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デザイナーが「業務の記録」を残すメリット

たまに現場で「何でこのデザインになってるんですか?」と過去の経緯を聞かれて問題になる事があります。その際、業務の記録を残しておいて良かったと思う事が何度もありました。また、チームで合意をとりながらプロダクトを作っていく時も「何でこのデザインにしているのか」は必要になります。

デザイナーは業務をする際、目的に沿ったものになっているか、見落としている視点はないか、クオリティは十分なものになっているか、長期的に耐えられそうか、スケジュール内で完了できそうかなど様々事を考えながらアウトプットしているので、それを記録として残す事は大事だと思っています。そもそもやっていることを第三者が理解できるかの視点で残すだけなのでそれほど手間ではなく、メリットも大きいと思っています。

■「業務の記録」を残す5つのメリット

1.  途中からプロジェクト参加した人でも業務の記録が残されてる事で理解できる
0→1のプロダクトの立ち上げから、その後フェーズが変わる中で数年も同じチームメンバーだけでプロダクト作りが進む事はありません。メンバーの入れ替えやメンバーが増える事が普通です。そんな中、途中からプロジェクトに参加した人でも、業務の記録が残っている事で当時の課題感や状況が理解でき、気付きにくい制約を意識して対処できたり、二度手間・過ちを回避できます。何に配慮して進めればいいかがわかります。結果としてプロジェクトチーム全体にメリットがあります。

2.  各デザイナーのやってる事が理解でき、スキル・経験がどれくらいかわかる
課題に対してデザイナーのアプローチの手段は様々で、スキルや経験がどのくらいか見えてきます。デザイナーとしてベテランになればなるほど、アプローチの幅は広がります。スキルや経験が見える事で、強い部分をさらに伸ばしたり、弱点を強化する事に組織単位で対応を考える事ができます。

3.  見える化・言語化能力が高まる
「何でこのデザインにしているのか」という制作意図は基本的にプロジェクトチームメンバーに共有するものなので、どうすれば伝わる内容になるか、フィードバックの数をこなして見える化・言語化能力を高められます。

4. プロジェクトの振り返りに使える
忙しい中でも記録を残す事で、プロジェクトの振り返りに利用でき、次回以降の効率が上がります。

5. チーム単位での認識が揃えやすい
自分がデザイナーとしてどういう考えで今のアウトプットに至ったかを共有する事で、チーム単位での認識が揃えやすくなります。特にステークホルダーが多ければ多いほど効果があります。

■ 「業務の記録」を残す必要がある時

・自分がリードして何か進める時
新規でプロジェクトを自分で立てる時や、プロジェクトの一部の領域を自分がリードする時に、「なぜするのか」「何をするのか」「どうするのか」という内容をステートメントシートとして書きます。特に人を巻き込むプロジェクトは会社のリソースを使っているのでそれなりに説明する必要があります。個人の場合も会社のリソースなので必要。プロジェクトの粒度は様々なので、大きさによりドキュメントを分ける必要があります。

■ 「業務の記録」を残す4つの目的

1. 「経緯を共有」することが目的
なぜこのアウトプットや活動になってるのか、そもそもどういったプロジェクトだったのか残す。

2. 「考えを共有」することが目的
どういう考えで今のアウトプットや活動なったのか残す。

3. 「知見を共有」することが目的
後任や同じような事をする人が同じ事を繰り返さなくて済むように残す。効率よく、より良いアウトプットができるように残す。

4. 「自分の認識があってるか共有」することが目的
レビュー目的で共有。特にビジネスやエンジニア領域についてデザイナーは知識が追いついていない場合はほとんどなので、デザイナー観点ではこのようにしたが、問題ないか?様々な職種の観点でフィードバックをもらう必要がある。

業務の記録を残す観点は上記のように様々ですが、少なくとも1つは当てはまったり、4つ全て当てはまる場合もあると思います。例えばプロダクトの記録を残す場合は4つ全て当てはまると思います。また、単純に業務の引継ぎは「知見の共有」のみになると思います。

■ 「業務の記録」を残さないデメリット

デメリットはメリットの裏返しになります。アウトプットしかないため、途中から参加した人が理解できない、どれくらいスキル・能力があるか不明になり組織単位での成長支援がしにくくなります。業務を進める中で気づく課題を記録として残してないので、別の人がまた同じことに困ってしまう。その時見えた課題も拾えなくなり、次に同じ問題に気づく人が現れるまで問題が先延ばしになったりします。

■ 「業務の記録」を残す時の注意点

・「業務の記録」を残す目的を整理する
書いた後にどんな目的で書いているのか見直して、目的が達成できそうか考えてみてください。共有目的で「業務の記録」を残してる場合、見た人が理解できない内容では意味がなくなってしまします。

・「経緯の共有」の場合は、背景情報や制約など、なぜやらないといけないかという情報が必要です。
・「考えの共有」の場合は、自分はこう考えているという情報が必要です。第三者から見て、思考のトレースができそうかという視点も必要です。
・「知見の共有」の場合は、実施した結果から得られた情報が必要です。
・「自分の認識があってるか共有」の場合は、レビューが可能な状態になっている必要があります。

■ おまけ

・ポートフォリオに使える
デザイナーのポートフォリオというとアウトプットを並べた作品集のようなイメージがあると思います。しかし、サービスデザインにおいて企業側が見たいものは「何ができる人なのか」です。サービスデザインでは普通1人でプロダクトを作る事はありません。そのためアウトプットを並べた作品集では、その人がどの領域を担当していたのかが見えづらくなります。そうならないためにも、日々の「業務の記録」を残したドキュメントを共有する事で「何ができる人なのか」が理解しやすくなります。

・noteなど社外へのナレッジ共有に使える
この記事も元々は社内向けに書いていたドキュメントがベースです。汎用的な内容であれば、社外に向けたナレッジとして有益な情報にもなると思います。


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