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作品を共に創るって難しい「Parallel Harmonies」イベスト感想【プロセカ】

 作品を、個人的な想いを込めたものを複数人で作ることは難しいです。このイベスト感想にしても、2人で書くことは恐らく出来ません。書けたとして、私かもう一人の思いとは離れたものに、あるいはどちらの感想でもない空虚なものになりそうです。
 複数人で進める多くの物事はリーダーを1人置き、各メンバーはリーダーの指針に沿って各役割を担います。「船頭多くして船山に登る」と言われるように、進む方向の最終決定権を複数人が持つと中々進まない・とんでもない方向に進むものです。もっとも、立場上2人の船長がいても、1人にこだわりがなければ実質的にもう1人の補佐に回り船は進みます。しかし、創作する者の多くは自らの想いを、自らが進みたい方向を持っています。
 「音楽性の違いで解散」はバントの定番、でも仲良しの自分達には、一度離れて繋がりの尊さを知った自分達には無縁だと思っていた、でも違った。始まりの2人の、表現したい音楽が出来たからこその対立が、とても苦しくリアルで、でも乗り越える価値ある物語でした。
 
 デビュー曲を今までの作詞一歌・作曲咲希ではなく、2人で共作して欲しいと言われたLeo/need。新しい形に挑戦しますが、中々うまくいきません。咲希の家で2人だけの作曲合宿が開かれることになります。ワクワクで始まりますが…。

 お互いに自分のコードに相手がつけたメロディーがピンときません。最初は相手のイメージを汲み取りきれていないだけかと思ったけれど、何度話しても合わない。一歌にとって前を向く力を与える音が咲希にとっては「軽い」、互いの作品を批評したなら出ないであろう言葉が「自分の」作品だから出るし、言われれば「なぜ理解してくれないのか」と苛立ちます。
 『導く勇気、優しさを胸に』でLeo/needのイメージを擦り合わせる時、解釈を巡って一歌と志歩が言い争ったのを、咲希は「途中ケンカみたいになってた」と評していました。その時は、こだわりの強い志歩ちゃんと真っ直ぐないっちゃんだからとどこか他人事に思っていたかもしれません。でも、自らの過去と向き合い、いつしか咲希にも曲作りに譲れない想いが出来ていました。成長したからこそ、ぶつかることもあります。

 メイコに誘われセカイにやってきた2人。ミク達は頓挫しかけている2つの曲を聞いて、その音を紡いだ想いを丹念に聞いていきます。「同じ表現者だからこそ、譲れないものがあって、うまく噛み合わなかった」これは仕方ないことです(良い意味で自分の譲れないものがない、仲間の想いを全て受け止めることが譲れないことである、そしてそれを実現できてしまう穂波の凄さも際立ちます。)2つの想いを両方入れることは今の私にはできない、一歌は咲希の想いを受け止めることを選びます。
 メイコの台詞「私達は、誰かの想いが音楽になるのを手伝うことしかできない」はバーチャル・シンガーの本質であり、それがどれだけの人に求められ、どれだけの人を救ってきたか、プロセカの存在自体がその偉大さを表していると思います。

画像出典:『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』イベントストーリー「Parallel Harmonies」2024年、
SEGA・Colorful Palette・Crypton Future Media
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