、

間違いなしである。


「みごとなり その一言に つきるかも

         すごい作品 目の当たりにす」


P.S.“子供向けのファンタジーなんでしょ”というイメージで食指が

動かないあなた、食わず嫌いはあまりにもったいなさすぎますよ。



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