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Fairground Attraction "What's Wrong With The World"



Fairground Attraction "What's Wrong With The World"
35年ぶりの再結成と新曲発表という信じられないようなニュースを聞いて、とても楽しみにしていたFairground Attractionの新曲が遂にリリースされた。
"What's Wrong With The World"
「世界で何が起こっているの」と訳せば作者であるMarkや、歌うEddiの今の気持ちのようなものが伝わるのかな?
歌詞を全部訳してはいないのでなんとも言えませんが、楽曲は実に彼らの音としか言えない、それはそれは優しく、少しだけ照れくさそうに「ただいま」と言っているようでした。
この数年、Eddiを少しだけ近くで見てきた自分としても、まさかこんなことが起こるなんて思ってもいませんでした。日本でマネジメント的な立ち位置の仕事をされている方も、同様に驚きと嬉しさを抱きつつも事の顛末を少しだけ話してくれました。話を聞いていて、Eddiの日本のファンへの愛がそうさせたに違いないと思いました。
愛の人、Eddi Reader。
本当にありがとう!!!

6月のライブ、行く方は思う存分楽しみましょうね!

この再結成が、とっても嬉しいので2017年にCHERRY REDから出た"The First of a million kisses EXPANDED Ver"の国内盤のオマケ用に書かせてもらったライナーノーツを載せておきます。いま読み返すと拙い部分もあり少し恥ずかしいですが原文まま、置いておきます。

「あの時からの魔法はまだとけていない」

大学に通う為に東京に来たばかりの1988年の5月の終わり頃だったと思う。
渋谷の大きな輸入レコード屋で特別な雰囲気を纏ったジャケットに惹かれて購入したこの特別なアルバム。手にしてから今まで、ずっと魔法にかかったままです。振り返ってみると実に30年近く経ってしまったことになる。雨の日も風の日も、寝苦しい熱帯夜もこのアルバムを聴いてきた。もはや人生のサウンドトラックと言って良いほどなのです。そしてこんな風にこのアルバム”The First Of A Million Kisses/ファーストキッス”を大切に思ってきた方は日本にもたくさんいると思います。だってこんな素敵な写真が使われたデザインのジャケットで針を落とした時の最初の1音目から最後の曲が終わる余韻までパーフェクトな世界観と空気感を持ったアルバムってそうそうあるものでは無いですもんね。

1988年4月、彼らはフワリと現れてPerfectという素朴な音像を持つ曲でUKチャートのNo.1を獲ってしまう。これは彼らにとっても思いもよらなかったことでしょう。確かにその年のUKシングルチャートを見てみるとペット・ショップ・ボーイズやカイリー・ミノーグなど最新のテクノロジーを駆使したキラキラなダンスナンバーが並んでいます。しかしそれと同時にアメリカのトレイシー・チャップマンやスザンヌ・ヴェガなどのアコースティックギターを持つシンガーソングライター達もチャートに入っているのでフェアグランド・アトラクションの音楽はある意味で時代に合っていたのでは?と思っています。無機質なリズムトラックばかり聴いていると時々は優しい空気感を持った音楽を聴きたくなる。そんな人が世界中にたくさんいて、シングル”パーフェクト”と、このアルバム”ファーストキッス”でスッと優しく心を掴まれてしまったに違いないと思うのです。

彼らはその短いバンド活動の間に一度だけ来日公演をしています。1989年6月27日(大阪毎日ホール)、6月29日・30日(名古屋クラブクアトロ)、7月2日(川崎クラブチッタ)、7月3日・4日(渋谷クラブクアトロ)の全6公演。19歳になっていた僕はクラブチッタのライブに行きました。待ち合わせしていた友人はドタキャンで現れず、寂しく独りで観るのかぁ嫌だなぁなんて思って中に入った憶えがある。しかし客電が落ち1曲目”ハレルヤ”が始まった時の感動を忘れることはない。あんなに自然と涙がでたのは生まれて初めての経験でした。このCDでもディスク2に8曲ほどチッタでのライブが収録されています。往年のファンの方は2003年にリリースされた”KAWASAKI LIVE in JAPAN”というライブアルバムをお持ちの事でしょう。お持ちでない方はそちらも是非聴いてみてください。のちにギターのマークが始めるSWEET MOUTHというバンドで発表された曲が元々はフェアグラウンド・アトラクションの為に書かれたものだったことがよく解ります。つまりは解散を決める前に彼らは素敵な新曲たちを用意できていたのですね。
話を戻してハレルヤ。
この1989年7月のチッタでのハレルヤの感動が16年後に僕とエディを引き合わせてくれてレコーディングにまで発展していく事になりました。忘れもしない2005年7月28日(木)、場所は苗場。フジロックの前夜祭でした。その夜、僕はサポートしているバンドで前夜祭に出たのですが、なんと前の出演者がエディ・リーダーその人だったのです。その事を知った僕はアルバムを持ってエディがいる楽屋に行きました。拙い英語でどれだけあなたの歌と共に生きてきたかを説明しサインをしてもらってる時に彼女は言いました。「chabe、あなたは何を聴きたい?」と。僕は「1曲なんて選べない。けど強いて言うならチッタの1曲目だった”ハレルヤ”かな」と答えました。そして本番中のMCで「日本のファンに捧げます」と優しく言い”ハレルヤ”を歌い始めました。16年経ってまたあの自然と涙が出る経験をしたのです。その年のフジロック、エディとバンドは3ステージをやりました。もちろん全てを観に行きました。
そしていちファンでしかなかった僕には夢のような親交が始まりました。当時彼らの日本のツアーマネージメントをされていた方に手引きしていただき、次の来日時にエディを客演ヴォーカルでレコーディングしました。世田谷の小さなスタジオに来た彼女は「SAKE呑みながらやる?」とか「ねぇ、この曲知ってる?」とか、ソロのライブではお馴染みの人懐っこさ全開で踊ったり歌ったり、、、イメージしていたままのキャラクターでした。この音源は僕のバンドCubismo Grafico Fiveの”Pleasures”という音源に収録されています。そして2014年にもう一度レコーディングセッションをしました。2014年7月1日 渋谷クラブクアトロのライブの翌日、夜便での帰国日に歌入れをしてもらいました。その時はスコットランドが独立するか否かの住民投票前夜、エディは車の中でしきりとその話をしてくれたのが強く印象に残っています。この音源はLearnersというバンドのアルバム”Learners”に収録されています。良かったら聴いてみてくださいね。フェアグラウンド・アトラクション好きが本人とレコーディングしてフェアグラウンド・アトラクション好きな人に胸を張って聴いてみてください!って言える曲になっていますので(笑)

名門レーベル、チェリーレッドがコンパイルした今回の再発にはシングルのB面はもちろん、デモ音源、1989年7月の川崎クラブチッタのライブ音源、そして何と言っても今回初めて聴いた曲が4曲もありました。四半世紀の時空を超えてフェアグラウンド・アトラクションの新曲が聴けるなんて思ってもいませんでした。またこれらを愛おしく聴く日々が始まるのです。
そして、、、
来日公演のチッタでステージを去る時にエディが残した言葉”Keep romance alive!”の言葉のまま、優しい魔法がとけぬまま愛聴していきたいと思うのと同時に、新しくこのバンドとアルバムに出会うであろう多くの若者が僕が18歳の時にかかったのと同じ魔法にかかりますように。

「あの時からの魔法はまだとけていない」

松田”チャーベ”岳二
2017年1月1日23時30分
自宅にて



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